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Chapter.4 触れて、側にいて
Act.3-01
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しばらく車を走らせていると、街中から住宅地へと入って行った。一軒家はもちろん、アパートも密集している。この中のどこかが高遠さんの住まいなのだろうと思っていたら、左折のウィンカーを点滅させた。
アスファルトで舗装された駐車場。区画ごとに仕切られていて、高遠さんはその中の一カ所に車をバッグして停車させた。
「お疲れ。着いたよ」
高遠さんはそう言いながらシートベルトを外す。私もそれに倣った。
すぐ目の前には二階建てのアパートが建っている。それほど年数は経っていないのか、まずまず綺麗な建物だ。
「黒川さん、行くよ?」
声をかけられ、私はハッとする。いつの間にやら、トランクに載せていたトートバッグを手に持っていた。
「ごめんなさい! それ!」
咄嗟に頭を下げるも、高遠さんは、「別にいいよ」と笑いを含みながら返してきた。
「結構な重さだったし。この中に入ってるの、筑前煮だけじゃないだろ?」
「分かります……?」
「分かるよ。もしかして、他にもなんか作ってくれたのかな、ってちょっと期待してるんだけど?」
「――期待されるとすっごいプレッシャーなんですけど……」
「大丈夫だよ。君が作ってくれたってのが俺にとっては何より最高なことだ」
「――またそんなこと……」
軽く唇を尖らせて睨むと、高遠さんは声を上げて笑った。
「ほら、ほんとに行くぞ?」
笑ったままで高遠さんが踵を返す。
私も少し慌てて高遠さんの隣に並んだ。
「俺の部屋、二階の一番奥ね」
説明しながらコンクリートの階段をゆっくり昇る。それほど急ではないけれど、気を抜くとうっかり足を踏み外してしまいそうだ。
階段を昇りきってから、一番奥まで歩いてゆく。そして、ようやく部屋の前まで着くと、高遠さんは手に持っていたキーケースから鍵をひとつ選び出し、鍵穴に差し込んで回した。
「どうぞ」
ドアノブを引き、私に入るように促してくる。
「お邪魔します」
私は遠慮しつつも中に足を踏み入れる。
高遠さんはそのあとからドアを閉め、靴を脱いだ。
先ほどにも増して緊張が高まっている。今さらだけど、本当に高遠さんのアパートに来てしまったんだ、とドキドキしていた。
部屋は小さな台所を経由した奥にあった。メインとなる部屋のすぐ隣には、白い壁紙が貼られた襖で仕切られている。開けっ放しになっていたのでつい目に付いてしまったのだけど、隣室の壁際にはベッドが置かれていた。
また、胸の鼓動が高まる。ベッドがあることが特別なことではないのに、何故か勝手に全身が熱を帯びてくる。
「黒川さん?」
高遠さんが私の顔を覗き込んできた。いつもよりも距離が近い。
「どうした? 体調悪いの?」
心配した面持ちで訊かれる。
またさらに心臓が早鐘を打つ。どうしたものかと戸惑っていると、高遠さんの大きな手が私の額に触れた。
「ちょっと熱くない?」
気にかけてくれているのだろうけれど、触れられたことでますます熱が上がる。でも、無下に振り払うことなんて出来るはずがない。
アスファルトで舗装された駐車場。区画ごとに仕切られていて、高遠さんはその中の一カ所に車をバッグして停車させた。
「お疲れ。着いたよ」
高遠さんはそう言いながらシートベルトを外す。私もそれに倣った。
すぐ目の前には二階建てのアパートが建っている。それほど年数は経っていないのか、まずまず綺麗な建物だ。
「黒川さん、行くよ?」
声をかけられ、私はハッとする。いつの間にやら、トランクに載せていたトートバッグを手に持っていた。
「ごめんなさい! それ!」
咄嗟に頭を下げるも、高遠さんは、「別にいいよ」と笑いを含みながら返してきた。
「結構な重さだったし。この中に入ってるの、筑前煮だけじゃないだろ?」
「分かります……?」
「分かるよ。もしかして、他にもなんか作ってくれたのかな、ってちょっと期待してるんだけど?」
「――期待されるとすっごいプレッシャーなんですけど……」
「大丈夫だよ。君が作ってくれたってのが俺にとっては何より最高なことだ」
「――またそんなこと……」
軽く唇を尖らせて睨むと、高遠さんは声を上げて笑った。
「ほら、ほんとに行くぞ?」
笑ったままで高遠さんが踵を返す。
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「俺の部屋、二階の一番奥ね」
説明しながらコンクリートの階段をゆっくり昇る。それほど急ではないけれど、気を抜くとうっかり足を踏み外してしまいそうだ。
階段を昇りきってから、一番奥まで歩いてゆく。そして、ようやく部屋の前まで着くと、高遠さんは手に持っていたキーケースから鍵をひとつ選び出し、鍵穴に差し込んで回した。
「どうぞ」
ドアノブを引き、私に入るように促してくる。
「お邪魔します」
私は遠慮しつつも中に足を踏み入れる。
高遠さんはそのあとからドアを閉め、靴を脱いだ。
先ほどにも増して緊張が高まっている。今さらだけど、本当に高遠さんのアパートに来てしまったんだ、とドキドキしていた。
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また、胸の鼓動が高まる。ベッドがあることが特別なことではないのに、何故か勝手に全身が熱を帯びてくる。
「黒川さん?」
高遠さんが私の顔を覗き込んできた。いつもよりも距離が近い。
「どうした? 体調悪いの?」
心配した面持ちで訊かれる。
またさらに心臓が早鐘を打つ。どうしたものかと戸惑っていると、高遠さんの大きな手が私の額に触れた。
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