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世界魔道協会
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しおりを挟む感激したラシルに抱きつかれて居心地の悪そうなリコを助けようと思ってか、それまで黙っていたメンディスが口を開いた。
「…そろそろ離れてやったらどうだ?」
急に話し出したメンディスに、ラシルがびっくりしてリコから飛び退いたが、慌てて協会長を見ても、彼はちょっと目を瞠っただけで、すぐに思い出したように一人頷いた。
「あ、あれ……メンディス、お喋りしても大丈夫なんですか?」
なんかまずいんじゃないのかと勝手に思い込んでいたので、ラシルは狼狽える。
「ああ、この部屋の中なら大丈夫だろう」
「……ラシルが聞きたいのはそこじゃないわね、たぶん」
はいそうです、結界のことは忘れてましたけどそうでしたね。リコが照れすぎて不貞腐れたような顔のままで指摘した通り、ラシルが気にしたのは協会長にバレても大丈夫なのかという心配だ。
何しろラシルは、メンディスが元々梟で、リコが使い魔を自分好みにカスタマイズしたのでないかと疑念を抱いている。それは魔道協会の規定違反なので、何かしら罰を受けるのではと懸念したのである。
だが、協会長は破顔して言を継いだ。
「ああ、儂のことかな? 心配ご無用だよ、ラシル。喋る使い魔は珍しいわけではないからね」
「ええ!? そうなんですか!?」
そんな話、初耳だ。
「もちろん、そんなにたくさんいるわけではない。だからメンディスは基本他人の前では極力話さないようにしているとはおもうがね、儂はメンディスの秘密を知る数少ない人間の一人だよ」
「メンディスの秘密……」
では協会長はメンディスが人形になれることも知っているのだろうか。何か心の片隅に引っ掛かったラシルだったが、それが何かはわからなかった。
「そういうことだから心配いらないわ。それより、あなた自分の役割はわかったの?」
よほど恥ずかしかったのか、リコが急ぎ口調で話題を変える。ラシルもそれで少しだけ引っ掛かった何かを、すぐに忘れてしまった。
「あ、はい。えっと、悪い魔女がドラゴンを狙ってくるから、私がドラゴン使いとして、その、最果ての魔女という、悪い魔女と―――戦うってことですよね!?」
物凄く真剣に覚悟を決めて言ったのに、二人と一羽は揃ってずっこけて、それから大爆笑になった。
「いやいや、逞しいなぁ」
「何を言ってるんだお前は」
「え、あ、あれ?」
違うんですかぁ?
ラシルが戸惑っていると、リコが気を取り直したように、そして呆れたように聞き返す。
「ドラゴン使いであるあなたが、どうやって悪い魔女と戦うのよ?」
「あ、そう、いえば、そうですね……」
お母さまの大好きなロマンスノベルには、時折姫を守るために騎士が戦ったりするシーンがあるから、てっきりそういうことかと思い込んだのだが。
リコは溜め息をつきながらも答えを教えてくれた。
「あなたがするのは、ドラゴンを守ること。―――最果ての魔女と戦うのは――――私よ」
その言葉と表情は、意外なほど真剣だった。
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