カポエイラ 小説一覧

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残り香の湯、雨のジンガ

残り香の湯、雨のジンガ
【その夏、少女は「言葉」を捨て、「熱」を知った――。】 短歌を愛する慎ましき少女・ワカハ。彼女にとっての「美しさ」の象徴は、都会から帰省する憧れの存在、シィカお姉ちゃんだった。お姉ちゃんの隣で墨を磨り、三十一文字(みそひともじ)に想いを託す静かな夏。しかし、その静寂は、お姉ちゃんが連れてきた一人の男、ダニエウによって鮮烈に塗り替えられる。 ブラジルから来た褐色の巨躯。彼が庭で舞う格闘技「カポエイラ」の躍動は、ワカハが短歌に求めていた「リズム」そのものだった。お姉ちゃんへの憧れは、いつしかダニエウという強烈な「生命」への好奇心へと変わり、ワカハは彼に弟子入りする。 だが、ある夜。ワカハは見てしまう。 障子越しに映る、お姉ちゃんを蹂躙するダニエウの巨大な影。清らかだと信じていたお姉ちゃんが漏らす、淫らな喘ぎ声。 そして訪れた、激しいゲリラ豪雨の午後。 シィカのいない風呂場で、ワカハとダニエウは二人きり、一つの湯船に身を沈める。そこで彼女が触れたのは、お姉ちゃんを狂わせ、自分を震わせる、圧倒的で猛々しい「雄」の象徴だった。 【それから数年後。】 高校生になったワカハは、今も毎日庭でジンガを刻んでいる。 お姉ちゃんとダニエウの破局を知り、独り、夜の闇の中で自分の体をなぞる彼女の指先は、あの日唇に触れた「沈黙の熱」を求めて疼きだす。 「お姉ちゃん、私、もっと強くなるね」 あの夏、和紙に刻んだ湿度のある一首。 少女から女へと脱皮していくワカハの、切なくも官能的な成長の記録。
青春 連載中 短編 R15
感想数 0 文字数 656 最終更新日 2026.06.30 登録日 2026.06.30
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