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初めての飛行機

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 空港に着き、受付と荷物を預ける。
 「まだ少し時間あるな。何か食べるか?それとも少しその辺回るか?」
 真実は腕時計を見る。
 釣られて時計を見るとまだ少し余裕があるようだ。
 しかし、なんとなくその気が起きずに迷っていると真実が笑う。
 「まあ泉と離れて不安なのは分かる。でもまあ考えてみろよ。次に泉と来る時のための下調べだと思えばいいだろ?旨いものとか知ってれば泉に薦められるし、失敗しないで済むぞ?」
 「……確かにっ、そうだねえ。じゃあ少しお店見に行こうか」
 泉と来る時のため、そう考えたらやる気が出てくる。
 
 空港内には色んな地域のお土産やら特産品が売られていて、それだけでも賑やかで、楽しそうだ。
 真実は慣れているらしく、割とオレが好む味のお菓子やら雑貨のお店を紹介してくれた。
 ……っていうかまだ観光地に着いてもいないのに、真実が色々と買ってくれたので片手は既にお菓子の袋でいっぱいだ。
 「飛行機の中とか、ホテルで食えばいいだろ。透これも美味そうだぞ?」
 真実ったら自分では甘いものとか食べないくせに気を遣ってくれてるのかオヤツを買ってくれた。

 





 
 手荷物検査やら身体チェックを終え機内に乗り込む。
 「透飛行機は初めてだろ?窓際座れよ」
 そう言われて初めて気づく。
 そう言えば飛行機に乗るのは初めてだ。
 「真実……オレ……」
 「透シートベルトちゃんと締めろよ?離陸の時結構揺れるぞ?」
 真実はさっさと座席に座りシートベルトを締めている。
 「オレ……飛行機初めてで……」
 そう言うと真実は不思議そうな顔をしながらもオレを席に座らせた。
 「うん、分かってるって。さっさと座れよ」
 キッチリオレのシートベルトも締めてくれた真実は気が済んだように本を読み始める。
 
 「シンジっ、離陸する前に泉に電話したいよ、もし飛行機が堕ちたりしたら……」
 つい不安を口に出す。
 死ぬ前に泉の声が聞きたいっ!
 「何言ってんだよ、携帯の使用は禁止だぞ?それに飛行機が墜ちるなんて縁起でも無いこと言うなよな……」
 本を読みながら真実が苦笑する。

 何度目かの機内アナウンスで離陸することが伝えられて、飛行機がゆっくりと動き出した。
 
 ……もうこうなったら大人しくしているしかない。
 じっと座席に座り、肘掛けにしがみつく。
 
 飛行機はしばらく走り続け、やがて大きくターンをした。
 
 間もなく離陸に入るというアナウンスと共に前方に光の点灯する滑走路が目に入った。

 ……いよいよだ

 滑走路の真ん中で一度停止したかと思ったら機体の音が変わり、振動が伝わってきた。

 飛行機は滑走路を勢いよく走り始め、身体に重力がかかる。

 「っ……!!」

 振動と音は一層激しくなって、どんどんスピードを上げて走っていく飛行機。

 視界の端を光の流線がものすごい勢いで走り抜けていく……っと思った瞬間ふわりとお腹の中を掻き回されたような感覚と共にふわりと機体が飛び上がった。

 ……うわっ!
 本当に飛んだ!!すごいっ!!
 驚いて窓の外に目が釘付けになる。

 あっという間に陸は視界から消え去り、海が見えた。

 ぐんぐん高度を上げて上昇していく。
 海もあっという間に見えなくなり、やがては雲で覆われる。

 ……真っ白だ……

 そう思ったのも束の間で、雲を切り抜けて青空が見えた。

 今度は青い空……それだけの世界になった。

 綺麗だ……どこまでも青い。
 ふと下を見下ろすと真っ白な雲海が広がっていた。

 真っ青な空に真っ白な雲……
 飛行機は滑るように飛んでいく。

 
 あまりの美しさに息を呑んで窓の外を眺め続けていたら真実に声を掛けられた。

 「透、大丈夫だったろ?落ち着いたんなら腕、離せよ」

 「んっ?」

 その声に振り返ると隣の席で真実が面白そうな顔でオレを見ていた。

 ……肘置きだと思ってしがみついていたのは真実の腕だったらしい。

 「あっ!!ごめんねっ!!」

 慌てて手を離すと真実は持っていた本を広げる。

 「泉といいお前といい、飛行機の何が怖いんだよ?」

 ぼそっとつぶやいた真実はそのまま本を読み始めた。

 
 真実の邪魔をしたくもなかったし、もうしばらくこの恐ろしく美しい景色を眺めたかったので外を眺める。

 ……泉にもこの景色を見せてあげたいなあ。

 そう思った。



 
 
 
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