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第七章 セドリック その四
(その頃の領都)①
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セドリック率いるサラトガ騎士団が全軍でノートン軍の本陣を攻め始めた頃ー。
マイロが拉致され、翌日にはアメリアまで拉致され、領都のサラトガ公爵邸に残った者たちは途方にくれていた。
もちろん方々手を尽くして探してはいるが、まるで足取りが掴めないのだ。
アメリアの侍女ハンナは泣き腫らした目のまま周囲を探し回り、侍女長のソニアが危ないからと止めてもやめようとしない。
目の前でアメリアを拐われた護衛騎士のバート、エイベル、そしてカリナは、夜も寝ていないのではと思われるほど領都内を駆けずり回っている。
先代公爵夫人の指示とはいえ邸の警護が手薄だったことを悔いている警備隊長も、夫人の侍女が入れ替わっていることに気づかなかったトマスとソニアも、皆、それぞれに後悔した。
先代公爵夫人を、ここまでのさばらせてはいけなかったのだ。
そんな中、軟禁されている先代公爵夫人だけは元気で、部屋から出られないというだけのいつもの暮らしを続けている。
時々「部屋から出せ」「宝飾品や服装品の商人を呼べ」「贔屓の吟遊詩人を呼べ」などと癇癪をおこしはするが、出される食事は平らげ、相変わらず着飾っている。
愛息子マイロが帰って来ると信じ、彼さえ帰ってくればまた元通りの生活に戻れると確信しているのだろう。
その先代公爵夫人は、アメリア拉致犯については、知らないの一点張りだった。
マイロが拉致されて泣き喚いていたところへ、侍女を通じて、犯人の方から接触してきたというのだ。
アメリア拉致に手を貸せば、かわりにマイロを返してやると。
そして、双方のパイプ役になっていたはずの侍女は、事件の直前に姿を消していた。
拉致犯に手を貸した先代公爵夫人を詰る皆を前に、彼女は冷たくこう言い放った。
「あんな女がいなくなったからって、何が問題なの?国王の手垢がついた女を下げ渡され、セドリックだって嫌がっていたじゃないの。それより、サラトガ公爵の高貴な血を引くマイロの方がよっぽど大事だわ」
しかし、アメリア拉致から丸一日過ぎても、マイロは帰って来なかった。
愚かな先代公爵夫人は漸く自分がただ騙されて利用されたと思い始めたのか、今度は部屋から出せと奇声を発し始めた。
愛息子の名を叫び、泣き声が邸に響き渡る。
一方娘のイブリンは、大人しく部屋に閉じこもっていた。
やっと、母の仕出かした事の重大さを理解したのだろう。
そうしている間に、サラトガ騎士団が全軍でノートン軍の本陣を攻め始めたとの一報があった。
領都と国境では早馬を飛ばしても丸一日ほどかかるためタイムロスがある。
だから今頃は勝っていることだろうと、サラトガ邸ではセドリックの勝ちを確信していた。
半日後には、きっと戦勝の報せが届くことだろう。
しかし、アメリアとマイロの拉致犯からは未だ接触がない。
サラトガ軍の戦勝がアメリアたちの身にどう影響するのか…カリナたちはさらに身を粉にして、2人の捜索を続けた。
そしてその数刻後、事態が動いた。
領都の外れで、マイロが保護されたのだ。
両手を縛られ、目隠しをされたままで。
マイロが拉致され、翌日にはアメリアまで拉致され、領都のサラトガ公爵邸に残った者たちは途方にくれていた。
もちろん方々手を尽くして探してはいるが、まるで足取りが掴めないのだ。
アメリアの侍女ハンナは泣き腫らした目のまま周囲を探し回り、侍女長のソニアが危ないからと止めてもやめようとしない。
目の前でアメリアを拐われた護衛騎士のバート、エイベル、そしてカリナは、夜も寝ていないのではと思われるほど領都内を駆けずり回っている。
先代公爵夫人の指示とはいえ邸の警護が手薄だったことを悔いている警備隊長も、夫人の侍女が入れ替わっていることに気づかなかったトマスとソニアも、皆、それぞれに後悔した。
先代公爵夫人を、ここまでのさばらせてはいけなかったのだ。
そんな中、軟禁されている先代公爵夫人だけは元気で、部屋から出られないというだけのいつもの暮らしを続けている。
時々「部屋から出せ」「宝飾品や服装品の商人を呼べ」「贔屓の吟遊詩人を呼べ」などと癇癪をおこしはするが、出される食事は平らげ、相変わらず着飾っている。
愛息子マイロが帰って来ると信じ、彼さえ帰ってくればまた元通りの生活に戻れると確信しているのだろう。
その先代公爵夫人は、アメリア拉致犯については、知らないの一点張りだった。
マイロが拉致されて泣き喚いていたところへ、侍女を通じて、犯人の方から接触してきたというのだ。
アメリア拉致に手を貸せば、かわりにマイロを返してやると。
そして、双方のパイプ役になっていたはずの侍女は、事件の直前に姿を消していた。
拉致犯に手を貸した先代公爵夫人を詰る皆を前に、彼女は冷たくこう言い放った。
「あんな女がいなくなったからって、何が問題なの?国王の手垢がついた女を下げ渡され、セドリックだって嫌がっていたじゃないの。それより、サラトガ公爵の高貴な血を引くマイロの方がよっぽど大事だわ」
しかし、アメリア拉致から丸一日過ぎても、マイロは帰って来なかった。
愚かな先代公爵夫人は漸く自分がただ騙されて利用されたと思い始めたのか、今度は部屋から出せと奇声を発し始めた。
愛息子の名を叫び、泣き声が邸に響き渡る。
一方娘のイブリンは、大人しく部屋に閉じこもっていた。
やっと、母の仕出かした事の重大さを理解したのだろう。
そうしている間に、サラトガ騎士団が全軍でノートン軍の本陣を攻め始めたとの一報があった。
領都と国境では早馬を飛ばしても丸一日ほどかかるためタイムロスがある。
だから今頃は勝っていることだろうと、サラトガ邸ではセドリックの勝ちを確信していた。
半日後には、きっと戦勝の報せが届くことだろう。
しかし、アメリアとマイロの拉致犯からは未だ接触がない。
サラトガ軍の戦勝がアメリアたちの身にどう影響するのか…カリナたちはさらに身を粉にして、2人の捜索を続けた。
そしてその数刻後、事態が動いた。
領都の外れで、マイロが保護されたのだ。
両手を縛られ、目隠しをされたままで。
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