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41 愛の花

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「お父様に聞きたかったの」

「なんだ?」

「第二王子として国の為の婚姻は嫌だった?」

「俺とジェシカの婚約は、あれは国王、義父上が義兄上からジェシカを遠ざける為だったからな。でもこの国は大国と強固な関係になるから父上は話を受け入れた。兄上は義姉上と婚約していたから俺が相手になったが。義父上は相手が第二王子の俺でも良いと承諾したし俺も国の為になるのならと承諾した。

でも始めはフランキーと同じだ。なんで俺が、そう思った。好意を持つ人はいなかったが、どれだけそう学んで納得していてもいざとなると納得出来なかった。それでも国を民を危険にさらしたい訳じゃない。だから婚約を承諾したんだ。

ジェシカと始めて会った時、ジェシカに言われた。

『お互い辛い立場ですね』

お互い国を思えば断れない立場は同じ。俺は自分が辛い立場とは思っていなかったがその言葉がストンと腑に落ちたんだ。

第二王子だから当たり前、兄上を支える為に国を護る為の婚約、自分で選べない伴侶。でもそれが第二王子の定め。

他国との争いが激しい時代ではなかったがそれでも隣国とはいざこざはあったからな。幼い頃から植え付けられたその定めを心のどこかで苦痛だと思っていたんだと思い知らされた。

俺は第二王子だ、それでも良いのかと聞いた。『私も第二王女です。同じですね』とジェシカは笑った。

俺は王太子に興味もないと言った。そしたら『私も王太子妃になりたいとは思いません。もし貴方が私と婚約した事で王太子になりたいと言ったら私は反対します』そう答えた。

自分の意思を伝えるジェシカに俺の意を酌むジェシカに俺は惹かれた。この女性と婚約できて良かった、心からそう思った。

始まりはどうであれジェシカと婚姻できた事は俺の幸運だ」


幸せそうに笑うお父様。


「一つお前に秘密を教える」

「秘密?」

「お前は幼い頃から褒美を貰っただろ?」

「お菓子作りの時間ね?貰ったわ」

「フランキーの褒美はいつも決まっていた。

赤色のリボン、赤色の花束、赤色のハンカチ、赤色の髪飾り、赤色の小物入れ、

それに誕生日の祝いで何が欲しいと聞いたら自分のお金を使わせてほしいと言った。それが赤い薔薇の花の髪留めだ。

その意味が分かるか?」

「私の色だから?」

「男性が女性に贈り物を送る時は自分の色を身に着けてほしいと思い贈るもんだ。それは子供でも大人でもな。

あとな、薔薇の花は愛の花だぞ?」


お父様は笑って私の頭を撫でた。


「フランキーはいつもお前が中心だ。よく考えてやれ。俺もジェシカもお前が決めた事に反対はしない。

今日はロニーは夕方まで帰ってこない。庭でゆっくり二人の時間を楽しめ。王宮だとまたロニーが邪魔するからな」

「そうね、ありがとうお父様」


フランキーの馬車が止まりフランキーが馬車から下りてきた。


「叔父上」

「フランキー、今日は家でゆっくり過ごせ」


そういってフランキーの頭を撫でるお父様。

お父様は家の中に入っていき、


「グレース待ったか?」

「お父様と話をしてたから」

「話?」

「お父様の惚気話よ」

「叔父上は本当に叔母上を愛してるからな」

「お母様もね。今日は家の庭でお茶をしましょ」


自然と繋がれた手。

『フランキーはいつもお前が中心だ』

今まで贈られた贈り物、褒美として貰う物はいつも私の物だった。フランキーとの会話で何気なく話した物。リボンもそう。今回の褒美も私を口説く時間、結局私と関係してる。

それに自分の誕生日のお祝いで欲しい物が自分の使えるお金の許可?それも私への贈り物を買う為に?

フランキーのお金といっても好きな物を好きなだけ買える訳じゃない。高額の物を買う時は許可が必要。婚約者への贈り物は許可がなくてもお金は使えるわ。でも私は婚約者じゃないから。


そういえばフランキーの誕生会のお茶会用のドレスを作った時に珍しくお母様も一緒に同席したのよね?どんなドレスを作るの?って。

薔薇の花の刺繍はお母様が薦めてきて…

フランキーから貰った薔薇の髪留め、ちょうどドレスと合ってると思ったけどお母様ね。

あの髪留めだって高価な物よ?薔薇の花は全部ルビーで、あっ!だからお母様はフランキーの誕生日の贈り物を悩んでいた時にルビーのカフスボタンを薦めてきたのね。

ピンバッチは違う宝石のを選んでいたのにだからルビーに変えたのよ?

本来は本人の色を贈り物で贈るわ。でも目に付く所だしサファイアにしたの。綺麗な青だったから。私が一目で気に入った、そうなんだけど。

そういえばフランキーの胸元の花も薔薇だったわ。いつもの庭園でお茶をした机の上の花もよ?

ん?お茶会で私とお母様が座った机の上の花も薔薇だったわ。他の机は違う花だったから机でそれぞれ変えてるのね、って思ってたんだけど。

赤い薔薇は愛の花、ね…

知ってたわよ?でもそう思って飾る人はいないわ。だって薔薇はやっぱり誰が見ても綺麗な花だもの。飾ってあれば目につくし豪華に見えるわ。女性には好まれる花だもの。

それを愛を伝える為に使う?

綺麗だと思って飾って、愛を伝えてると勘違いしたらどうするの?

でもレーナに聞いたら『使うわよ。言葉に出来ない思いを花で伝える、素敵じゃない』って言うわね。

ん?待って?初めてフランキーから貰った刺繍入りのリボン。あれも薔薇の刺繍だったわ。ハンカチも薔薇の模様だったかも…。幼い頃は薔薇って認識よりも花、だから花の柄が嬉しかったのよね。

フランキーはずっと私に愛を伝えていたのね。それに気付かない私が悪いんだけど。

え?私が悪いの?

言葉で伝えないと分からないわよ。何のために私達は声があるの?そうでしょ?

でもその気持ちは嬉しいわ。


「ありがとうフランキー」


フランキーは私を見た。私はフランキーに笑顔で返した。



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