35 / 53
2章

35話 元所属パーティーは崩壊。俺たちには新たな仲間が増えるようです。

しおりを挟む





軽い事情聴取などを受けたのち、俺はミリリたち三人と合流する。

そのまま、カフェでのささやかな打ち上げとあいなった。

まさかの形でこそあれ、パーティーリーダーが罪を犯し勾留されたのだから、『パーティーをやめる』というソフィアの依頼は無事に達成されていた。

和気藹々として会が進んだ頃、

「それで、これから二人はどうするんだ?」

俺は単刀直入に尋ねる。

避けてもいい話だったが、それでは上辺を撫でているようで、落ち着かない。

あえて踏み込んだ。

ルリが、盛大なため息とともに、手にしていたフォークを置く。

「ヨシュっちと冒険っ! って言いたいけど、実はルリ。実家に帰らなきゃいけなくなったんだぁ。山に囲まれた田舎町の、ヤマタウン。
 どーしてもヒーラーの手を借りたい、って言われて断れなくて」
「……そっか。大変そうだな、大丈夫か、ルリ」
「行きたくないけどさぁ、ママの言うことだから無視できないし。ルリのヒールで治る人がいるなら、って思うことにした」

うん。ルリらしくて、いい決断だ。
彼女は、どこででもやっていけるだろう。

俺と違って、繕わないそのままの彼女で、だ。
ドジっ子なのが心配だが、そこは魔法をかけたお守りでも持たせておけばいい。

「また会ってね? また二人でお喋りしようね、ヨシュっち。約束だからねっ!!」

無理やり、小指を絡ませられる。ぷくぷくしていて、やわっこい。

周りからジト目が注がれるが……。別に犯罪ではないよ?

見た目はともかく、ルリは一つ下の十七歳だ。

「……約束なんてしなくても会うっての」
「そうそう、それから困ったことがあれば、いつでもレンタルしにきてねっ!」
「ヨシュっち、ミリリさんっ! ありがとうっ!!」

ルリは、俺とミリリの言葉に感激しきりであった。

ソフィアは、まるで姉のよう。それを、暖かい微笑みで見守る。

「で、ソフィアはどうなんだ。なにか決まってるのか?」
「うちは…………。とくに決まってないけど」

彼女は、俺と同郷だ。
実家はこの町から遠く、宿を借りて一人で暮らしている。

「じゃあ、レンタル冒険者やってみない? みる? みるよねっ?」

ミリリの目が、採用担当のそれへと変化していた。

「でも、うち、ヨシュアくんみたいに強くないし、いろんな役割果たせない。
 ミリリさんみたいに、明るくもないし……」
「初めは誰だってそうだよー。だから、ソフィアちゃんは新入冒険者だよっ!
 一から丁寧に教育するぜ~っ! ってどうかな、ヨシュア。今思いついたんだけど」

いや、思いつきかよ!

できればノータイムで突っ込みたかったが、ソフィアが俺を窺っているのに気付いて、彼女と目を合わせる。

「……ヨシュアくんは、うちがいても迷惑じゃない?」
「そんなわけがないだろ」

即答できる質問だった。

「ま、ミリリの言う通りだな。やるって言うなら、俺も訓練つけるくらいやるよ」
「……! ヨシュアくんが、うちの先生……」

頬下をほんのり染めて数秒、ソフィアは小さく首を振る。

「ほんとにいい? しばらくは何にも役に立たないかもしれない。……会計とか、庶務なら得意だけど」
「おぉっ、それやってほしいかもっ! 事務系、苦手なんだよぉ~。レンタルの割り当て担当とかもいいかもっ」

ミリリは、妄想を熱弁する。
その後、最初に俺へやったのと同じく、ガイダンスを始めた。

こうして、『彗星の一団』は崩壊。
俺たちには、新たな仲間が増えたのだった。



ーーそして、一方のサンタナは。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...