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一章 かつての生徒が迎えにきて

37話 その男、精霊と1000年ぶりの再会を果たす。

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さて、変態教授の件が無事に片づいて。

六の刻になり日が沈むころ、俺は一度宿に戻り、扉を締め切った。
そこで使ったのは、再びの召喚魔術である。

もう式自体は解読しているから、その精霊はすぐに飛び出してくる。

「ご主人、さっきのはひどいと思います。わたしがまだ喋っている途中でした」

と、いきなり口を尖らせるのは、白の精霊・ビアンコだ。
四つある羽をへたらせて、こちらを涙目で見る。

「君も精霊なら、千年は生きてるんだろう。15の少女と言い争うなよな……」
「だって、だってぇ」

千年前の記憶が蘇ったから、分かる。
ビアンコは、何千年生きている存在とはいえ、その精神年齢はほぼ10歳児なのだ。

それはなにも彼女に限ったことじゃない。
そもそも精霊は、澄み切った魂を持つ存在とされる。

そのため、たいていが彼女みたく子供っぽい。

「まったく変わらないな、君は」
「今呆れましたね、ご主人?」
「いいや、そのままでもいいと思うよ。それも君らしさだ」

この一言で、ビアンコの頬には朱がさす。

「えへっ、ご主人にそう言ってもらえるのは何年経っても嬉しいものですね」

これだけで機嫌が戻ってしまうのだから、純真無垢すぎる。
羽ばたきながら、にまにまと顔を触る彼女に、俺は続けて尋ねた。

「ところで、白の魔素を操ることに関しても、変わっていないって考えていいか?」
「それはもちろん……! でも、もらうものはもらいますよ?」
「あぁ、それも問題ないよ」

俺は彼女の小さな体の前へと、指を差し出す。
するとビアンコは、その先に止まり、そして小さな口を開けると、かぷりとかじりついた。

痛みは、ほとんどない。
蚊に刺された程度のかゆみがあるだけだ。

「ありがとうございます、ご主人。うん、やっぱり久しぶりにいただいても、美味ですね」

彼女は満足そうに、口元をぬぐう。

精霊は、契約をした者にしか仕えない。
彼女らが術を使う際に血を必要とするのは、契約者本人であることを確かめるためだ。

「というか、僕の身体は、前と違うんだけど……血も変わってたりはしないのかい?」
「はい、変わりませんよ。私たちは血の味そのものではなく、そこに宿る霊魂をいただいているのです」
「なるほど……。精霊は奥が深いな」

そもそも、精霊という存在自体、1000年前においても研究され尽くしてはいなかった。
また、誰かに身体を乗っ取られるようなこともなかったから、はじめて知った話だった。

魔術研究の一つとして、面白い題材かもしれない。

……が、今やりたかったのは白の魔素を利用した精霊魔術の再現だ。
そのためにわざわざ、ポーション生成用の空瓶をいくつか買って、すでに水を汲んであった。

俺はそれを、五芒星を記した魔術サークルの上に置く。
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