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―――――王太子との結婚式当日。
純白の衣装に身を包んだ私は鏡の中の自分を見つめていた。
今日からこの国で一番偉い人の妻になるの。
そう思うだけで胸の奥がきゅんきゅんとうずいた。
私の名はルミア・ラティマー。
隣国の公爵家の娘だ。
今年二十歳になるけれど、 もう結婚できる年齢になったのだもの。
そろそろお嫁に行ってもいい頃よね?
相手はこの国の王太子様よ。とても優しくって素敵な方なんですって。
だからきっと上手くいくわ。
だってあの方の瞳には私が映っているんだもの。
私だけを見ているの。他の女なんて目に入らないみたい。
私だけを見てくれているのよ。
それがどんなに幸せなことか分かるかしら?
ねぇ、貴方もそう思わない?
でもね、それだけじゃ駄目なの。
もっと私に夢中になって欲しいし、 私もあの方に夢中になりたい。
そんな私は今、王太子とお話しているのですけど、いきなり王太子から唇を奪われて
着ている純白の衣装を剥ぎ取られてしまう。そしてそのまま床上に押し倒されて……。
「あぁっ!  いけません王太子!」
私は必死に抵抗するけれど力では敵わず、あっという間に裸体にされてしまう。
そして彼は私の体を舐め回すように見回してこう言った。
「綺麗だよルミア」
「ああ……ありがとうございます。王太子のお気に召したようで嬉しいですわ」
私は頬を染めながら礼を言う。すると王太子は私の手を掴んで引き寄せると、今度は彼の方に抱き寄せた。
「ひゃうぅ……」
私は思わず変な声を上げてしまった。何しろ初めて男の人に抱きしめられたものだから緊張してしまう。
それにしても力強い腕だった。まるで大きな手で包み込まれているような感覚に陥る。
このまま身を委ねてしまいたいくらい気持ち良かった。
(いけないわルミア。まだ始まったばかりなのにこんなことで蕩けちゃったら)
私は自分に言い聞かせるように首を横に振った。だけど体は正直で早くも火照り始めている。
それを察知されたのか彼は耳元で囁く。
「可愛いよルミア。俺だけのものにしたいほど魅力的だ」
ゾクッとした。
「やめて下さいませ王太子。私達はこれから夫婦となる仲なのですから」
私は何とか平静を保ちつつそう答えると彼を押し返そうとするが、びくりともしない。
それどころか更に強く抱きしめられてしまう。
(凄い力……これが男の力なんだわ。今まで意識したことなかったけれど、
こうして触れ合うと改めて実感するわね)
私は内心ドキドキしながらそんなことを考えていた。すると彼は私の顎に
手を当てて顔を持ち上げると、再び口づけしてきた。
先程よりも深く情熱的なキスだった。
やがて彼が顔を離すと唾液の糸が伸びていく。
「どうだい?  これで分かっただろう?」
彼は勝ち誇った笑みを浮かべて言う。
確かにその通りだと思った。でもここで負けてはいけない。
私は気丈にも笑顔を作って答えた。
「はい。よく分かりましたわ。貴方が私を愛していることが」
すると王太子は満足げに微笑むと私を抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこである。
「きゃっ!  ちょっと何をなさるんですか!?」
突然のことに驚く私を無視して彼はベッドへと歩いて行く。
そして優しく私を下ろすとその隣に横になった。
私は恥ずかしさのあまり目を背ける。
でもそんなことは許さないと言うかのように強引に視線を合わせてきた。
そしてそのまま私の上に覆い被さってくる。
もう逃げられない。
でも不思議と恐怖はなかった。むしろ期待感の方が勝っていた。
「あぁ、私達とうとう結ばれるのですね」
そう呟いた途端、王太子の顔が近づいてきて唇を奪われる。
それは優しい口付けではなく貪るような激しいものだった。
呼吸もままならないほどの激しさ。
舌まで入れられて、もう頭がおかしくなりそうなくらい気持ち良い。
全身が熱を帯びて溶けてしまいそうだ。
私はいつの間にか彼にしがみつくようにして求めていた。
やがて彼は唇を離して言う。
「ずっとこうしたかったんだ。もう我慢できない」
そう言って私の首筋から鎖骨にかけてキスを落としてきた。
「んっ……」
「痛いか?  ごめんな、もう少しだけ辛抱してくれ」
そう言いながらも彼は止まらない。今度は乳房に顔を埋めてくる。
「あぁ、君の乳房はとても柔らかくて温かいね」
そう言いながら両手で揉んでくる。
(やだ……そんなところ触っちゃ駄目ぇ)
彼の手の動きに合わせて形を変える自分の乳房を見ているうちに
恥ずかしさが込み上げてきて思わず手で隠した。
しかし彼はそんなことをしても無駄だと言わんばかりにあっさりと払い除けてしまう。
そして私の突起を指先で摘まんだり引っ張ったりして責め立ててきた。
「あぁっ!  駄目ですっ!  そんなに強くしちゃ駄目ですっ!」
私が悲鳴のような声を上げると彼はようやく手を止めた。
「ああ……悪かったよルミア。つい夢中になってしまってな。君を傷つけてしまったようだな」
彼は申し訳無さそうに謝ってきたけど、私は首を横に振って否定した。
「いいえ、違うのです王太子。私は貴方に求められることが嬉しくって……」
「ルミア……」
すると王太子は私を強く抱きしめた。そして再び激しく口づけしてくる。
今度は先程の荒々しいものではなくて甘く蕩けそうになるような優しい口づけだった。
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