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31話悲痛な思い
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話が終わったので外で待つドラスさんに声をかける。ゲーハさんの説明に、こんなに幼い子たちに訓練だって⁉と反対していたが、ゲーハさんに抑え込まれ無理やり納得させられていた。
「ドラス、お前が心配な気持ちもよくわかる。だからお前に提案がある。どのギルドはもだがここも職員不足でな。お前は説明が丁寧だし、冒険者としての心得もある。ハヤト達を見守るついでに、ギルドで働いてみないか?」
「それは…。ハヤト達が心配だから勿論受けれるなら受けたいが、一度逃げ出した俺に…勤まるんだろうか。それにパン屋の手伝いがな…」
「それは大丈夫だろう。うちの職員もたまに話しているが、お前はパンを潰す。会計は間違う。いても邪魔にはなるだろうが役にも立ってないだろう。いなくなっても問題は特にないさ」
「俺は外でもそんなことを言われてるのか…」
「まぁ、否定はしないな。あと、ギルド職員冒険者含めてマーヤの人柄とドリーのパンは好評でな。可能なら、マーヤにパンを持ってきてほしいんだが?金はちゃんと払うぞ」
さりげなく…でもないけど、ドラスさんとマーヤさんが僕達に会えるように考慮してくれてるんだなと感じる。きっとゲーハさんなりの優しさなんだろう。
「母ちゃんが、パンを持ってくるのは無理だ。ルピがいてくれたおかげで朝は余裕ができていたみたいだが、今後1人でやるとなれば、下準備と焼くだけでいっぱいいっぱいになるだろう」
「なら、朝は従魔がパン屋へ行けばいい。この従魔なら襲われても屁でもないだろう。力の使い方を身につけてからにはなるがな。ただし、ハヤトは当分ギルドから出すつもりはない」
さらっと、僕はギルドに監禁されるって言われちゃったよ…。この建物の中でひたすらゲーハさんに鍛えられるんだろうか。想像しただけで、なんか恐ろしくなってくるよ。
「それなら、朝パンを運ぶのは可能かもしれない。帰って母ちゃんと相談してからにはなるが」
「明日返事を聞かせてくれ。良い返事を期待している」
冒険者ギルドを後にすると、ドラスさんと家に向かい歩き始める。母ちゃんの機嫌を取るのが大変そうだと苦笑いするドラスさん。
きっと悲しいしドラスさんの事だから自分を責めてるかもしれない。僕も明日からドリーへいれないと思うと、とても寂しい…。
パン屋ドリーの前に着くと、看板がクローズになっていた。今朝パンの仕込みはしていたはずなんだけど。
ドラスさんと目を合わせ扉を開けると、マーヤさんがパン屋のレジ横に置いてあるイスに座っていた。帰ってきた僕達に、パッと顔を向けてくる。
「おまえ、今日は休業日じゃないだろう。どうしたんだ?」
「1度は開けたさね…。開けたんだけど、仕事にならなくて閉めたのさ」
「そうか。心配で仕事にならなかったのか?」
「まぁ…。そうさね…。情けない話だがね。話はついたのかい?」
「あぁ。明日からハヤト達はギルドで預かることになったよ」
それを聞いたマーヤさんが、アンタがついていったのになんでそんなことになるんだい‼と、悲痛な顔でドラスさんを見てくる。
その顔を見て僕も辛くなる…。ドラスさんも、なんとも言えない顔でマーヤさんを見つめていた。
「仕方がなかったんだ。今の俺達ではハヤト達を守ってやれない。危険があった時に、俺達に降りかかるならいいさ。でも、そうじゃない時に、お前は3度目の子供を失う勇気はあるのか?俺にはない」
「でも…それでも、アンタどうにかできなかったのかい⁉」
「マーヤ、ずっとの別れじゃない。ハヤト達が自分で自分を守れるようになるまでの辛抱だ。それに俺達になにかあれば、傷つくのはこの子達だ」
初めて見るマーヤさんの涙。お母さんが陰で泣いている姿は何度か見たことがある。その時と同じぐらい胸が痛くなる。その後、ドラスさんにお前達は2階に上がってなさいと言われ、2階へと向かった。
ルピも辛いんだろう。口には出さないけど、寂しそうに僕によっかかってくる。その姿が可哀そうで何度も頭をなでてやりながら、戻ってこれるから大丈夫だよ。僕は強くなるからねとルピに話しかけた。
「開けてもいいかい?」
「はい。大丈夫です」
「さっきは悪かったね。変なところを見せてしまったさ。事情は聞いて納得できない気持ちもあるが、今は仕方ないんだろう。ハヤト、無理はしなくていい。ダメだと思えばいつでも帰っておいで」
「僕なりにできることをやってきます」
「あんたはいつも我慢をする子さね。あたしはハヤト達を実の子供のように思っているよ。旦那も一緒の気持ちさ。辛ければ、いつでも帰ってくるんだよ…。だから、無理だけはしないでおくれ」
そういいながらマーヤさんは僕とルピを抱きしめてくれる。その姿に思わず涙がこぼれてきて、心の中でこの人たちのためにも頑張ろうと思う。僕は僕自身を守れるぐらい強くならなきゃダメなんだと。
「旦那はギルドで働くことを前向きに考えてるみたいだし、あたしもあんた達に会いたい。パンは毎朝私一人でも持って行くさね。ルピは無理はしなくていいからね」
「ピィッ‼ピルルル‼『一緒にやる‼一緒に焼くの‼』」
「ルピがマーヤさんと一緒にパン作りをやりたいみたいなんで、ご迷惑でなければ一緒に作ってあげてください」
「迷惑なんてことないさね‼一緒にやろう…一緒にやるさね…」
そういいながら、マーヤさんは涙を流しエプロンで隠そうとする姿がとても辛かった…。
「ドラス、お前が心配な気持ちもよくわかる。だからお前に提案がある。どのギルドはもだがここも職員不足でな。お前は説明が丁寧だし、冒険者としての心得もある。ハヤト達を見守るついでに、ギルドで働いてみないか?」
「それは…。ハヤト達が心配だから勿論受けれるなら受けたいが、一度逃げ出した俺に…勤まるんだろうか。それにパン屋の手伝いがな…」
「それは大丈夫だろう。うちの職員もたまに話しているが、お前はパンを潰す。会計は間違う。いても邪魔にはなるだろうが役にも立ってないだろう。いなくなっても問題は特にないさ」
「俺は外でもそんなことを言われてるのか…」
「まぁ、否定はしないな。あと、ギルド職員冒険者含めてマーヤの人柄とドリーのパンは好評でな。可能なら、マーヤにパンを持ってきてほしいんだが?金はちゃんと払うぞ」
さりげなく…でもないけど、ドラスさんとマーヤさんが僕達に会えるように考慮してくれてるんだなと感じる。きっとゲーハさんなりの優しさなんだろう。
「母ちゃんが、パンを持ってくるのは無理だ。ルピがいてくれたおかげで朝は余裕ができていたみたいだが、今後1人でやるとなれば、下準備と焼くだけでいっぱいいっぱいになるだろう」
「なら、朝は従魔がパン屋へ行けばいい。この従魔なら襲われても屁でもないだろう。力の使い方を身につけてからにはなるがな。ただし、ハヤトは当分ギルドから出すつもりはない」
さらっと、僕はギルドに監禁されるって言われちゃったよ…。この建物の中でひたすらゲーハさんに鍛えられるんだろうか。想像しただけで、なんか恐ろしくなってくるよ。
「それなら、朝パンを運ぶのは可能かもしれない。帰って母ちゃんと相談してからにはなるが」
「明日返事を聞かせてくれ。良い返事を期待している」
冒険者ギルドを後にすると、ドラスさんと家に向かい歩き始める。母ちゃんの機嫌を取るのが大変そうだと苦笑いするドラスさん。
きっと悲しいしドラスさんの事だから自分を責めてるかもしれない。僕も明日からドリーへいれないと思うと、とても寂しい…。
パン屋ドリーの前に着くと、看板がクローズになっていた。今朝パンの仕込みはしていたはずなんだけど。
ドラスさんと目を合わせ扉を開けると、マーヤさんがパン屋のレジ横に置いてあるイスに座っていた。帰ってきた僕達に、パッと顔を向けてくる。
「おまえ、今日は休業日じゃないだろう。どうしたんだ?」
「1度は開けたさね…。開けたんだけど、仕事にならなくて閉めたのさ」
「そうか。心配で仕事にならなかったのか?」
「まぁ…。そうさね…。情けない話だがね。話はついたのかい?」
「あぁ。明日からハヤト達はギルドで預かることになったよ」
それを聞いたマーヤさんが、アンタがついていったのになんでそんなことになるんだい‼と、悲痛な顔でドラスさんを見てくる。
その顔を見て僕も辛くなる…。ドラスさんも、なんとも言えない顔でマーヤさんを見つめていた。
「仕方がなかったんだ。今の俺達ではハヤト達を守ってやれない。危険があった時に、俺達に降りかかるならいいさ。でも、そうじゃない時に、お前は3度目の子供を失う勇気はあるのか?俺にはない」
「でも…それでも、アンタどうにかできなかったのかい⁉」
「マーヤ、ずっとの別れじゃない。ハヤト達が自分で自分を守れるようになるまでの辛抱だ。それに俺達になにかあれば、傷つくのはこの子達だ」
初めて見るマーヤさんの涙。お母さんが陰で泣いている姿は何度か見たことがある。その時と同じぐらい胸が痛くなる。その後、ドラスさんにお前達は2階に上がってなさいと言われ、2階へと向かった。
ルピも辛いんだろう。口には出さないけど、寂しそうに僕によっかかってくる。その姿が可哀そうで何度も頭をなでてやりながら、戻ってこれるから大丈夫だよ。僕は強くなるからねとルピに話しかけた。
「開けてもいいかい?」
「はい。大丈夫です」
「さっきは悪かったね。変なところを見せてしまったさ。事情は聞いて納得できない気持ちもあるが、今は仕方ないんだろう。ハヤト、無理はしなくていい。ダメだと思えばいつでも帰っておいで」
「僕なりにできることをやってきます」
「あんたはいつも我慢をする子さね。あたしはハヤト達を実の子供のように思っているよ。旦那も一緒の気持ちさ。辛ければ、いつでも帰ってくるんだよ…。だから、無理だけはしないでおくれ」
そういいながらマーヤさんは僕とルピを抱きしめてくれる。その姿に思わず涙がこぼれてきて、心の中でこの人たちのためにも頑張ろうと思う。僕は僕自身を守れるぐらい強くならなきゃダメなんだと。
「旦那はギルドで働くことを前向きに考えてるみたいだし、あたしもあんた達に会いたい。パンは毎朝私一人でも持って行くさね。ルピは無理はしなくていいからね」
「ピィッ‼ピルルル‼『一緒にやる‼一緒に焼くの‼』」
「ルピがマーヤさんと一緒にパン作りをやりたいみたいなんで、ご迷惑でなければ一緒に作ってあげてください」
「迷惑なんてことないさね‼一緒にやろう…一緒にやるさね…」
そういいながら、マーヤさんは涙を流しエプロンで隠そうとする姿がとても辛かった…。
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