南風に触れた氷 ― 氷の公爵と南風の令嬢 ―

南の海に抱かれた陽光の国、セレーノ湾岸公国。
白い石畳と潮風に満ちたその街で、ひとりの令嬢ヴァレンティーナ・ディ・セレーノは、無邪気なまま人々の視線を集めていた。花のように笑い、風のように歩く彼女は、自分が誰かの心を乱していることを知らない。

その国に、北方フェンサリル王国からひとりの男が訪れる。アルフレート・フォン・フェンサリル。氷と霧に閉ざされた北の大地で育った公爵は、感情を抑えた理性と静かな威圧を纏い、“氷の貴公子”と呼ばれていた。

外交使節として降り立った南の港で、彼は出会ってしまう。たった一瞬、偶然に触れた手の感触が、静かに積み上げてきた均衡を揺らしていく。

彼女はただ、そこにいるだけだった。
けれど彼にとってそれは、もう目を逸らせない存在になるには十分すぎた。

これは、氷の男と南風の令嬢が、まだ名前のない感情に触れていく物語。
静かな一瞬から始まる、耽美ロマンスの序章。
24h.ポイント 306pt
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