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第54話 贖罪のローズ
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ローズは走る。
セリス達に街の危機を知らせ、4次元の家に留まるよう説得されたがそれでもローズは街へと戻り走る。
「タナカさん! 居ますか!?」
宿屋が建ち並ぶエリアを抜け、飯屋エリアに入ったローズは1番にタナカの店に駆け込んだ。
「おや? ローズちゃん! 聞いてないのかい? 早く避難しないと!」
「タナカさんもですよ! 早く逃げないと、もし街に魔物が入ってきたら逃げ遅れますよ!?」
タナカは袋に調理器具を入れており、ようやく終わったのか背中に大きな荷物を背負った。
「わざわざ来てくれたのかい? ありがとうね、これで逃げれるからローズちゃんも早く逃げな」
「いえ、街を出るまで一緒に行きます」
「おや? 連れの男性は何処に居るんだい?」
ローズは少し顔を曇らせた後に笑顔で答えた。
「セムネイル様はダンジョンに行かれてます。 秘密の方法で私がタナカさんと避難する事は伝えましたから、さぁ行きましょう!」
「そうかい。 分かったよ、一緒に逃げよう!」
2人が店を出ると、避難しようと思っていた城門の方から炸裂音が聞こえた。
「何の音!? タナカさん、近い城門は危ないかもしれません! もう1つの城門に向かいましょう!」
「そうだね……こりゃ、思ったよりも不味いね」
炸裂音のした方角からは、黒い煙が上がり誰かの悲鳴が木霊する。
飯屋エリアに残る住民達もパニックになりながら逃げ惑う。
「皆さん! 落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」
避難誘導していた兵士達も懸命にパニックを抑えようとするが、住民達は我先に反対の城門へと走り出してしまう。
「ローズちゃん、人の波に飲まれたら転倒して最悪死んでしまうよ。 少し離れよう」
「ですが、早く逃げないと!」
「ローズちゃん、多分……城門が破られた。 直ぐに魔物達が入って来るだろう。 魔物は人が多い所に向かう習性がある……気の毒だがパニックを起こしたら終わりなのさ」
何処か説得力のあるタナカの言葉にローズは押し黙り、道から逸れた。
暫くすると、重い足音が響きミノタウロスの嘶きが聞こえる。
「ひ、ひぃぃぃぃ! ミノタウロスだぁぁぁ! 魔物が入って来たぞー!」
避難誘導していた兵士達が悲鳴を上げ、順番に殺されていく。
それを、タナカとローズは影から震えながら見ていた。
「ローズちゃん、動いちゃダメだよ」
「分かってます……あ!」
2人がミノタウロス達をやり過ごそうとしたその時、逃げ送れた親子がミノタウロスに見つかった。
「ブルルルル! ブモォォォォォ!」
「あの……親子は」
ローズはその親子に見覚えがあった。
奥さんが冒険者で……副ギルドマスターの汚職を知ってしまい消したのだ。 副ギルドマスターに脅されたローズが。
「タナカさん、ごめんなさい。 どうか無事に逃げて下さい。 孤独だった私に食事を食べさせてくれた事、私の一生の思い出です。 さようなら!」
「ローズちゃんダメだ! 早まるんじゃない!!」
ローズは震える足を殴り、無理矢理走る。
「死なせない! 私のせいで不幸にしてしまった親子を絶対に死なせてたまるもんか! ごめんなさい、ごめんなさいセムネイル様! そこの化け物! その親子は殺させない! 殺すなら私を殺しなさい!!」
ミノタウロスの背後に立ち、大声で叫んだ。
「ブルルルル? ブフフフフフフ!」
「あ、ありがとうございます!」 「お父さん! あのお姉ちゃん殺されちゃうよ! お父さん!」
親子はローズに感謝しながら逃げ出した。
「いいの……ごめんね。 私……沢山の人に謝らないと。 セムネイル様……私、少し償えたでしょうか」
ミノタウロスの大斧が高く持ち上げられ、ローズの頭に向けて振り下ろされた。
◆◇◆
一方その頃、帰らずの大迷宮の入口が突如として吹き飛び入口に残っていたブラックゴブリン達が粉々に飛び散った。
「グラ! 全力で向かう。 遅れずについて来い!!」
頭から角を生やし、全身に黒雷を走らせたセムネイルが鬼の形相で街に向けて走り出す。
「うわ~……マジ切れしてるセムネイル見るの何時以来かな。 勿論、ついて行くよ!」
「ローズ……頼む、無事で居てくれ!!」
遠くに見える街は炎で光り黒煙が上がっていた。
セリス達に街の危機を知らせ、4次元の家に留まるよう説得されたがそれでもローズは街へと戻り走る。
「タナカさん! 居ますか!?」
宿屋が建ち並ぶエリアを抜け、飯屋エリアに入ったローズは1番にタナカの店に駆け込んだ。
「おや? ローズちゃん! 聞いてないのかい? 早く避難しないと!」
「タナカさんもですよ! 早く逃げないと、もし街に魔物が入ってきたら逃げ遅れますよ!?」
タナカは袋に調理器具を入れており、ようやく終わったのか背中に大きな荷物を背負った。
「わざわざ来てくれたのかい? ありがとうね、これで逃げれるからローズちゃんも早く逃げな」
「いえ、街を出るまで一緒に行きます」
「おや? 連れの男性は何処に居るんだい?」
ローズは少し顔を曇らせた後に笑顔で答えた。
「セムネイル様はダンジョンに行かれてます。 秘密の方法で私がタナカさんと避難する事は伝えましたから、さぁ行きましょう!」
「そうかい。 分かったよ、一緒に逃げよう!」
2人が店を出ると、避難しようと思っていた城門の方から炸裂音が聞こえた。
「何の音!? タナカさん、近い城門は危ないかもしれません! もう1つの城門に向かいましょう!」
「そうだね……こりゃ、思ったよりも不味いね」
炸裂音のした方角からは、黒い煙が上がり誰かの悲鳴が木霊する。
飯屋エリアに残る住民達もパニックになりながら逃げ惑う。
「皆さん! 落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」
避難誘導していた兵士達も懸命にパニックを抑えようとするが、住民達は我先に反対の城門へと走り出してしまう。
「ローズちゃん、人の波に飲まれたら転倒して最悪死んでしまうよ。 少し離れよう」
「ですが、早く逃げないと!」
「ローズちゃん、多分……城門が破られた。 直ぐに魔物達が入って来るだろう。 魔物は人が多い所に向かう習性がある……気の毒だがパニックを起こしたら終わりなのさ」
何処か説得力のあるタナカの言葉にローズは押し黙り、道から逸れた。
暫くすると、重い足音が響きミノタウロスの嘶きが聞こえる。
「ひ、ひぃぃぃぃ! ミノタウロスだぁぁぁ! 魔物が入って来たぞー!」
避難誘導していた兵士達が悲鳴を上げ、順番に殺されていく。
それを、タナカとローズは影から震えながら見ていた。
「ローズちゃん、動いちゃダメだよ」
「分かってます……あ!」
2人がミノタウロス達をやり過ごそうとしたその時、逃げ送れた親子がミノタウロスに見つかった。
「ブルルルル! ブモォォォォォ!」
「あの……親子は」
ローズはその親子に見覚えがあった。
奥さんが冒険者で……副ギルドマスターの汚職を知ってしまい消したのだ。 副ギルドマスターに脅されたローズが。
「タナカさん、ごめんなさい。 どうか無事に逃げて下さい。 孤独だった私に食事を食べさせてくれた事、私の一生の思い出です。 さようなら!」
「ローズちゃんダメだ! 早まるんじゃない!!」
ローズは震える足を殴り、無理矢理走る。
「死なせない! 私のせいで不幸にしてしまった親子を絶対に死なせてたまるもんか! ごめんなさい、ごめんなさいセムネイル様! そこの化け物! その親子は殺させない! 殺すなら私を殺しなさい!!」
ミノタウロスの背後に立ち、大声で叫んだ。
「ブルルルル? ブフフフフフフ!」
「あ、ありがとうございます!」 「お父さん! あのお姉ちゃん殺されちゃうよ! お父さん!」
親子はローズに感謝しながら逃げ出した。
「いいの……ごめんね。 私……沢山の人に謝らないと。 セムネイル様……私、少し償えたでしょうか」
ミノタウロスの大斧が高く持ち上げられ、ローズの頭に向けて振り下ろされた。
◆◇◆
一方その頃、帰らずの大迷宮の入口が突如として吹き飛び入口に残っていたブラックゴブリン達が粉々に飛び散った。
「グラ! 全力で向かう。 遅れずについて来い!!」
頭から角を生やし、全身に黒雷を走らせたセムネイルが鬼の形相で街に向けて走り出す。
「うわ~……マジ切れしてるセムネイル見るの何時以来かな。 勿論、ついて行くよ!」
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遠くに見える街は炎で光り黒煙が上がっていた。
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