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それを聞いた途端に彼は動揺し始めた。そしてその後に彼が口にしたのは信じられない内容だった。俺がこの国の王だと知った上で、この国に宣戦布告をしてきたのだから。
それはつまり戦争を仕掛けるということだ。そんなことをすれば戦争が起こることは目に見えており、その結果として多くの人が犠牲になることが分かっていながら。俺はそんな彼を許せなかった。
俺はこの場において最も強い力を持つ者だと、そう思っていた。
しかし現実は違っていて、それは俺の勘違いに過ぎなかった。だがそのお陰で気付くことができた。
俺には力が無いという、単純な事実を、だからこそ彼に、自分が何をしようとしているかを理解して欲しかった。
だが、今の俺は非力で無力な存在に過ぎない。
だからこそ、俺は俺が出来る最大限のことをする。
そう決めてからの行動は早かった。
先ずは目の前の男を倒すことに集中しなければならない。
しかし、俺が動くよりも先にラミリスの方が動いてくれていた。
その速度は俺よりも速く、一瞬にして距離を埋めるほどの速さを誇っていた。
その一撃は強力であり俺の出番は無く、そのまま決着がつく。
そう思った。
だけど彼の口から放たれたのは意外な言葉であった。
その内容は衝撃的なものであった。
俺が何者であるかを知っておきながら戦いを挑んできたらしい。
しかもその態度は俺を舐め切っており隙だらけである。
だが、俺の方も余裕がないわけではない。
確かに力は向こうが強いかも知れないけど俺にはまだ、これが残っている。
俺の手の中には聖水があり、それを勢いよく飲み干す。
これで準備は完了。後は、こいつを殺すだけだ。
俺は無防備な相手の首を掴み握り潰そうとする。
相手は俺の手を強引に振り払い殴りかかってくる。
その程度の拳など簡単に受け止めることが出来る。
手の中に生み出した闇を使い、相手の体に纏わりつかせて拘束する。さらに俺は、相手の足元に闇の沼を作り出して引きずり込む。抵抗するものの無駄であり結局は沈んでいった。
念のために警戒しつつ相手が落ちていった場所に駆け寄る。そこには全身が溶けてグチョグチャになっている人らしきものが転がっていたが既に息はなかった。俺はその死体を一蹴するとその場を離れた。
それから、俺達は皇帝がいるであろう場所に向けて進軍していった。
途中で敵に遭遇し交戦することになったものの、そこはやはり俺の力を使う場面ではなかった。
というのも、俺が出る幕もなかったから、
敵は魔物ではなく、魔族と呼ばれる者達だったがそこまで強くなかった。
ただ、俺達が倒した相手がそこそこ強かった。
まず一人、見た目は若い青年。
年齢は十代後半ぐらいで、肌の色は緑色で角が生えていて悪魔のような翼を生やしていた。
武器は剣を持っていたが、その剣からは禍々しいオーラが出ていたため、触れただけでも危険なものだと直ぐに解った。
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