観測者 小説一覧
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夢の街で目覚めた「私」は、子どもの姿をした“天使”に手を引かれ、世界各地の終わりを見学して回る。ただしルールはひとつ──触れない。井戸端の資源争い、国境での制度死、焚書で滅びる言葉、家の中の支配、白い病棟の選別、自律兵器の「正しい誤作動」、空気が肺になる季節、赤潮の海の見殺し、停電した都市の偶発事故、そして誰もいなくなる街……。
五感の痕跡だけが静かに積み重なり、反復句「ここでは」が恐怖を淡々と告げる。やがて人類は途絶え、天使は翼を土に埋めて「ここから」原初の人間となる。畑を起こし、季節を数え、短い歌の呼吸で老いて眠る――救いは奇跡ではなく、有限を選ぶことそのものにある。
文字数 35,250
最終更新日 2025.08.31
登録日 2025.08.31
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