Blissful Kiss

雪原歌乃

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Chapter.7 愛され続けて

Act.3

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 その日の夜、私は高遠さんに電話した。メールにしようかとも思ったのだけど、電話越しにでも高遠さんの声を聴きたい気分だった。
『なんだ。メールで先に言ってくれれば良かったのに』
 そう私に言ってきた高遠さんは、私の通話料金のことを気にしている。
 ただ、いつも高遠さんに甘えてばかりでは申しわけないし、電話したいと先に思ったのは私だ。
「さすがに、電話下さい、なんて催促は出来ませんよ……」
 そう言いつつ、予告もなしにいきなり電話も失礼だっただろうか、と咄嗟に気付き、それを伝えると、『そんなことはないよ』と笑いを含みながら返された。
『絢からの連絡はいつでも大歓迎だから、俺は。むしろ、嬉しいサプライズだね』
「サプライズ、って大袈裟じゃ……」
『大袈裟かもしれないけど、本音だし』
「サラッと言いますよね、いつも……」
『そう?』
 動悸が激しくなりつつある私とは対照的に、電話の向こうの高遠さんは絶対に飄々としている。そう思うと、ちょっと悔しいような気分になる。
『で、今日はどうしたの?』
 ただ、私が電話してきただけだとは思わなかったのだろう。高遠さんから訊ねてきた。
 私はおもむろに、「実はですね」と言葉を紡いだ。
「来週土日、休みになったんです。木金出てほしいから、代わりに休んでいい、ってシフト担当してる人が言ってくれて」
『えっ、ほんとに?』
「はい。ちゃんと確認したので間違いないです」
 あまりに嬉し過ぎて声を上げ、立原さんをドン引きさせたことはさすがに省略した。
「なので、高遠さんの都合も良かったら……、逢えたら……」
 自ら『逢いたい』と口にするのは、穴があったら入りたいほど恥ずかしかった。何となく濁しても高遠さんなら察してくれるとは思ったけれど、言うべきことはしっかり言わないといけない。
 また、胸の鼓動が高鳴る。全身も火照り、自分の身体が自分のものではないような気持ちになって来た。
『じゃあ、今度は泊まりにおいで』
 高遠さんから改めて誘われた。
 私の脳裏に、また、初めて抱かれた時のことが浮かび上がる。あの時はその日のうちに帰るからと一度しかしなかったけれど、泊まりとなればどうなるか分からない。いや、高遠さんのことだから、私を無理させるようなことはしないとは思う。思いたい。
「――泊まって、何したいです……?」
 動揺して、ずいぶんと間抜けな質問を投げかけてしまった。
 私達の間に沈黙が流れる。けれど、ほどなくして、高遠さんから『あっははは!』と高らかな笑い声が聴こえてきた。
『そうだなあ。じゃあ、朝メシでも作ってもらおうかな? 夜は外で食おう』
「それだけ、ですか……?」
『ん? 他に何かある?』
 しれっと訊き返してくる高遠さん。私が言わんとしたことは絶対察している。
「――私に言わせようとしてるでしょ……?」
 そう切り出すも、高遠さんはやはり、『何が?』と白々しくしている。
「――狡い……」
 唇を尖らせながら言うと、高遠さんは、『悪い悪い』と笑いを含んだ声で謝ってきた。
『でも、朝メシを期待してるのはほんとだから。あとはまあ、まったり過ごそう』
 直接的な言葉は避けていた。でも、『まったり』というのがエロティックな意味を含んでいると私は何となく察した。
「土日、楽しみにしてます」
 当たり障りなく告げると、高遠さんも、『俺も』と返してきた。
『楽しみにしてるよ。当日は迎えに行くから』
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