僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

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18話 心配と思いやりと引けない思い

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《ゴ~~~ン~~ゴ~~~~ン~~……》


歩いていると大きな鐘の音が聞こえてくる。

外にいた子供達が鐘の音を聞くと家に帰っていくので、この街での1つの合図なんだろうな。

鐘がなったら帰りなさいってことか。僕がいた世界では、夕方になると夕焼けこやけの音楽がなっていた。

それが流れたら帰る合図だったんだけど、1度で良いからそれを聞いて帰るのをしてみたかったなぁ…。


角を曲がるとパン屋ドリーが見えてくるところまで近づき、曲がると外にマーヤさんとドラスさんがソワソワしていた。

何してるんだろう。ルピと目を合わせるけど、ルピも??な様子。少し離れているけど、声張れば届くかな?

「ただいま帰りましたー!」

ハッと気づいた2人がこちらを見てホッとした顔をしている。え?なんか街であったのかな。

「あの、街でなにか…」

「ハヤト遅いじゃないかい‼︎初めて街に出るし、何かあったのかと心配してたんだよ‼︎」

「いきなりすまんな。母ちゃんが、まだかまだかと煩くてな…。小さな子供じゃないんだしと言っても聞かなくてなぁ…」

「アンタだって、音がする度に帰ってきたのか?って聞いてきたじゃないかい」

「そ、それは母ちゃんがあまりにもソワソワしてるから…」

「あたしよりも先に外に出といて、どの口がそれを言うんだい‼︎」






あぁ…また始まっちゃったよ。愛隠し劇場がと思うも見てて微笑ましくなってくる。でも、会ってまだ2日目の僕たちのことをこんなに心配してくれる人に出会えた事が感謝でしかない。

あの時ルピがドラスさんを助けてくれて、本当に良かったな。

「ハヤト!今度から鐘がなる頃には帰ってきな。遅くなる時には出かける前に言うんだよ。ルピもだよ!」

「はい!ありがとうございます」

「ピィ♪」

わかったなら良いさとマーサさんもドラスさんも笑顔を向けてくれた。

「帰ってご飯にしよう。お腹空いたろう。今日の話も聞かせておくれ」

「はい!」

マーヤさんとドラスさんに促されてパン屋ドリーへと帰る。僕が望んだ願いが1つ1つ叶っていくことが嬉しくて、涙が出そうになるのをそっと隠した。




食事をしながらいろいろな話を聞いてもらった。戦闘ギルドでのこと教会でのこと商用ギルドで出会ったドワーフのこと。

マーヤさんは、戦闘ギルドの中年男にあったら完膚無きまでに叩きのめすと言っていたけど、マーヤさんが本気出したら現実になりそうだからやめてあげて…。

ドラスさんは教会で初めて自分のステータスを見た時は感激したなぁ。でも、勇者のステータス見て凹んだよとか、たくさんの話を聞いてもらい僕は幸せを噛み締めていた。
    
ルピの服のこともお願いしてみたら喜んで作ってくれるというのだけど、お金はいらないと言われるので焦った。

ちなみにちゃんとマッタリーナで子供服の値段はリサーチ済みだ。


~~~~~~~~~~~~~~

シンプルなシャツ:銀貨1枚
スカート又はズボン:銀貨2枚
ただし、装飾やフリルがしてあるなど、手間がいる服は銀貨5枚のものもあるそうだ。

ワンピースやツナギ:銀貨3枚
インナーシャツ:銀板5枚

~~~~~~~~~~~~~~

これが相場らしい。貴族になると金貨数枚の服もあるようだけど、ルピは着ないだろうな。

ちなみに、マーヤさんお手製ワンピースはシンプルながら上品な刺繍が入れてあり、貴族の目に止まれば金貨1枚でも売れると言われビックリした。


それを踏まえ


「ルピの服をお願いするのにタダなわけにはいきません!シャツ一枚で銀貨1枚!ズボン・スカートで銀貨3枚!上下セットで銀貨5枚!ワンピースなど1枚で着れる服は銀貨4枚でどうでしょう!」

「そんなに貰えないよ!あたしの趣味みたいなもんさね。ハヤトも譲らないだろうし、妥協して銀貨1枚ずつならどうさね?」

「いえ、そんな格安なわけにいきません。マーヤさんの腕に失礼です!」

「腕ったって、しがないおばさんの服に値段をつける必要はないさ」

その後も平行線の話が続き、ドラスさんとルピはいつまで続くんだと…げんなりした顔をしていた。けど僕はここで引くわけにはいかないんだ!

さすがにしびれを切らしたルピが、間をとってシャツ以外は銀貨3枚にしようとドラスさんから借りた銀貨を並べ伝えてくる。

それが聞いて貰えないなら、服は着なくても良いという仕草までする始末。

こうなれば、僕もおばさんも引くしかない。銀貨3枚で手を打った。




今ルピが着てる服は旦那を助けてもらったお礼だから、これは絶対にお金を貰わないよ!と言い切られたため、ありがたく頂くことにした。

それとギルドで魔石が売れたので、銀貨1枚は渡すと渋々ながらも受け取ってくれホッとする。

「ルピ、今日はたくさん付き合ってもらってありがとう。ゆっくり休んでね」

「ピィ♪」

布団に入るとすぐに眠気に襲われ朝を迎えた。起きるとやっぱりルピがいない…。起こして良いよって言ったのになぁ…。

台所にはドラスさんがいて、お茶を飲んでいた。

「おはよう。よく眠れたかい?母ちゃんとルピはパン屋の方にいるよ」

「おはようございます。ぐっすり眠れました。行ってみます」

パン屋の方へ向かいこのたまらないパンの匂いが幸せだなぁ。

「マーヤさんルピおはようございます。」

「おはようハヤト!よく眠れたかい?」

「ピィ♪」

「おはようございます。よく眠れました。ルピもおはよう。起こしてくれて良かったのに」

「ピィッ!(やだ)」

「イヤなの?僕もパン焼けるところみたいんだけどなぁ」

「ルピの優しさなんだから、ありがたく受け取っときな。子供は寝るのも仕事さね。ルピも寝てて良いんだけど、あたしが起きると台所で待ってるから断るのも可哀想でね」

それって、かなり早起きなんじゃ…。身体大丈夫なのかなぁ。後で聞いてみないといけないな。

今日も厨房のイスに座るよう促されて、2人を見ているとやはり長年連れ添ったような熟年の技。うん。匠の仕事を見てる気分だよ。

マーヤさんの掛け声に合わせて手際よく仕事をこなすルピ。

たいしたもんだよと声をかけられたルピが、嬉しそうに今日も僕にドヤ顔をしてくる。可愛すぎた。反則でしょう!

それを見て、マーヤさんが優しく微笑む姿が朝から幸せを倍増させた。




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