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なかなか、子供を作りにくい体だったのだろうか。
もしそうならば、もう一度排卵誘発剤を使ってみる必要があるかもしれない。
そう考えた王子だったが、医者が発した言葉は全く予想外のものだった。
「殿下、おめでたですよ」
「なんですと!?」
まさか本当に授かるとは思っていなかった王子は大いに慌てる。
「そ、それで、いつ産まれるのですかな?」
「予定日は三月十日のはずです」
「なるほど。では、安静にしなければなりますまい」
「ええ。くれぐれも無理だけはなさらないようにして下さい」
「わかりました」
王子はほっと胸を撫で下ろす。
「ところで、名前などは決まっているのですか?」
「ええ。男の子なら『レオン』女の子なら『リリアナ』と決めてあります」
「それはまたどうして?」
「実は昔、我が家の傍に居ついていた猫の名なんですよ」
「ほう、猫の名前ですか。良い名ですね」
「ありがとうございます」
王子と医者は和やかな雰囲気に包まれていた。
やがて、話は今後の王位継承についてに移っていく。
「それについては、次の国王は第一王子に決まりだと思われます」
「そうか。やはりそうだろうな」
「はい。ただ、まだ幼いので成人するまでは私が摂政を務めさせていただくことになりましょう」
「よろしく頼むよ」
「心得ております」
その後、いくつかの話を終えて王子は王宮へと戻っていった。
「ふー」
部屋に戻った王子は大きく息をつく。
「やったぞ。これで晴れて俺は王様になれるんだ」
王子は嬉しさを噛み締めるように呟いた。
「よし、早速準備に取り掛からなければ」
王子は机に向かうと、何かを書き始めた。
それから数日後、アイリスの元に手紙が届いた。
差出人は王子のようだ。
一体なんだろうと封を切ると、中には地図と短い文章が書かれた紙が入っていた。
「これは……」
アイリスは眉根を寄せて考え込む。
「あの男は、いったい何を考えているの?」
アイリスは急いで服を着替えると、城へと向かったのだった。
「失礼します」
アイリスは部屋に入ると、王子に話しかけた。
「おお、アイリス。よく来てくれたね」
王子はにこやかに笑いかける。
「陛下、こちらに書かれていることはどういう意味でしょうか?」
アイリスは王子に問いかけた。
そこには次のようなことが書かれていた。
【親愛なるアイリスへ 君がここに来たということは、僕がこれから何をしようとしているのか察しがついていると思う。
でも、あえて言おう。僕は王になるつもりはない。
父上は僕のことを後継者にしようと考えているみたいだけど、とんでもない。
僕は自分の力で王座を勝ち取ってみせる。だから、アイリスには僕のために力を貸して欲しいんだ。
明日の午後二時に城の中庭に来てくれないかい?
そこで全てを話すよ】
「……」
アイリスは無表情のまま王子の手紙を見つめる。
「アイリス、どうかしたのかい?」
王子は不思議そうな顔でアイリスを見つめ返した。
「いえ、なんでもありません」
「そうか。ならいいんだけど」
王子は椅子に座ると、テーブルの上に置かれていたカップを手に取った。
「お茶にしよう。今日はアイリスの為にいいものを用意したんだよ」
王子は立ち上がって棚の中から茶葉を取り出す。
「さあ、どうぞ」
「いただきます」
アイリスは紅茶を一口飲む。
もしそうならば、もう一度排卵誘発剤を使ってみる必要があるかもしれない。
そう考えた王子だったが、医者が発した言葉は全く予想外のものだった。
「殿下、おめでたですよ」
「なんですと!?」
まさか本当に授かるとは思っていなかった王子は大いに慌てる。
「そ、それで、いつ産まれるのですかな?」
「予定日は三月十日のはずです」
「なるほど。では、安静にしなければなりますまい」
「ええ。くれぐれも無理だけはなさらないようにして下さい」
「わかりました」
王子はほっと胸を撫で下ろす。
「ところで、名前などは決まっているのですか?」
「ええ。男の子なら『レオン』女の子なら『リリアナ』と決めてあります」
「それはまたどうして?」
「実は昔、我が家の傍に居ついていた猫の名なんですよ」
「ほう、猫の名前ですか。良い名ですね」
「ありがとうございます」
王子と医者は和やかな雰囲気に包まれていた。
やがて、話は今後の王位継承についてに移っていく。
「それについては、次の国王は第一王子に決まりだと思われます」
「そうか。やはりそうだろうな」
「はい。ただ、まだ幼いので成人するまでは私が摂政を務めさせていただくことになりましょう」
「よろしく頼むよ」
「心得ております」
その後、いくつかの話を終えて王子は王宮へと戻っていった。
「ふー」
部屋に戻った王子は大きく息をつく。
「やったぞ。これで晴れて俺は王様になれるんだ」
王子は嬉しさを噛み締めるように呟いた。
「よし、早速準備に取り掛からなければ」
王子は机に向かうと、何かを書き始めた。
それから数日後、アイリスの元に手紙が届いた。
差出人は王子のようだ。
一体なんだろうと封を切ると、中には地図と短い文章が書かれた紙が入っていた。
「これは……」
アイリスは眉根を寄せて考え込む。
「あの男は、いったい何を考えているの?」
アイリスは急いで服を着替えると、城へと向かったのだった。
「失礼します」
アイリスは部屋に入ると、王子に話しかけた。
「おお、アイリス。よく来てくれたね」
王子はにこやかに笑いかける。
「陛下、こちらに書かれていることはどういう意味でしょうか?」
アイリスは王子に問いかけた。
そこには次のようなことが書かれていた。
【親愛なるアイリスへ 君がここに来たということは、僕がこれから何をしようとしているのか察しがついていると思う。
でも、あえて言おう。僕は王になるつもりはない。
父上は僕のことを後継者にしようと考えているみたいだけど、とんでもない。
僕は自分の力で王座を勝ち取ってみせる。だから、アイリスには僕のために力を貸して欲しいんだ。
明日の午後二時に城の中庭に来てくれないかい?
そこで全てを話すよ】
「……」
アイリスは無表情のまま王子の手紙を見つめる。
「アイリス、どうかしたのかい?」
王子は不思議そうな顔でアイリスを見つめ返した。
「いえ、なんでもありません」
「そうか。ならいいんだけど」
王子は椅子に座ると、テーブルの上に置かれていたカップを手に取った。
「お茶にしよう。今日はアイリスの為にいいものを用意したんだよ」
王子は立ち上がって棚の中から茶葉を取り出す。
「さあ、どうぞ」
「いただきます」
アイリスは紅茶を一口飲む。
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