Blissful Kiss

雪原歌乃

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Chapter.8 過去より今が大切

Act.1-01☆

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 頬にひんやりとした空気を感じ、目が覚めた。辺りはまだ暗い。
 私のすぐ側では、高遠さんが眠っている。
 考えてみたら、高遠さんの寝顔を見るのは初めてだった。泊まることが初めてだから当然と言えば当然かもしれない。
 私はゆっくりと頬に手を伸ばしてみる。触れてみても、目を覚ます気配はない。
 私も高遠さんも、布団の中は生まれたままの格好だった。私は私で何度も激しく愛されるうちに気を失ってしまったから、その後の記憶は全くない。
 ふと、自分の下肢に手を伸ばした。割れ目を指で弄ってみたら、セックスをした名残なのか、そこはまだ潤っていた。
 自分のを触っているうちに、今度は高遠さんも気になった。高遠さんはまだ眠り続けている。少しぐらいならば目を覚ますことはないかもしれない。
 手探りで高遠さん自身を手で包み込んでみると、やんわりとしていた。触り続けていたらどうなるだろうかという好奇心が湧く。
 高遠さんが寝ているのをいいことに、私はゆっくりと高遠さん自身を動かしてみた。
 すると、私の手の動きに反応したのか、徐々に硬さを増してきた。
 このまま挿れたい衝動に駆られた。でも、自分からしたことがないし、何より避妊具を着けていない。
 私はヘッドボードに向けて顔を上げる。そこにある避妊具の箱に手を伸ばし、開けてみると、中にはまだいくつか残っていた。
 私はゆっくりと半身を起こす。そして、慣れない手付きで避妊具をひとつ取り出し、慎重に袋を破った。ただ、中身を出したはいいものの、そこからどうしていいのか分からない。出した避妊具を摘まみながら、つい、まじまじと観察してしまう。
「――絢?」
 突然名前を呼ばれ、私の心臓は跳ね上がった。悪戯が見付かった子供のような心境で、私は恐る恐る、声の主に視線を移した。
「何してたの?」
 高遠さんが寝起きの声で、やんわりと訊ねてくる。
 私は避妊具を指で持ったまま、返事も出来ずに固まっていた。
 高遠さんはそんな私を凝視し、「ああ」と小さく笑った。
「したかったの?」
「いえ、その……」
 しどろもどろになりながら言い訳を考えるも、高遠さんの言うことは図星だから返す言葉が見付からない。
「貸して」
 高遠さんは剥き出しの避妊具を私からそっと取る。そして、ゆっくりと半身を起こした。
 私が居住まいを正すと、高遠さんは丁寧にかつ素早く自身に避妊具を被せていった。
「もしかして、着けてみたかった?」
 あまりに凝視していたせいか、高遠さんが訊いてきた。
 私は、「そうゆうわけじゃないですけど」と戸惑いながら続けた。
「改めて、着けてるトコをじっくり見たことがなかったので……」
「そうだろうね」
 高遠さんは口の端を上げた。
「あえてあまり見せないようにしてたし。でも、着けてみたいなら教えるよ?」
「――着けてもらいたいんですか……?」
「絢が着けてくれると思うだけで興奮する」
 真面目に言っているのか冗談なのか分からない。でも、高遠さんは決してふざけたことを口にする人じゃないから、本音なのかもしれない。
「さて、起こされた責任はしっかり取ってもらわないとね」
 そう言いつつ、怒っている様子は全くない。むしろ、私の様子を覗って楽しんでいるようにも思える。
 けれど、私は平静を装い、高遠さんの出方を待つ。このまま寝かされて激しくされるのだろう。そう思っていたのだけど――
 高遠さんは私の意に反し、自らが先に仰向けになった。
「高遠さん……?」
 困惑を露わにしてしまうと、高遠さんはニヤリと不敵な笑みを見せた。
「このまま上に乗ってごらん」
「上に、ですか……?」
「そうだよ。慣れてきただろうし、今度は絢に頑張ってもらわないとね」
「そ、それは……」
「嫌なの?」
 少し哀しげに高遠さんが私を見つめてくる。十五歳も年上の人を苛めているようで後味が悪い。
「ど、どんな風に……?」
「絢が気持ちいいと思う方法で」
 結局、自分でどうにかしろ、という意味だろう。
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