青春の残骸小説一覧

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その町は、雨が降るたびに匂いを変える。
土の湿り気、遠い記憶のなかの声、そして——忘れたはずの罪。
都会で暮らす三流ライター・朝倉透のもとに届いたのは、かつての同級生・佐伯芽衣の訃報だった。
葬儀をきっかけに25年ぶりに帰郷した彼は、封じられた旧校舎と、断片的な記憶の前に立ち尽くす。
そこには、最後まで返事の届かなかった交換日記と、「あなたに出会えてよかった」とだけ綴られた言葉があった。
忘れていたのではない。
思い出したくなかっただけだ。
償いなど、もう誰にも届かない。
それでも、あの匂いの中で、彼はようやく“自分”に出会っていく。
——雨は、すべてを洗い流してくれるわけじゃない。
◆
記憶と罪をめぐる、静かな心理ミステリー。
文字数 10,131
最終更新日 2025.05.13
登録日 2025.05.06
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