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意地悪

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 なんと、その僕の願いは数時間後にあっさりと叶ってしまった。
 だらだらと皆でご飯を食べて、僕、玲児と順番にお風呂に入ったのだが……なんと隼人が最後にお風呂に入っている間に玲児が寝てしまったのだ。現在時刻は二十二時半。ちょっと高校生の就寝時間にしては早すぎる。でも隼人と仲良くなるチャンスだと思った。早寝早起き玲児ナイス!
 風呂上がりの隼人は寝てる玲児をしばらく見つめていたが、ふっと笑みを漏らした。そして掛布団を直してやるとベッドの脇に腰掛ける。
「あーあ……仕方ねぇなぁ。こいつ、寝ると起きないしな」
「あ、隼人も知ってた? 昔から寝るのも早かったよね」
 隼人が口元を緩めて頷く。玲児と仲良しアピールをしたつもりだったのに、その顔が見たことないほど優しくて心臓が高鳴るのを感じた。隼人のカッコよさは大変だ。男の僕でもドキドキしてしまう。
「隼人って本当にかっこいいよね」
「あ? 何だ急に」
「服もおしゃれだし……どこで買ってるの?」
「ああ、あれ? バイト先のアパレルショップで貰ってるんだよ。仕事中はそこの服着るんだけどさ、何故か俺のは店長がくれるんだ。本当は買取のはずなんだけどな」
 アパレルショップ! かっこいい!
 隼人は一人暮らしをしていたり、そんなところで働いていたり容姿以外も本当に何もかもかっこいいんだな。隼人への憧れがどんどん強くなっていくのをひしひしと感じる。
「ね! じゃあ美容室は?! 決まってる?」
「カットモデル頼まれたとこで」
「す、すごい……」
 服も美容室もお金を出さなくてもいいなんて信じられない。イケメンの特権というやつなのだろうか。僕なんていつも通販サイトたかじりついてあれやこれやと買い物しているのに!
「隼人って凄いね……本当の本当にかっこいいなぁ。憧れるなぁ」
 関心して呟くと、隼人はタオルで髪の毛を拭う手を止めた。鋭い瞳でこちらをまじまじと見てくる。
「お前、素直なやつだな。でも浅人ちゃんだってめちゃくちゃ綺麗な顔してるだろ」
 カットモデル紹介してやろうかと言いながら隼人は手を伸ばし、ベッドの横に座る僕の前髪をくしゃっと柔らかくかきあげた。青くて女の子みたいな目が嫌で少し長めにしている前髪がなくなって、隼人と目が合うととてつもなく恥ずかしかった。頬が熱くなっていく。
「俺はお前の方が羨ましいけどな。大事に育てられたんじゃねぇの? そんな感じする。明るくてちょっと空気読めなくて……」
「うそ? 読めてない?!」
 さっきとは違う恥ずかしさに声を荒らげると、隼人はくすくすと笑った。
「読めてないねぇ」
「えー、気をつけないと……恥ずかし」
 両手を頬に当てて、ますます赤くなっているだろう顔を隠す。隼人は僕のおでこから手を離さないまま、床に座る僕の隣に移動する。凄く見られているのは気配でわかったが、気まずくて目を伏せたままにした。
「浅人ちゃん、本当に可愛い顔してるな」
「いやいや……」
「彼女とかいないんだっけ」
「悲しいことにできたことすらないよ……」
「マジか」
 僕が隼人の顔を見られないまま、大きな手は離れていった。やっとちらりと上目遣いに顔を確認すると、ちょっと驚いた顔をしている。
「勿体ないな。もしかして童貞?」
「ちょ!そりゃ、そうだよ!彼女できたことないんだから……でもそんなこと聞くなよぉ」
「俺も彼女作ったことはないけどね」
 隼人の言葉に情けない気持ちも忘れて驚愕した。言葉が出ず、隼人の顔をじぃっと見る。疑いの眼差しである。まさかそんなことあるわけない。いつもあーんなに女の子に囲まれているくせに。
「いやいやおいおい。なんだその顔は。マジだぞ」
「いや、ないでしょ。色んな噂たちまくりじゃん!」
 実際、隼人の交友関係の噂は凄かった。何年の誰と、何組の誰と、さらには街では女の人と歩いていたと。彼女たちと付き合っているとかヤリ捨てした(下品な言い方だが)とか。週代わりで代わる代わる違う女の子と噂が立っているのだ。
「あーあれな。誰とも付き合ってはねぇよ」
「付き合って、は?」
「興味津々かよ」
「そりゃね!? 気になるよ! 他の人ならそんな噂なんてバカバカしいと思うけど、隼人だと本当っぽいんだもん」
 鼻息荒くして迫る僕に、隼人はテーブルに肘を置きながら苦笑した。しかし頬杖をついて僕の顔を見たと思ったら、上から下まで視線を巡らし口角をくっと上げて今度は意地悪く笑った。
「噂、な。実際よりは少ないくらいだぞ」
「う、うそでしょ」
「相手に男もいるし」
「あー、男子とは噂になってないよね……」
 ふむふむ、男子ね。男子。
 なんて、納得しかけたところで僕はその不自然さに気がついた。いやいや。いやいやいやいやいや?!
 思わず隼人を見つめ後ずさりする。
 しかし隼人は逆にテーブルから離れて距離を詰めてきて。
「どうした? 引いたか?」
「いや? いやいやいやいや。引いたかって? 別に僕は自由恋愛でいいと思うよ? うん。でもその、急だから、ね、ほら」
「ぷっ、すっげー早口」
 どんどん近づいてくる隼人にそれを避ける僕。いつの間にか僕は上体を逸らして床に手をつき、隼人を見上げる体勢になっていた。
 とうとう隼人の顔は僕と鼻が触れ合いそうなほど近くまできて。こんなに近くても欠点の見えてこない、それどころか意外とまつ毛が長かったりと益々綺麗な顔に迫られる。色々とたまらない。もしかしたらからかわれているだけかもと頭を過ぎるが、同時に隼人ならば男相手でも夢中にさせてしまいそうだとも思った。
 隼人の僕を見る目がいつもと違う。いつもは見てるんだか見てないんだか、あんまり興味無さそうだったのに。今は視線が全くブレず逃してくれない。射抜かれる。目が逸らせない。
「俺さ……今日すっげぇ期待してたんだよな」
「え? なにが……」
「何にだと思う?」
 目を細めて微笑む。視線を外せないまま僕は首を横に振った。
「教えてやらないけど。でも慰めてくんない?」
「いや、あの」
 こんな展開、微塵も予想していなかった。仲良くなりたいって思ったけどこれはどういうこと?! 思ってたのと違うんですけど!!
「僕のこと、からかって……!!」
 それは突然のことだった。
 僕の唇に、隼人の唇……が。
 軽く触れただけですぐに離れた。僕よりも薄い唇だけど、柔らかかった。僕の大切なファーストキスは意味がわからないまま隼人に奪われてしまった!
 呆気にとられて黙って隼人を見上げていると、床についた僕の手に隼人の手が重なった。そしてそのままゆっくり床に押し倒されて。
「抵抗しねぇの?」
「あ、あ……」
 何も言えない僕を見下ろす隼人の顔はニヤニヤと笑っていて、やっぱりからかっているようにも見えた。でもなんだか抗えない雰囲気も持っていて。隼人が本気ならば僕は逃げられないと察した。
「キスも初めて?」
「え? あ、えと、うん」
「じゃあ初めて全部貰っちまおうかな?」
 隼人の唇がまたゆっくり近づいてくる。僕は目を逸らせない、逃げられない。今だったら避けられるのに、僕は隼人の唇を受け入れた。
「んぅ……?!」
 それはファーストキスの優しさとは全く異なるものだった。
 触れた瞬間舐め取られる下唇。そしてそのまま隼人の舌が口内に入ってきた。唇の裏側が舐められ、歯をそっと開けられ……奥に入ってくる。僕の舌は奥に引っ込んでいたが、彼の長い舌にすぐ見つかった。
 あ、逃げられない。
 そう思った瞬間、腰のあたりがキュンと切なくなった。
「ん……ふぅ……ぁ……」
 自分の口から漏れる声が初めて聞くもので恥ずかしい。でもなんだかエッチで興奮した、自分の声なのに。下半身がどんどん熱くなっていく。こんな自分に焦りと恐怖と期待を感じた。
 どうなってしまうのか怖いけど、どうなってしまうのか知りたい。
 突然唇が離れる。上手く呼吸ができなかったので息苦しくてハァハァと息が上がる。閉じていた目を開けると隼人が僕の首筋に顔を埋めた。唇が僕を撫でる。
「あ……」
「浅人ちゃん、感じやすそうだな」
「ん、恥ずかしいって、ば……」
「嫌だとは言わないんだな」
 笑いながら言われ、自分が完全に隼人を受け入れる体勢でいるのに気付かれたことを恥じた。
 今まで隼人をそんな風に見たことなんてない。ただ、かっこいいなぁ仲良くなりたいなぁって眺めていただけだ。
 自分がどうしたらいいのかわからない。でもやめて欲しいと思っていないのだけはわかっていた。
 隼人は動けないでいる僕のTシャツを首元まで捲り上げ、この貧相な体を露わにした。白い肌に浮かんだピンク色の乳首が先を固くしている。恥ずかしくてたまらない。
「あ、やだ、やめ……」
「ん? 嫌になってきた?」
「そんなとこ、見ないで」
「じゃあ、舐めるのはいい?」
「えっ……」
 ピンと乳首を指で弾かれ、肩をビクつかせてしまう。
 どんどん事が進んでいくことに流石に焦っていると、頭上で物音がした。ベッドの上からだ。玲児が寝返りを打ったらしい。
 あまりの急展開に玲児のことまで全く気が回っていなかった僕は、頭から冷水をかけられた気分だった。そうだ、玲児がいるんだ。何をやっているんだ僕達は。
 しかし覚めかけていたのに、乳首にぬるりと暖かい感触を感じ、また夢うつつな世界へと引き戻された。甘い感覚が襲いくる。
「あ、はぁっ……!」
「色素が薄くて小さくて……可愛いな」
 隼人の尖った舌先がチロチロと僕を転がす。
 乳首なんか、感じるの?
 驚きを隠せない。女性の性感帯だと思っていたからだ。隼人の舌が動く度に、お尻のあたりから背中を渡って首筋までがゾクゾクと身震いした。しかしほんの少しの理性で隼人の体を押しのけようと両手をその広い肩に添えた……が、力が入らない。
「あ、ぁ……隼人、だめ……玲児が」
 その名前に隼人がピクリと反応して顔を上げる。ベッドの上を一瞥し、すぐに視線をこちらに戻す。上目遣いが鋭くてセクシーだ。
「玲児……ね。起こして見せつけてやろうか」
「えっ?! そんな!」
「嘘だよ」
 つまらなそうな顔で隼人はすぐにまた僕の胸に顔を埋める。
「浅人ちゃんが声をもう少し控えれば玲児は起きねぇよ。余計な心配できないようにさせてやろうか」
 隼人はそう言いながら僕の下半身に手を伸ばした。ズボンの前を開き、下着越しに形を確認するかのように撫で回す。乳首を攻める舌の動きも止まらない。
 僕はもう分かっていた、自身が立ち上がっていることを。でもそんな羞恥どうでもいいくらい、下着越しの感触に期待をしている自分がいて。
「下着、濡れてるけど? これどうした?」
「あ……」
「俺にこんなことされて気持ちいいんだ?」
 僕の乳首を舐めている隼人と目が合い、急いで顔を逸らした。本当になんで嫌じゃないんだろう。下着の上からゆるく性器を握られて上下に擦られるとため息が出る。
 そんな様子を観察しながら隼人は慣れた手つきで僕の下着とスウェットを一緒くたに脱がす。晒された性器は完全に立ち上がっていて先端が濡れていた。下着の中が暑かったせいでスースーする。何の戸惑いもなく握られて、本当に男相手もできちゃうんだと感心した。
「ハーフだからでかいかと思ったけどそうでもねぇなぁ」
「う、るさい……っ」
「さすがに自分でしたことはあるだろ?」
 耳たぶに口付けされながら問われ、素直に頷く。右手で性器を扱かれ、左手で乳首を撫でられ摘まれている。もう素直になるしかできない。頭の中は初めての快感に支配されている。
「あぁ、あ、あぁ……」
「本当に気持ちよさそうだな。どう? 気持ちいいって言えよ」
「気持ち、いい……」
 口に出すと体の芯が痺れた。
「お前、エロいなぁ。そんなんだったの? 浅人ちゃん。いきなり同級生にこんなことされてそんななっちまうの?」
「だって、こんなのっ……はじめてだから、あっ」
「素質あるよ、ほんと。もっと良くしてやるよ」
 目も開けられずにひたすら快感に耐えているといきなり口付けられる。また舌が絡まってくる。舌を吸われながら先端をぐりぐりと親指で刺激されると、おかしくなりそうだった。頭に熱がこもる。
 唇が離れると隼人は下に移動して、立ち上がったものと対面した。ふぅっと息を吹かれるだけで感じてしまう。僕の視線に気付いて隼人は舌をべろんと出した。でも性器に触れてくれない。
「舐めてほしい?」
「えっ……あの……」
「腰が揺れてるぞ?」
 言われて意識すると、確かに腰を少し浮かせてヘコヘコと軽く上下させてしまっていた。情けない姿。でも僕はそんな風に隼人に言われる度、声を出す度、恥ずかしい自分を見る度、興奮が高まった。
「幻滅したよ、そんな淫乱だったんだな」
「あ、あぁっ……」
「なんもしてないのに何感じてんの?」
 言葉だけでもビクビクと震える僕を隼人が笑う。その顔が、意地悪な顔が、今まで見たどの表情よりも好きだと思った。
「ぼく……いんらん、なの?」
 もっとその顔が見たくて問いかける。
「んー? それ言うと浅人ちゃん喜んじゃうからなぁ」
「だって、隼人の言葉、気持ちいいの……」
 言葉だけじゃない、その瞳に見られるだけでも気持ちいいのだ。赤みがかった茶色の目は肉食動物みたい。見られると動けなくなって言いなりになってしまう。
「ねぇ、もっといじわる言って……」
「はっ……この、淫乱」
 瞬間、とうとう性器をべろりと舐めあげられた。声が出ないほどの衝撃。息を吸うだけで精一杯。
 隼人はそんなことはお構いなしに裏筋に舌を這わせ、先端を咥えた。口の中の温度に腰がとろける。
「あ、あぁぁー……はやとがっ、くわえてるぅ……」
 隼人の形の良い、少し薄い唇……その中に僕のものが。そんなことを考えただけで達してしまいそうになる。
 隼人の口が上下に動いて吸い上げてくる。快感に身を任せるしかできない。
 しかしその快感に混ざって突如、不快感が僕を襲った。隼人の指がうしろの排泄器官に触れている。
「あ、やだ……汚いし、なんでっ……?!」
「ん? わかんねぇの?」
 性器から口を離し、ベットの下を探る。そうやって隼人の手に握られて出てきたのは透明な液体の入ったボトルだった。粘度の高い液体をとろりと右手に垂らす。
「ローション……?」
 聞くと隼人はすぐにそれを僕のお尻に塗りつけた。ぬるっとした感触が気持ち悪い。
 でもそのヌルヌルの手で睾丸を揉まれるとなんとも言えない変な感じがした。その感覚に戸惑っていると、また排泄するためのそこに指が宛てがわれ、何度も撫でられた。変な感じがさらに高まる。
「え、なに、なにするの……?」
「女と違ってさぁ、お前には入れる穴ないだろ?」
 隼人の指にぐっと力が入る。
「だからここを使うんだよ」
 そして何も入るはずのないそこににゅるっと指が入ってきた。
 出すための場所という認識しかなかったそこはそんなに簡単に指を受け入れない。苦しい。
 ここを使うってどういうこと? 女の子の代わりに? ということはここに入れるのは……
 言葉の意味を悟ると快感の波がサーッと引いて、今度は恐怖がやってきた。そんなことできるはずがない。絶対にありえない!
「や、やだぁ! 僕、そんな……無理だよ!!」
 自分の体の中の異物を追い出したくて、腰を捻り足をバタつかせた。しかしM字に開かれていた太ももを隼人は両腕でしっかり抱いて固定した。
 そしてさらに奥に入っていく指。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
 気持ちいいという感覚はなくひたすら変な感じが続いているのに、声は舐められている時よりも自然とたくさん出てしまう。怖くてたまらない。
「あ、あ、あぁぁぁ!!」
 奥まで入ってきていた指を、今度は一気に引き抜かれた。その時、ずっと嫌な感じがしたその場所に甘い感覚が走った。
「いい声でたじゃん?」
 そうしてまた指が入ってくる。ゆっくり侵入しながら時折中が擦られる。そしてまた引き抜かれる。引き抜かれる時のそれは完全に快感になっていた。それを何度も何度も繰り返される。
「なにこれぇ……っ、やだぁ……」
「でも気持ちよくなってきたんだろ?」
 引き抜かれる。
「あぁぁ! なんでぇ?!」
「柔らかくなってきたな」
 そう言うと今度は中をぐっと抑えぐいぐいと擦られた。瞬間、頭が真っ白になり目がチカチカする。
「あぁ! あっあっあっ」
 これまでずっと隼人に与えられていた快感も今までの人生の中では凄まじいものだった。でも、これは。それよりも遥かに刺激が強く、腰が何度も跳ねた。ぐりぐりと擦られてくる一点から全身に気持ちよさが広がっていく。お尻の中の指の動きで頭がいっぱいになる。
「あっあっ、しゅごっ、あっ」
「すっげぇだらしない顔……」
「あっ、おしりがっ、あっあっ」
 自分の顔なんて構っていられない。口が閉められないから涎が垂れそうだし、目に力が入らないから半目かもしれない。でもそんなこと気にする余裕がないのだ。
 ただ、そんな僕でも気持ちいいに埋め尽くされた思考の片隅で気になることはあった。隼人の性器がここに入ったら、僕はどうなっちゃうの?
 さっきまでは恐怖を感じていたのに既に少しの期待をしている自分に驚いた。多少の怖さよりももっと気持ちいいことができるならしたい、そんな風に思えてきたのだ。
「はやとっ……」
「んー……?」
 指の動きが少し緩やかになる。
「はやとのっ、あっ、入れるの……?」
「入れて欲しいの?」
 さすがにそんなことは言えず、口を噤んだ。僕からお願いなんてさすがにできない。
 隼人はここまで楽しそうにしていたのに表情を曇らせた。あまり乗り気ではなさそうに見える。
「初めてだもんな……どうするかね。浅人ちゃんが入れて欲しいならいいけど」
「えっ……でも、はやとは……」
「別に口でしてくれりゃいいし」
 真顔で淡々と話す姿は、別に意地悪でもなんでもなく本心からそれを言っていると伝えるのに十分だった。
 ここまでしておいて酷い、と思った。こんなこと思う時点でどうかしているけれど。僕はもうすっかり隼人が欲しくなっていた。それなのに隼人はそんなこと思っていないのだろうか。
 黙っているとまた隼人の指の動きは激しくなっていった。指を入れながら、僕の先端を口内に収める。
「ひゃぁあっ!」
「イカせてやるよ」
 一度口を離し、また咥える。違う、僕がしてほしいのは違う。
「まっ、あっあっ、やだ……っ」
 快感に飲まれそうなのを必死で堪えた。ごくりと唾を飲み込む。
「はやとっ、はやとっ、やだぁ! いれてぇ!!」
 半ば叫ぶように訴えると、隼人は性器から離れ、僕の唇を手で塞いだ。
「さすがに声デカい」
 呟いて、そっと塞いでいた手が離れていく。反対側の手、中に入っている指は、中を擦る動きからまた抜き差しする動きに変わった。ゆっくりでじれったい。
「ほしいんだ?」
「ほしいぃ……はやとの、ほしいのぉ……」
「しょーがねぇな」
 隼人はため息を吐いて、僕の額に口付けた。こんなのまで気持ちいい。そして素早くズボンと下着を脱いでいく。
 恥ずかしくてあまり見られなかったが、僕のよりかなり立派なものがしっかり勃起していて、なんだか安心した。ちゃんと興奮してくれてる。
「マジではじめてもらっちまうからな?」
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