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11 気持ちは何処に
しおりを挟む「いらっしゃいー!」
初老夫婦がにっこりとして迎えた。
夫婦でやっているバーバー。
おばさんは雪芽と、後ろから入ってくる芳樹を眺めて、
「雪芽ちゃん髪切るの?芳樹君は昨日来たもんね。二人で来るの久しぶりね!」
奥さんが言葉をつなぐのを聞いて、雰囲気が和やかになった。そして、自分ももう大人になってきたんだ。と彼女の態度から無理矢理思うようにした。
「芳樹昨日来てたんだ。全然分からなかった」
「はいはい」
椅子にかけてタオルやカッティングクロスを巻いて、
「このくらいから短くしていく?」
「ああ……もう少し下」と、はさみが入った
雪芽の首に冷たい空気が入った。
会話を重ねる雪芽とおばさん・・・
「こんな感じはどう?」
「憧れてる女優さんはいる?」とか、髪型を模索していた。
結局に、無難に黒のボブカットに落ち着いた。
髪型の話のほかにも他愛のない世間話や、近況報告などを重ねて、切り始めるまでにだいぶ時間がかかってしまった。
あれ。
「芳樹、寝てる?」
鏡を向いたまま、後ろに呼び掛けた。
芳樹はソファに座ったまま、頭を垂れていた。
髪が整ってきた。もう夕暮れだった。
「すみません。こんな遅くまで」
「いいよう。寄り道せんと帰りや」
これから少しずつ暗くなる。もう帰ったら、ご飯を食べて髪も乾かさずに寝たい。
おばさんが芳樹を揺り起こす。
「はい。かわいいでしょ!芳樹君みてあげて」
「おーい」
ハッとして芳樹は雪芽を仰いだ。
「どうよ。芳樹。あんた、途中でいびきかいてたよ。はは」
雪芽は髪を切って変に気が大きくなった。
「え。…おお。いつぶりだろ。そんな風なの。大人のお姉さんじゃん」
「うん」
雪芽は遠くの床の方に目をやり、あらわになった首元を寂しそうにして手櫛した。
「よし。じゃあ帰るか」芳樹は膝に手を付け立ち上がった。
「お会計はもうしてあるよ。はやく帰り」とおばさんが言った。
雪芽は白い光を目の中に持ち、瞳が鋭かった。そしてここは靴箱。靴を脱いで入る床屋なのだ。
雪芽は芳樹のサンダルを持って先に履いた。
「ちょっと、それ俺の」
「いいじゃん」
少し不満げな態度で雪芽は芳樹にあたった。
「芳樹のサンダルもらってく」
「意味が分からん」
雪芽の小さな淡い青と赤のラインが施された白いスニーカーを、芳樹がつまんで持った。
「じゃあね。また。」
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