ユキメの地元は島で、幼馴染は進学でいなくなる。19の夏、私どうすればいいの? 原題:ユキメの夏

浮空みどり

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11 気持ちは何処に

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「いらっしゃいー!」

 初老夫婦がにっこりとして迎えた。

 夫婦でやっているバーバー。

 おばさんは雪芽と、後ろから入ってくる芳樹を眺めて、

「雪芽ちゃん髪切るの?芳樹君は昨日来たもんね。二人で来るの久しぶりね!」

 奥さんが言葉をつなぐのを聞いて、雰囲気が和やかになった。そして、自分ももう大人になってきたんだ。と彼女の態度から無理矢理思うようにした。


「芳樹昨日来てたんだ。全然分からなかった」

「はいはい」


  椅子にかけてタオルやカッティングクロスを巻いて、


「このくらいから短くしていく?」

「ああ……もう少し下」と、はさみが入った


  雪芽の首に冷たい空気が入った。

  会話を重ねる雪芽とおばさん・・・


「こんな感じはどう?」


「憧れてる女優さんはいる?」とか、髪型を模索していた。


  結局に、無難に黒のボブカットに落ち着いた。

  
 髪型の話のほかにも他愛のない世間話や、近況報告などを重ねて、切り始めるまでにだいぶ時間がかかってしまった。


  あれ。

「芳樹、寝てる?」


 鏡を向いたまま、後ろに呼び掛けた。

   
 芳樹はソファに座ったまま、頭を垂れていた。


 髪が整ってきた。もう夕暮れだった。


「すみません。こんな遅くまで」

「いいよう。寄り道せんと帰りや」


  これから少しずつ暗くなる。もう帰ったら、ご飯を食べて髪も乾かさずに寝たい。

  おばさんが芳樹を揺り起こす。



「はい。かわいいでしょ!芳樹君みてあげて」


「おーい」


  ハッとして芳樹は雪芽を仰いだ。


「どうよ。芳樹。あんた、途中でいびきかいてたよ。はは」 

 雪芽は髪を切って変に気が大きくなった。


「え。…おお。いつぶりだろ。そんな風なの。大人のお姉さんじゃん」


「うん」


  雪芽は遠くの床の方に目をやり、あらわになった首元を寂しそうにして手櫛した。


「よし。じゃあ帰るか」芳樹は膝に手を付け立ち上がった。


「お会計はもうしてあるよ。はやく帰り」とおばさんが言った。


  雪芽は白い光を目の中に持ち、瞳が鋭かった。そしてここは靴箱。靴を脱いで入る床屋なのだ。

  
 雪芽は芳樹のサンダルを持って先に履いた。


「ちょっと、それ俺の」


「いいじゃん」

 
  少し不満げな態度で雪芽は芳樹にあたった。


「芳樹のサンダルもらってく」


「意味が分からん」


 雪芽の小さな淡い青と赤のラインが施された白いスニーカーを、芳樹がつまんで持った。


「じゃあね。また。」




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