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しおりを挟むロニーの前に、テオと試してみた。
この前は仲が良いと言っても学園で仲良くなっただけだし。
テオとは憧れのお兄さんとしてずっと見てきたし接してきた。
「テオ、一度私を抱きしめてくれない?」
「ライラお嬢様、それは、」
「一度だけで良いから」
「では、はい」
テオに抱きしめられ、
安心はする。だけど何でだろう、しっくりこない。
「テオ、急にごめんなさい。ありがとう」
「どうされたんです?」
「ねぇ、テオ、私ねテオの事お兄さんのように憧れているの。私は覚えていないんだけど子供の頃ね?テオの事、運命の人って私が言ったらしいの」
「ライラお嬢様、憧れと恋は違いますよ」
「違うの?」
「これは俺の見解ですが、憧れは、こんな人になりたい、こんな人が恋人なら、こんな人達みたいになりたいと思う気持ちだと思います。憧れから恋をする事もあるかと思いますが、恋に発展するには何かがあったからだと思います」
「何かって?」
「それは分かりませんが」
「私は騎士になりたい訳じゃないわ」
「女性には厳しい世界です」
「テオが恋人?」
「年上は嫌いですか?」
「年はあまり気にしないわ」
「先程抱きしめましたがどう思いましたか?」
「安心したわ。でも恋人と言うよりは家族?お父様に抱きしめられた時みたいに安心して甘えられる、そんな感じだった」
「恋人の二人を見て、こんな男性が恋人ならと憧れる事がありますが、その男性がライラお嬢様に合うかはまた違う話です。その恋人二人だから羨ましく見え、こんな恋人達に自分もなりたいと思うんです」
「なら恋は?」
「胸が高鳴るとか言いますが、俺は手が繋げるか、抱きしめられるか、キスが出来るか、その人を抱きたいと思うか、を基準にします。確かに恋人以外とも出来ます。ですが、手を繋いだり抱きしめたりは家族のように思っていれば出来ます。俺がライラお嬢様を妹のように思っているように」
「妹?」
「ライラお嬢様を小さい頃から知っているんですよ?それに小さい頃のロニー坊ちゃんとライラお嬢様を遊ばせていたのは見習い騎士だった俺ですよ?」
「ええ。だから憧れていたの。どんな時でも護ってくれて、高い木から下りられなかった時も軽々下ろしてくれたわ」
「そりゃあ10歳の女の子を下ろすくらい軽いですよ」
「それもそうね」
「ライラお嬢様は俺に憧れていただけで恋はしていません。きっと俺のように軽々自分を抱き上げたり護ってくれる人が好みという事だと思います」
「騎士、確かに。護ってくれて、軽々抱き上げてくれて、優しくて…」
「騎士じゃなくても護ってくれて、軽々抱き上げてくれて、優しい人はいますよ」
「それもそうよね」
「この人の隣が落ち着く、この人なら自分を曝け出せる、この人ならキスが出来る、そう思うのも恋だと俺は思います」
「キスね」
「キスとは唇を重ねるんですよ?」
「それくらい知ってるわよ?」
「手や抱きしめるよりも唇は抵抗がありませんか?」
「確かにね。頬や額とかならお父様にもされるけど唇にされるって思ったら……気持ち悪いわね」
「なら俺なら?」
「テオ?テオなら出来そうな気もするけど、テオはそんな枠じゃないって言うか…」
テオの顔が近付いてきて、
私は咄嗟にしゃがんだ。
「ライラお嬢様、それが憧れと恋の違いです」
「うん、私もそう思ったわ……」
テオはしゃがんでいる私の頭を撫で、
「よく回りを見てみたらどうです?」
「回り?」
「今迄気付かなかった事に気付くと思いますよ」
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