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1話 初めての世界

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次に目が覚めた場所は太陽が眩しく風が心地良い草原だった。ここが違う世界なんだ…と思いながら頭が冴えずボーっとしてしまう。

「ピィ‼!」

「ぅわっ⁉」

寝転んでいた僕の左脇のあたりから鳥のような声が聞こえ慌てて起き上がる。可愛い…鳥?がいた。

病院にいた頃は暇で暇で外の世界に憧れて異世界モノの小説もよく読んだ。妖怪系のものもたまに見ていたけど、今目の前にいる子は5歳?ぐらいの見た目かな。顔を見るととても可愛い女の子。

ただ手と足が鳥。羽は白く先端にいくにつれてグラデーションで茶色っぽくなっていた。足の色は濃い茶色。ハーピーみたいな感じ?に見える。

その子がピィピィ鳴きながら僕に何か訴えかけてくる。訴えかけてくるけど頭の整理ができてない。この女の子がいるってことは、とりあえず僕がいた世界じゃないことは確かだけど…だけど、僕どうすれば良いんだ⁉

頭が冴えてきたのもあり1人プチパニック。

お母さんはいない。先生達もいない。僕1人知らない場所。不安が大きくて泣きそう…どうしようもない不安に座って周りを見渡していた頭が下を向いてしまう。




「ピィ…?ピルルル」



ふいに女の子が僕の頭をフワフワと柔らかい毛で撫でてくる。

ビクッとなったためか女の子がピルル…と言いながら手を退けるので顔を上げて見る。悲しそうな泣きそうな顔で僕を見てくる。

「ごめんね。いきなり場所が変わってたから…驚いちゃって。なぐさめてくれてたの?」

「ピィッ!」

「ありがとう。優しいんだね。元気出すからちょっと待ってね」

そう言いながら目に溜まった涙を腕でぬぐいとる。僕は違う世界に行くことを決めたんだ。しっかりしなきゃ!しっかりするんだ!!自分に言い聞かせ気持ちを切り替え上げる。

ひとまず確認しようと自分の体を見ると、青白く痩せ細った腕ではなく健康的な腕をしていた。

服装はジーパンに白シャツとかなりラフな格好ではあった。でも病院でお見舞いに来る子を見るたびにいつも思ってた。僕も普通の服が着てみたいなって。その服を僕は今着てる!

そう望んだものを着れている事が知らない世界だけど照れくさく感じそして嬉しかった。

女の子は待ちくたびれたのかピィピィと話しかけてくるその仕草が可愛い。可愛さは感じるけど敵意は感じない。僕も女の子の気持ちに応える。

「お腹減ったの?それとも喉乾いたの?」

違う違うと首を横に振る。

「僕に警戒してる?離れた方がいいかな…」

違う違うと首を横に振る。

「ここ離れた方が良いよって教えてくれてる?」

少し考える仕草をして違う違うと首を横に振る。何度か質問しては首を横に振られてを繰り返し

「ぅーん…僕に挨拶してくれてるの?」

「ピィーッ!ピィール~‼」

パァっと顔が明るくなる。そうだそうだと言わんばかりにウンウンと首を縦に振る。
なにこれ⁉めっちゃくちゃ可愛いんですけど…。




でもこんなに可愛い子がなんでこんなところに1人でいるんだろう。

「お母さんかお父さんは?はぐれちゃったの?」

「ピィ?……!ピィー!(僕を指す)」

僕の後ろを指したいのかな…。

「あっち?僕の後ろにお母さん達いるの?怒られちゃうよ。1人でこんなところにいたら」

「ピィ‼ピィーャッ(僕の膝の上にジャンプ)」

「イタタ…爪たてたら痛いよ。一緒に探しに行こう。立てるかな…。立つの久しぶりだから…ちょっと待ってね」

小さなその子を撫でた後、膝の上からおりてもらい体に力を入れ立つ動作をする。もうずっと何年もベットの上で寝ていた。立てるのかな…と不安がよぎるが難なく立てた。立てたことが嬉しくてジャンプしてみたり屈伸してみたり、自分の体が思うように動くことを確認する。

「待たせてごめんね。それじゃぁ探しに行こうか!!僕の後ろだったから…。あっちに行けば良いんだよね。手は…繋げそうにないかな」

女の子に手を差し出しそうになるが鳥の羽で手は握れそうにないかな。差し出した手を引っ込める。一瞬キョトンと女の子が目を丸くしたがすぐ笑顔になり、歩く僕の周りを嬉しそうにグルグル回った。ピィピィ♪と歌を歌い走り回る姿がまた可愛すぎた。








「うーん。結構歩いたけどこっちで良いの?お母さん達どこにいるんだろう。本当にこっち?」

「ピィ?ピィール~(また僕を指す)」

「え?今度はあっち?なんかさっきからグルグル回ってるだけな気がするんだけど。小さいし来た道覚えてないのかな」
 
先ほどから何度もこの繰り返し。お母さん達はどのあたり?と聞くと僕を指す。軽く1時間は歩いている。草原から場所は森の中に変わり一向にこの子の家族に出会える気配も見つかる気配がない。

うーん…どんどんもしかしたら離れているのかもと不安になる。女の子の目線にあわせるようにしゃがむと、それが嬉しいのか僕にくっついてきた。

「もう一度草原に戻ろうか。お母さん達戻って来てるかもしれないし。歩けそう?歩けないならおんぶするけどどうかな。ただちょっと喉乾いてきたね。キミは平気?」

「ピッ!」

女の子が両手を胸あたりにかかげると目の前にヨーヨーぐらいの水の塊がいきなりできた。

「え?これってキミが出したの?」

「ピィールゥ~♪」

そうだと嬉しそうに鳴くのが可愛い。
早く飲んでと僕の前に腕をズイズイ出してくるが…。えっとこれって飲めるのかな…。飲んでも良いものなのだろうかと躊躇する。

かといって飲めるの?とこの子に聞くのは可哀想。多分僕が喉が乾いたと言ったから出してくれたものなんだろうし。

「お水ありがとう。でもキミの方が小さいから先に飲んで喉を潤わせて。僕はその後でもう一度お水出せそうなら飲んでも良いかな?」

考えた結論。先に飲んでもらおう。なかなか飲む勇気が湧かない僕。本当にごめんよと心の中で女の子に謝る。 

女の子は水の風船に口をつけるとチューと吸っていく。その間風船は割れることなく飲めば飲むだけ小さくなっていった。最後はちゅぽんと口の中に吸い込まれて水風船は終わった。女の子は飲み終わるとすぐに、ピッ!と僕の前にお水を出してくた。その笑顔と優しさに心が痛む僕。

覚悟を決めありがとう頂くねと女の子が飲んだように僕も口をつける。感想、味は悪くないけど温いのが残念だった。


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