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夜明け前

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 夜明けまでもう少しだろうか……

 隣でゆったりとした寝息を立てる泉の頬に触れて張り付いた乱髪をそっと整える。

 フロアランプの柔らかな灯りに照らされた泉はなんとも幸せそうな顔で眠っていた。

 何度も……泉の頬を撫でる。

 いずみ……すっごく愛おしい。

 

 ほんの数刻前まで激しく交わって、喘いでいた泉の少し開いた唇を見ていると堪らない気持ちになっていく。

 柔らかくて、気持ちいい……

 しっとりとしたその唇に自分の唇を押し当てる。

 「んっ……」

 そっと唇を離して泉を見つめるがまだ起きる気配はない。

 あんまり触ると起こしちゃうな……。

 それ以上触れるのをやめて、泉の肩まで毛布を掛け直す。



 ★


 「透、気をつけて行ってきてね!」

 少し不安そうな顔で送り出してくれる泉。
 今日はいつもとは違ってオレの方が送り出される。

 
 真実が広島に出張するというので、ついでに引き受けた取材旅行先の下見をすることになった。

 最初くらいは念入りに、真実も時間に余裕があると言ってくれたので取材場所のアタリをつけることにしたのだ。

 今日から2泊3日、泉と離れ離れになってしまう。

 「泉、出かける時と帰ってきたらしっかり鍵かけてねっ、ご飯の作り置きも冷凍してあるし、調子悪くなったらすぐ病院行くんだよ。寂しくなったら電話していいからね?」

 心配過ぎて正直出かけたくない。
 ……やっぱり断れば良かった。

 「すぐお隣に浅川さんも居るから寂しくなんて……大丈夫だよ。透こそ風邪引かないように暖かくして、調子悪い時はお薬鞄に入ってるから飲んでね」

 ……浅川さんか……ある意味1番の危険人物だが、まあ真実と籍を入れたばかりだし、何もないと信じるしかない。

 玄関できつく泉を抱きしめる。

 数時間前まで抱き合っていたのに……

 ああ、いっそ繋がったままいられたらいいのに……そんなことを思いながら、泉を抱いていた。

 「お前ら、たかだか2泊くらいでだな……」

 旅行用バッグを持ち、呆れたように真実が呟く。

 「泉……愛してるよ」

 泉にキスして、なんとか腕を離す。

 「透、私がいないからって浮気なんてしちゃイヤよ?」

 冗談のつもりなのか泉が微笑んだ。

 「そんなことしないよ。泉以外の女の子に興味ないし……」

 そっと泉の手を握ると泉に握り返された。

 「ほら、いい加減飛行機に乗り遅れるから行くぞっ!」

 真実に促されて、仕方なく鞄を持った。

 「じゃあ行ってくるね」

 泉と向き合って挨拶をする。

 「行ってらっしゃいっ!」

 微笑む泉の顔を目に焼き付けた。




 
 
 


 
 
 
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