【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第79話 サシャの幸せ

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 「あれ? 私は……そうだ、お兄さんに抱かれて……」

 サシャが目覚めると、知らない部屋のベットで眠っていた。 何故か部屋の雰囲気が自分の宿屋に似ていたので、セムネイルが空いてる部屋に寝かせてくれたのかと起きたが違う事に気付く。

 「知らない廊下……だね」

 自身の姿を確認すると、タンスに入れてた筈の服を着ており何が何やらのサシャは廊下を進んだ。

 すると、下に向かう階段が現れ此処が一階じゃない事を知る。

 階段の下からは賑やかな声が聞こえ、サシャは恐る恐る階段を下りた。

 「あ! サシャさん、おはようございます! 話すのは初めてですよね。 私はエルフのリンです。 お疲れだと思うのでゆっくりしてて下さいね」

 サシャに気付いて元気よく挨拶したのは、エルフの少女でありセムネイルの側に居た子だと思い出す。

 「お、おはよう……朝から賑やかだねぇ」

 安心したサシャは階段を下りて、リンやセリス達が朝食の準備をしているのを見た。

 「おはよう! セムネイルの新しい雌だな! 俺はノラだ! よろしくな!」

 狼耳をピコピコと動かして元気いっぱいのノラがサシャの周りを走る。

 「あはは、おはようさんだねぇ」

 「サシャさん、改めまして我が家へようこそ! 私はセリスです」

 「ふぎぎ! セリスちゃん、サンドイッチが板になっちゃった……。 あ、昨日会ったわよね。 魔剣の魔王グラよ」

 「うぇ?! グラさん、どうやったらサンドイッチが鉄板みたいになるんです?? あ、私はアヤメです。 よろしくお願いします」

 「「私達はカリンとコリン。 新たな妻姉妹を歓迎します」」

 サシャは7人の妻達から挨拶され、流石に圧倒される。

 「おや? えっと……そっちに座ってる娘は違うのかい?」

 サシャが指差す先には椅子に体育座りをして虚ろな目で、ブツブツ呟くタリアの姿があった。

 「先越された先越された先越された先越された先越された先越された……」

 「タリア、元気無いな! これ食え! 元気出るぞ!」

 「ちょっ?! ノラ、それはサンドイッチに入れるハムよ!」

 セリスが止めるのも聞かずに、ノラはハムの塊をタリアの口に突っ込んだ。 すると、ハムを咀嚼したタリアの瞳には生気が戻り美味しそうにハムを口いっぱいに頬張る。

 「わはは! タリア元気になったな! 元気無いときは肉だぞ、肉!」

 サシャはこの賑やかな妻姉妹の一員になったのかと、嬉しくも気恥ずかしさで頬を染めた。

 「あ、そういえばお兄さんは何処に行ったんだい? そもそも、此処は何処の家なのさ。 私、宿屋をほったらかしにしちゃってて……」

 「それなら大丈夫ですよ。 朝から貴方様とローズ姉様が、サシャさんの宿屋で受付するからって言ってましたから。 案内しますね」

 セリスに手を引かれ、サシャは家を出た。

 「こりゃ……どういう事だい?」

 周囲を見渡すと、山々が連なり美しい草原が何処までも広がっていた。 それに、大きな円形の建物に離れた所には農場や牧場の様な建物も見える。

 「こっちですよ、サシャさん」

 セリスは家の前に立つ門の所へサシャを案内した。

 「此処は欲望と狭間の魔王セムネイル様が創られた4次元世界です。 この門を潜ると、サシャさんの宿屋でお借りしてる地下の部屋に出ますよ」

 「……へ? いやいや、セリスちゃん。 流石に私をからかい……ホントだ」

 サシャが苦笑いしながら門の扉を開くと、本当にその先にはサシャの知っている地下の部屋が見えた。

 「ふふ、直ぐに貴方様のとんでもなさには馴れますよ。 あ、後でサンドイッチをお持ちするとお伝え頂けますか? 勿論、サシャさんのも持って行きますので」

 「え? えぇ?? わ、分かったよ。 ありがとうね」

 困惑したままのサシャは門を潜り、地下の部屋へと出た。

 「……あぁ! お兄さんが色々言ってた意味はこういう事かい! あはは、なるほどね。 確かに大人数でも問題無い筈さね」

 サシャが一階へと上がると、本当にセムネイルとローズが受付に座り仕事をしていた。

 「うむ、また来い」 「あはは……またのお越しをお待ちしております」

 帰る客に対し、セムネイルはとても偉そうに接客しそれをローズが苦笑いでフォローしていた。

 「ぷっ、お兄さんは接客には向いてないね」

 思わず笑ったサシャに気付いたセムネイル達は笑顔で挨拶する。

 「おう! おはようサシャ。 良く寝てたな。 ご覧の通り、何の問題も起きてないぞ?」

 「あ~……何組かセムネイル様に怒ってたのですが、殺気で黙らせて帰らせてたので確かに問題は起きてないかと……」

 サシャは自分を愛してくれる男の弱点を知れて嬉しそうに微笑んだ。

 「ありがとうね、お兄さん、ローズちゃん。 此処からは代わるよ。 あ、セリスちゃんが後でサンドイッチ持って来てくれるってさ」

 「む、そうか。 なら、それまで側に居ても良いか?」

 「へぁ? え、えぇ……そりゃ良いけど」

 サシャがチラリと見るとローズは笑顔で答える。

 「サシャさん、セムネイル様は妻姉妹の皆が仲良しなのが大好きです。 なので、甘えたい時には甘えて下さい。 セムネイル様は後で必ず埋め合わせをして下さる方なので、私や他の皆に遠慮する必要は無いですよ」

 「そういう事だ。 来い、サシャ」

 サシャは顔を真っ赤にしながら、セムネイルの隣へと座った。

 一人しか居ない受け付けに何故か2つ有った席は、サシャが何時か幼馴染と一緒になり宿屋をしたいという希望だった。

 今は、その2つの椅子にサシャは幸せそうな顔でセムネイルと座っていた。
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