シニカルヒロイン 小説一覧
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私は前世で、乙女ゲームのシナリオを読んでいた――そして気づけば、悪役公爵の“便利な妹”として転生していた。台本通りなら私は物語の脇役、兄のために泣き笑いし、都合が悪くなれば誰かの「犠牲」になる運命だ。
だが、待ってくれ。そんな扱いを受けるために人生をもらった覚えはない。
現代知識は少しあるし、諦めが悪い性格だし、何より――台本の外を生きるのが性に合っている。
徒に媚びるフリをして情報をかき集め、密かに外交の本を読み、公爵家の“秘密”に小さな穴をあけていく。噂と策略で固められた聖女や貴族たちの思惑──その端をつまんで引けば、思いもよらぬほど簡単に世界は揺らぐ。
そして驚くことに、兄である問題児の公爵――彼は表向き「冷酷な悪役」だが、脚本ほど単純じゃない。私の小さな反抗はいつの間にか二人の距離を変え、国の空気を変え、物語の結び目をほどいていく。
攻略される立場でも、悪役に堕ちる側でもない。便利な妹が選んだのは――自分を主人公にすること。恋も陰謀も、私が書き換える。
「私の居場所は、誰かの道具じゃない」
そうつぶやいたとき、世界の脚本は静かにページをめくった。
文字数 147,047
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.10.22
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