まだ名前のない輪郭で ― バイオレンス編【連作断章】

ねぇ、あなたは、
ふれなかった温度のことを、覚えてる?

声をかける前に、言葉が失われて、
目を合わせる前に、まなざしがかすれていって、
名を呼ぶ前に、輪郭があとずさっていた。

なにひとつ壊していないのに、
なにも起きなかった午後だけが、
なぜか、いちばん深く沈んでいる。

——これは、暴力の話じゃない。
でもきっと、暴力よりも静かに痛む何かの話。

触れずに、削れていくわたしたちの
「まだ名前のない輪郭」へ。
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