僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

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42話僕の思い

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冒険者ギルドに着くと、昨日の依頼表に加えもう1つ新しく追加されていた。できれば同じ地域で1日に数件討伐できる依頼をお願いした。

ゲーハさんは急にやる気になってどうした?と言われたけど、強い従魔が戦いたいらしくってと笑ってごまかす。
それから1ヶ月ほどで80件以上の討伐をこなし、気が付けば僕はAランクに昇格し金貨も500枚以上に増えていた。

「ハヤト、今日の依頼なんだが南西の森でワイバーンの討伐依頼とバジリスクの討伐、あとは可能ならゴブリンの集落が出来てるしい。それの討伐を頼みたいんだが」

「はい。大丈夫です。それから1つお願いがあります」

「なんだいきなり?討伐依頼が多すぎるか?」

「いえ、そうではなくて。パン屋ドリーを出て新しく家を借りようと思うんです」

この1か月僕はずっと考えていた。これ以上パン屋ドリーにいれば、マーヤさんとドラスさんにいつか迷惑をかけてしまう可能性が大きい。

討伐をせずひっそりとパン屋ドリーで暮らす考えもあるけど、僕はこれまでずっと病院の中だった。
いろんなところに行ってみたいし、いろんなことをやってみたい。
そう思いながら、パン屋ドリーにいたのは楽しさもあったし僕の甘えでもあったけど、甘えてばかりもいられない…。

周りに迷惑をかけず、かつ僕がやりたいことを叶えるためにもお金が必要だった。だからこそ、この1ヶ月ひたすら依頼をこなした。

今は他の冒険者にバレないよう、人がいないのを確認し人がいればロッソに追い払ってもらってどうにか討伐をこなしてきた。
2人の強さを考えると、これ以上ドリーにいながらの討伐依頼はそろそろ限界だな。これだけあればどうにかなるだろう。

「ドラスとマーヤには伝えてあるのか?」

「住むところも見つけてないのに出ていくと言えば、引き留められるだけです。見つけてから伝えます」

「それもそうだな」

ガシガシと頭をかきながら、ゲーハさんは人目につかない場所の方が良いか…と1つの屋敷を教えてくれた。
昔、強いテイマーが住んでいた屋敷らしい。従魔が伸び伸びと暮らせるようにと街の外、人目が付かない場所に屋敷を立てたそうだ。

しかしテイマー死後、何世代かはテイマーの子孫が住んだらしいが街から離れ不便なのもあり手放された。
魔物が出るかもしれない場所にある屋敷に住みたいという物好きもいないため、放置されているらしい。

「手を加えれば住めないこともないと思うが…俺も何年も見てないからどうなってるのかはわからないな」

「とりあえず今日討伐依頼をこなしてから見てきても大丈夫ですか?」

「あぁ。持ち主もいない屋敷だ。街長が許可を出すなら良いだろう。許可は俺から確認しておこう」

お願いしますと伝えると、南西の森へ向けて出発した。

『ハヤト、おうち出るの?』

「うん。このままだと、迷惑かける可能性が大きいから。ルピもマーヤさんとドラスさん困らせるの嫌でしょ?」

『うん…。でも寂しい…』

ルピの気持ちもわかる。わかるけど、傷つけた時にあの時こうしてればと思ってもその時にはもう遅い。
それなら傷つける前に出ていくのが得策なんだ。ロッソは黙ってついて来ていたので、特に会話することなく南西の森に着く。

「ルピがバジリスクでロッソがワイバーンで良いかな?それが終わったらゴブリンの集落を片付けに行こう」

『大丈夫!』

『ルピがバジリスクなのは気に食わないけどそれで良いわ!』

最近は数件の討伐依頼をこなすため、別々に動いてもらい討伐をこなす。
ルピが結界を、ロッソが僕を隠す魔法をかけてくれるので、ひたすら作った薬草やリンゴを種にしたりポーションへと変える作業をしていた。

加工スキルをいろいろ調べてみると、生えるものは種やポーションに。切った木は皿やコップへと加工することが可能なことまでは分かった。
討伐依頼でお金には困っていないし、アイテムボックスには大量のポーションと種が溜まっている。

『終わったー!』

『こっちも終わったわ!』

討伐依頼確認品と魔石を集め、ゴブリンへの集落へと向かった。行ってみると思ったよりも大きな集落ができており、ゴブリンよりもさらに強いゴブリンキングなどもいた。
幸い人は捕まってないみたいだ。

ゴブリンは人間の女を捕まえては苗床としているため、これまで討伐に行っては悲惨な女性の姿を何人も見た。
最初見た時は吐き気が込み上げもどしてしまったが、慣れとは怖いものだ。

「2人に任せるよ。でも、他の冒険者に見つからないようにね」

『それなら、あたしがこの一帯を隠すわ。ルピに処理を任せて良いのかしら?』

『ルピが倒した方が早いからね!任されよう!』

ロッソがゴブリンの集落が隠れるよう魔法をかけてくれる。ルピはそれを確認すると一気に討伐を終える。
あっけない集落の終わりだけど、これが今の僕たちの現実だ。
今日頼まれた依頼を終えたため、冒険者ギルドへと戻った。

「相変わらず仕事が早いな。鑑定後、明日にでも討伐報酬は払わせてもらう」

「はい。よろしくお願いします」

「それと街長には確認はとっておいた。人も近づかない屋敷だ。直すなり壊すなり好きにしてくれて構わないということだ。街の外だから街税もいらないそうだ」

「わかりました。これからさっそく行ってみます」

ゲーハさんに挨拶を済ませ、屋敷へと向かった。
街の外にあるとは言っていたけど、進むにつれ道の整備がされなくなって長いのか草や木が生い茂り足元が悪い。
とりあえず通れるぐらいにはルピに草や木を刈ってもらう。

これでは誰も近づかないだろうな。街から1時間ほど歩いたところで、荒れ野原に建物が見えてくる。
ゲーハさん…これは屋敷と呼べるものじゃないよ…。廃墟どころか朽ちかけてるよ…。

どれだけ放置された建物なのかはわからないけど、屋根は崩れ落ちかろうじて建物としての形をとどめている程度。人が住める場所ではない。

「好きにしていいって言われたから、明日から修理しようか。修理できるかな…。」

『これ建て直した方が早くない⁉』

『こんなお化け屋敷やだ…』

2人ともそれぞれの思いを伝えてくれるけど、僕だってこんな今にも崩れ落ちそうなお化け屋敷ごめんだよ…。
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