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第2話 美少女!?ラッ教祖サマ誕生
テーマソングは『タイツマン』
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~~~タイツマン~~~
※リストバンド中崎・魂のポエムその2
白いタイツをなびかせて
今日も明日もタイツマン
闇に浮かぶ白い影 大きな頭が揺れている
あれは僕らのタイツマン(GO GO! タイツマン)
世界のみんなにタイツを配る それが僕の夢なんだ
世界のみんながタイツをはくと とても素敵な日になるよ
(僕はタイツマン 君もタイツマン)
けれどホントのタイツマンは僕だけさ
逆らう奴は ぶったぎれ
刃向かう奴は ぶっ殺せ
「タイツの刑だぞ わっはっはー」
キミのこころにタイツマン♡
白いタイツを輝かせ
西へ東へタイツマン
ヤツのタイツが空を切る 高笑いが響いてる
これがステキなタイツの刑(HUNTING タイツマン)
スリリングな夢をみせてあげよう だって僕はタイツマン
さぁおいで 僕と一緒におどりましょ ランランラララン楽しいゾ
(君はタイツマン 僕もタイツマン)
そして輝くタイツマンは君とともに
逆らう奴は ぶったぎれ
刃向かう奴は ぶっ殺せ
「タイツの刑だぞ わっはっはー」
キミのこころにタイツマン♡
※ ※ ※
「で、このタイツマンって何なんだよ!」
「授業中に作ったやつ。テーマソングっぽい?」
リストバンド中崎は言った。
「何の……?」
ああ、クソッ! ラッ教か。ラッ教かよ! タイツとラッキョウ、何の関係もねぇだろ!
絶句したが、この話はそれっきりになった。
オレがパン屋のバイトに行く時間になったからだ。
天才と何とかは紙一重と言うが、それにしても……。
いや『小人がシャウト!』を読んだ時から思ってたけど、オマエちょっとアタマ湧いてんじゃねぇか。そう言いたかったが、我慢した。
今夜から泊めてもらうことになっているんだ。ひとまずは何を言われても我慢、だ。
まったく。何がラッ教だ。悪ノリしたオレも悪いが、中崎……ヤツの頭がおかしいのは確かだ。
現在午後九時すぎ。バイトの帰り道。
一駅分の電車賃をケチって繁華街を歩いているところだ。
オレは一人でブツブツ愚痴りながら歩いてる。
なけなしの貯金でジャージとパンツを購入し、一応危機的状況は脱した。
真ッ裸で店に駆けこんだ時は警察呼ばれそうになったが、何とか……。うん、何とか助かったみたい。
中崎が買ってきてくれたらよかったのに、ヤツは重い腰を決して上げず、いやらしい金勘定にうつつを抜かしていやがった。
はかい荘に泊まる代わりに、一泊三百円払わされるハメになっちまった。
最初ヤツは一泊五百円よこせと言いやがった。
待てよとオレは反論する。ここって月々の家賃八千円だろ。オレから一日五百円取る気か。一ヶ月で一万五千円。つまり家賃以上の宿泊費を払えってことか。
するとヤツは堂々とこう言ったのだ。
「でなきゃ、儲からないだろうが」
この守銭奴が。
「金に関しちゃ妥協はしませんよ、ボクは」
何で敬語なんだよ。逆にムカつくわ、とオレは怒鳴ったがヤツは聞いちゃいない。
まったく金金金と浅ましいことこの上ない。
その後ヤツは四百円に値下げしたが、オレは頑として首を縦に振らず、三百円で話をつけてやった。
ヤツの言いなりにはなりねぇ。
オレが初日の三百円──なけなしの現金を払うと、ヤツは気味悪いくらいにニヤニヤ笑って「お前、バカだ」とオレを見た。
改めて言うことはないが、オレが二十五年間生きてきてダントツのナンバーワン貧乏人がリストバンド中崎だ。
そのせいか、ヤツは信じられないくらい金に汚い。
いきなりラッ教とか言い出したのも、お寺には税金がかからないとか、お布施で儲かるといった偏った知識を得たからに違いない。
破格の値段で泊めてもらうが、でもオレはラッ教にだけは協力しないぞと心に誓った。
胡散臭いったらない。ラッ教祖もラッ教徒も知ったことか。ヤツが一人でやりゃいいんだ。
そこまで考えた時、オレは全く関係のないことに気付いた。
商店街に沿ったこの路地は、そのテの店が軒を連ねる、いわゆる歓楽街だ。
つまり夜の街。それは大人の世界。行きつけのキャバクラ『クラブ・ワールド・Fカップ』はすぐ目の前だ。
「チッ……」
オレは舌打ちした。
もう三ヶ月は行ってない。何せ金がないからな。
アロハちゃんに会いたいぜ……。
オレはお気に入りのハワイ出身の女の子の名を呟いた。
中国出身のニーハオちゃんも、ブラジル出身のテクニシャン・ハットトリックちゃんもいい。韓国のキムチちゃんに、ロシアのピロシキちゃんは元気かな。
みんなものスゴイ名前だが、そのへんがグローバルな『クラブ・ワールド・Fカップ』ということだ。
ちなみに全員Fカップという触れ込みだが、それは明かにウソである。
何だが急に悲しくなって、オレはうつむいて店の前を通り過ぎた。その時だ。
「ボンジュール! ボンジュール! ホラ、言ってみナ。ボンジュールだヨ!」
けたたましい声がオレの耳を直撃した。
見ると店横手の路地裏に一人の女の子がうずくまっている。
そのヘンな発音の言葉から、日本人じゃないのは分かった。ボンジュール、ボンジュールだヨと、しつこく叫んでいるのは、どうやら店のインコに言葉を教えようとしているらしかった。
『ボンジュールダヨ』
インコが早口で繰り返す。
「ダヨはイラナイよ!」
マッタク! と叫んで、女の子はこちらを向いた。その姿にオレは息を飲む。
長い金髪と大きな茶色の目。白いキャミソールの裾が風にひらひら揺れている。
「か、可憐だ……」
その時はそう思った。
人間世界に遊びにきた妖精に違いないと、その時は本気でそう思ったんだ。
※リストバンド中崎・魂のポエムその2
白いタイツをなびかせて
今日も明日もタイツマン
闇に浮かぶ白い影 大きな頭が揺れている
あれは僕らのタイツマン(GO GO! タイツマン)
世界のみんなにタイツを配る それが僕の夢なんだ
世界のみんながタイツをはくと とても素敵な日になるよ
(僕はタイツマン 君もタイツマン)
けれどホントのタイツマンは僕だけさ
逆らう奴は ぶったぎれ
刃向かう奴は ぶっ殺せ
「タイツの刑だぞ わっはっはー」
キミのこころにタイツマン♡
白いタイツを輝かせ
西へ東へタイツマン
ヤツのタイツが空を切る 高笑いが響いてる
これがステキなタイツの刑(HUNTING タイツマン)
スリリングな夢をみせてあげよう だって僕はタイツマン
さぁおいで 僕と一緒におどりましょ ランランラララン楽しいゾ
(君はタイツマン 僕もタイツマン)
そして輝くタイツマンは君とともに
逆らう奴は ぶったぎれ
刃向かう奴は ぶっ殺せ
「タイツの刑だぞ わっはっはー」
キミのこころにタイツマン♡
※ ※ ※
「で、このタイツマンって何なんだよ!」
「授業中に作ったやつ。テーマソングっぽい?」
リストバンド中崎は言った。
「何の……?」
ああ、クソッ! ラッ教か。ラッ教かよ! タイツとラッキョウ、何の関係もねぇだろ!
絶句したが、この話はそれっきりになった。
オレがパン屋のバイトに行く時間になったからだ。
天才と何とかは紙一重と言うが、それにしても……。
いや『小人がシャウト!』を読んだ時から思ってたけど、オマエちょっとアタマ湧いてんじゃねぇか。そう言いたかったが、我慢した。
今夜から泊めてもらうことになっているんだ。ひとまずは何を言われても我慢、だ。
まったく。何がラッ教だ。悪ノリしたオレも悪いが、中崎……ヤツの頭がおかしいのは確かだ。
現在午後九時すぎ。バイトの帰り道。
一駅分の電車賃をケチって繁華街を歩いているところだ。
オレは一人でブツブツ愚痴りながら歩いてる。
なけなしの貯金でジャージとパンツを購入し、一応危機的状況は脱した。
真ッ裸で店に駆けこんだ時は警察呼ばれそうになったが、何とか……。うん、何とか助かったみたい。
中崎が買ってきてくれたらよかったのに、ヤツは重い腰を決して上げず、いやらしい金勘定にうつつを抜かしていやがった。
はかい荘に泊まる代わりに、一泊三百円払わされるハメになっちまった。
最初ヤツは一泊五百円よこせと言いやがった。
待てよとオレは反論する。ここって月々の家賃八千円だろ。オレから一日五百円取る気か。一ヶ月で一万五千円。つまり家賃以上の宿泊費を払えってことか。
するとヤツは堂々とこう言ったのだ。
「でなきゃ、儲からないだろうが」
この守銭奴が。
「金に関しちゃ妥協はしませんよ、ボクは」
何で敬語なんだよ。逆にムカつくわ、とオレは怒鳴ったがヤツは聞いちゃいない。
まったく金金金と浅ましいことこの上ない。
その後ヤツは四百円に値下げしたが、オレは頑として首を縦に振らず、三百円で話をつけてやった。
ヤツの言いなりにはなりねぇ。
オレが初日の三百円──なけなしの現金を払うと、ヤツは気味悪いくらいにニヤニヤ笑って「お前、バカだ」とオレを見た。
改めて言うことはないが、オレが二十五年間生きてきてダントツのナンバーワン貧乏人がリストバンド中崎だ。
そのせいか、ヤツは信じられないくらい金に汚い。
いきなりラッ教とか言い出したのも、お寺には税金がかからないとか、お布施で儲かるといった偏った知識を得たからに違いない。
破格の値段で泊めてもらうが、でもオレはラッ教にだけは協力しないぞと心に誓った。
胡散臭いったらない。ラッ教祖もラッ教徒も知ったことか。ヤツが一人でやりゃいいんだ。
そこまで考えた時、オレは全く関係のないことに気付いた。
商店街に沿ったこの路地は、そのテの店が軒を連ねる、いわゆる歓楽街だ。
つまり夜の街。それは大人の世界。行きつけのキャバクラ『クラブ・ワールド・Fカップ』はすぐ目の前だ。
「チッ……」
オレは舌打ちした。
もう三ヶ月は行ってない。何せ金がないからな。
アロハちゃんに会いたいぜ……。
オレはお気に入りのハワイ出身の女の子の名を呟いた。
中国出身のニーハオちゃんも、ブラジル出身のテクニシャン・ハットトリックちゃんもいい。韓国のキムチちゃんに、ロシアのピロシキちゃんは元気かな。
みんなものスゴイ名前だが、そのへんがグローバルな『クラブ・ワールド・Fカップ』ということだ。
ちなみに全員Fカップという触れ込みだが、それは明かにウソである。
何だが急に悲しくなって、オレはうつむいて店の前を通り過ぎた。その時だ。
「ボンジュール! ボンジュール! ホラ、言ってみナ。ボンジュールだヨ!」
けたたましい声がオレの耳を直撃した。
見ると店横手の路地裏に一人の女の子がうずくまっている。
そのヘンな発音の言葉から、日本人じゃないのは分かった。ボンジュール、ボンジュールだヨと、しつこく叫んでいるのは、どうやら店のインコに言葉を教えようとしているらしかった。
『ボンジュールダヨ』
インコが早口で繰り返す。
「ダヨはイラナイよ!」
マッタク! と叫んで、女の子はこちらを向いた。その姿にオレは息を飲む。
長い金髪と大きな茶色の目。白いキャミソールの裾が風にひらひら揺れている。
「か、可憐だ……」
その時はそう思った。
人間世界に遊びにきた妖精に違いないと、その時は本気でそう思ったんだ。
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