生命のバトン小説一覧

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 猫アレルギー持ちの父さんをどう説得するか、それが君を家族に迎えるにあたって最初にぶつかった最大の問題だった。  とある雨の日の帰り道、電信柱の下で僕と君は出逢った。  僕はまるで黒猫に託されるようにして君を預かる事になった。  3日が経ち、すでに情が移ってしまった僕は君と離れるのが辛くなっていた。  だが、君を家族に迎えるにはどうしても避けては通れない問題があった。それは動物が大好きだけど猫アレルギー持ちの父さん。  結局は君の寝顔に一目惚れした父さんがアレルギー症状を我慢して君を家族に迎えることになった。もちろん君と父さんの相性の良さがあってこその判断だったのだけれど。  それに、先住犬の柴丸も快く君を迎えてくれた。  ものすごい早さで成長する君に戸惑いながらも、何だか僕は親になったような気がして毎日嬉しくもあった。  君を眺めていると、あっという間に時は流れいつの間にか1年が過ぎた。  君は立派な大人になった。  僕達は大喜びで毎日、君の成長ぶりを語り合った。  それから少しして、愛犬の柴丸が永眠した。  家族が塞ぎ込む中、君だけはいつもと変わらぬように振る舞っていた。  でも、柴丸のお気に入りのクッションの上から動かない君を見て、1番寂しいって思っているは君だって分かった。    君は柴丸のことを実の兄のように慕っていたのだから。  それから10年という時が過ぎた頃、君は僕達の前から姿を消した。  君と出逢った時のような雨の夜に、誰もいない公園で再び君と出逢った。  そして君は生命の火で温め護った黒い仔猫を僕に託すと、夜の闇の中へと消えていった。  あれから君は帰ってこないけど、君に託された仔猫と僕達の新たな生活が始まろうとしていた。  別れはいつも辛いけど、君達と過ごす幸せな毎日の時間が僕は本当に大切だと思う。   その出会いが僕と君の物語の始まりだった。
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文字数 19,493 最終更新日 2023.07.02 登録日 2023.06.29
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