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3巻
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しおりを挟む第1章 生産国アムス 火竜との出会い
1 入国早々
異世界に飛ばされた普通のおっさん、タクマ・サトウ。
行くあてのない旅を続けるなかで、いつしか彼には家族と呼べる存在が増えていた。白い狼のヴァイス、虎の神使であるゲール、神格化された鷹のアフダル、そして同じく神格化された子猿のネーロ。
ナビゲーションシステムのナビは、可愛らしい精霊の姿に実体化できるようになった。
また、鉱山都市トーランの孤児院にはタクマを慕うたくさんの孤児がいる。
タクマはこうした異世界の存在と交流することで、ゆっくりとではあるが人間として確かな成長をしていくのだった。
◇ ◇ ◇
生産国アムスでは、孤児たちが劣悪な環境で暮らすのを強いられている。
そのことを知らされたタクマは、そんな孤児たちを救うべく、一路アムスへ向かった。そうして、エンジ帝国国境の町エコーをあとにした彼らは今、越境手続きをするために、門の前に並んでいる。
アムスへ入るには、厳重な身辺調査を受ける必要がある。
タクマは本当の職業である行商人ではなく、冒険者として入国をしようとしていた。アムスでは、珍しい商品を持っているという理由で、商人が命を狙われることがあるのだ。そんなわけでタクマは、彼の能力「異世界商店」で購入した日本刀を腰に装備している。
これまでの国境越えとは違い、衛兵は殺気立っていた。タクマたちの順番が来ると、衛兵が偉そうな態度で呼ぶ。
「おい! 手続きはこっちだ! 早く来い」
タクマが促されるまま衛兵の前に立つと、衛兵は身分証を出すように命令する。タクマは動じることなく、無言でSランクの冒険者ギルドカードを提示した。
このカードはエコーで発行してもらったもので、通称「偽装カード」と呼ばれる。商業ギルド所属の行商人であっても、冒険者ギルド所属の冒険者のように偽装できるのだ。
「こ、これは……失礼しました! Sランクの冒険者様だとは知らずに失礼なことを」
「ああ、構わないからさっさと手続きをしてくれ」
タクマはほんの少しだけ威圧を込めてそう言って、衛兵に早くするように促す。衛兵はビクッと体を震わせながら手続きを進めていった。
(やれやれ。入国する前からこれか。先が思いやられるな)
タクマは、自分のほうをチラチラ見てくる衛兵にため息を吐いて待つ。プレッシャーを与えたのが効いたのか、手続きは意外にも、ものの数分で終了した。
入国してからしばらく街道を歩いていた。だが、門を出た早々からタクマの様子を窺う気配がある。一定の距離を取ってジッと観察しているようだ。敵意はないものの、付けられるのは気分が良くない。そう考えたタクマは行動に出ることにした。
念話でネーロに指示を与える。
(ネーロ、こっちを観察している奴らがいるのは分かってるな? とりあえず感電でもさせて行動不能にしてくれ。くれぐれも殺すなよ)
(はーい。拘束するよー)
指示を受けたネーロがすぐさま動く。小さい体を利用して相手に気づかれずに背後に回り込むと、そのまま全員を感電させて動けないようにした。
タクマが駆けつけると、そこには少年三人と少女二人が、体をピクピクさせて気を失っていた。
なぜ付けていたのか聞き出すため、彼らが目を覚ますまで待つ。ネーロの電撃は弱めに調整してあったので、彼らはすぐに起き上がった。
「さて、全員起きたな? なぜ俺たちを見ていたんだ? 正直に話してくれるか?」
「「「「「……」」」」」
彼らは黙ったままだった。互いに顔を見合わせるものの口を開こうとはしない。
「そうか。言う気はないと? それじゃあしょうがない」
タクマはそう言うと、先ほどのネーロが放ったのと同じくらいの電撃を手にまとわせながら、さらにもう一度質問をする。
「言えないのであれば、また眠ってもらってから衛兵に突き出すしかないんだが……どうする?」
怖そうな顔を作って、近づいていくタクマ。すると、少年たちはガタガタと震えて許しを求めてきた。
「す、すみませんでした。理由を話しますから許してください!!」
仕舞いには、土下座のような恰好で謝ってくる。
それを見たタクマは魔法を解除した。だが、念のためヴァイスたちには威嚇をさせておく。
「謝罪は受け取っておくが、お前たちが少しでも変な動きをしたら、また気絶してもらうからな。そのあとで衛兵に知らせることになるぞ? ……で、何で俺らを付けていた?」
「付けたなんて滅相もない。僕たちはただSランクの冒険者がどんな人か見てみたくて……ごめんなさい」
全員ががっくりと肩を落とす。
「そうか。俺はタクマと言う。いいかお前たち、冒険者という存在をよく理解しておかないと駄目だ。興味を持って近づいただけで殺されてしまうこともあるんだ。注意しないと危ないぞ」
荒っぽい冒険者だと、攻撃をしてくる可能性もあるのだ。まだあどけない面構えの少年たちにそのリスクを分からせるため、タクマはしっかりと言って聞かせた。
ただ、充分反省はしているようなので、ヴァイスたちに威嚇はやめさせた。
「で? Sランクを見たかっただけじゃないだろう?」
彼らは口にしづらそうにしながらも、小さな声で言う。
「僕たちは冒険者になりたてなので、とても弱いのです。だから、強くなる方法を知りたくて……どうやったら強くなれますか?」
「……」
力を使いこなせていない俺に聞かれてもな……どう話してやれば良いんだ? そう思ったタクマは何を言ってやれば良いか分からず、考え込んでしまった。
少年たちは、タクマが黙ってしまったことで彼を怒らせてしまったと勘違いしたらしく、急にオロオロとしだす。そんな彼らを見て、ナビがタクマの近くに飛んできた。
(マスター、何か言ってやらないと子供たちが困ってますよ)
(とは言ってもな。どう答えてやれば良いものか……)
考えても答えは出ない。ひとまずタクマは、少年たちと話してみることにした。
「強くなりたいのは何でだ?」
「稼げるからです。僕らは孤児なので誰も頼れないし、勉強するお金もありません。この国で生きていくには冒険者になって強くならないと……」
「やっぱりこの国は、そんな殺伐とした感じなのか。だが、お前たちくらい大きくなれば、違う国に行くこともできるだろう? なぜそうしないんだ?」
少年たちの一人が悲しそうな顔を見せる。
「それは……僕たちだけならそれもできるけど、弟たちがいるから……」
彼らの置かれている状況は、そんな単純ではないらしい。
「なるほどな。稼ぎたい理由はそれか」
「はい……」
タクマは苦々しい気分になってしまった。
「だが、強くなりたいと言ってもいきなり強くはなれないだろう? 我流で強くなるには相当な苦労が必要だし。師匠になってくれそうな冒険者はいないのか?」
「いません……ギルドに登録するときに、簡単な体の使い方と、武器の扱いを習っただけです」
「そうか。もしかしてお前たち、本当は冒険者になりたくないんじゃないのか?」
タクマが核心を突くような質問をする。すると、全員渋々とうなずいた。
捕まえた時点で気がついてはいたのだが、彼らはどう頑張っても冒険者には向いていなかった。痩せていて筋肉はないし、装備も剣のみという無謀極まりない恰好だ。このままでは不幸な結末になってしまう可能性が高いだろう。
タクマは、彼らをどうにかできないだろうかと考えを巡らせながら、話を続けた。
「おそらくお前たちでは、町の外で活動するのでさえ危険だろうな」
少年たちはその危険性すらも分からないほどに追い込まれているようだった。タクマの厳しい言葉を受けて、彼らはただ呆然としていた。
タクマはヴァイスたちに少年たちを見ておくように頼むと、その場から少し離れたところに移動する。それからナビを呼び出して相談しようとするが、ナビはすでにタクマの考えを分かっていたらしい。
(マスター。もしかして子供たちをトーランへ送るつもりですか?)
(そうだな。それしかないかもしれん。領主に頼むだけ頼んでみるか……その前に、あの子たちに行く気があればだな)
さっそくタクマは少年たちのところへ戻り、尋ねてみる。
「さっきまでの話で、今のお前たちでは冒険者として生きていくのは無理なのは分かったな? で、一つ提案があるんだが……」
違う土地の孤児院で生活してみないかと言ってみると、彼らは返答に困ったような様子を見せた。どうやら弟たちと相談したいらしい。弟たちが住んでいるのはこの先の鍛冶の町フォージングとのことなので、すぐに行って相談してくるように伝えた。
その前に、タクマは彼らにフォーシングで一番の宿を尋ね、自分はその宿に泊まる予定だから相談が終わったら来るように伝えた。
少年たちを見送ったあと、遠話のカードを取り出し魔力を流す。
トーランの領主コラルがすぐに出た。
「おお、タクマ殿! 今日はどうしたのだ?」
「実は……」
タクマは、アムスの少年たちが置かれている状況について話した。コラルは少し考えて無言になったが、しばらくしてゆっくりと告げる。
「なるほどな……入国した早々にそんなことが。その子供たちは嫌々冒険者になったのだな? そうだ、孤児院ではなく、我が屋敷で使用人として雇うというのはどうだろうか?」
実はトーランの孤児院はすでに満杯に近いらしい。そのためコラルは、自分の屋敷でと申し出てくれたのだった。
「……よろしいので?」
「ああ、その代わりと言ってはなんだが、トーランに没落した貴族の屋敷が空いているんだ。そこを引き取ってもらうことを考えてみてはくれないだろうか?」
(うーん、トーランに屋敷か。まあ、拠点として持っておくのも手なのかな?)
タクマは、コラルの思ってもみなかった提案に驚きながら、次なる町フォージングへ向けて歩きだすのだった。
2 拠点の話
鍛冶の町フォージングに到着したタクマたちは、入り口で犯罪歴の確認をされて町に入った。
町の中を歩いていると、鍛冶の町らしくそこら中から金属を叩く音が聞こえる。
賑やかな通りを抜けて、先ほどの少年たちに教えてもらった町一番の宿に到着した。3日分の宿泊料15万Gを支払い、部屋へ案内される。ヴァイスたちの宿泊も拒否されることはなく、同じ部屋に泊まることができた。
それからヴァイスたちと一緒に夕食を済ませたタクマは、さっそくコラルのところへ行くことにした。
一度行った場所を訪れることのできる魔法「空間跳躍」を使ってトーランの教会の一室に跳んでいくと、物音で分かったのか、扉の外からパタパタと足音がした。
扉を開けて現れたのは、シスターのシエルである。
「タクマさん、いらっしゃい。今日は急にどうしたのですか?」
「領主様に用事があって来たんです」
「そうですか。相変わらず忙しそうですね」
シエルと別れ、教会を出て5分ほど歩いていく。やがて領主邸へ着くと、入り口で門番に強い口調で止められた。
「ここは領主様の邸宅だ。何の用だ?」
「私はタクマ・サトウです。領主様にタクマが来たと伝えていただけますでしょうか?」
門番が訝しげな顔をしたまま屋敷の中へ入っていく。しばらく待っていると、領主のコラルが直々にやってきてくれた。
「話には聞いていたが、本当にすぐ移動できるんだな」
「ええ。急に来てしまいましたが、大丈夫でしたか?」
「ああ、君なら問題ない」
さっそくコラルとタクマは応接室へ移動すると、孤児の話に入ることにした。
「急ですみません。ただ今後のことを考えると、早いほうが良さそうなので」
「生産国アムスはそんなに切迫した状況なのか?」
「まだ入ったばかりで分かりませんが、少なくとも孤児が生きていくには厳しいかもしれません。先ほど遠話で話した子供たちは、戦闘技術もないのに冒険者をやらざるをえない状況でした。他にも同じような子供がゴロゴロいると思われます。なので、比較的安全なこの町に連れてきたいのです。もちろんそのための費用は私が負担します」
「なるほど。噂では聞いていたが、アムスでは本当に教会が機能していないようだな。分かった。できる限りの手助けはしよう」
「ありがとうございます」
続いて、引き取ることを提案された屋敷についての話になる。
空いているというのは、100m×200mの敷地を持つ大きな屋敷で、庭まで付いているらしい。部屋数は十部屋以上で、さらに一部屋一部屋が相当な広さとのこと。ちなみに使用人はコラルが探してくれるそうなのだが、これだけ大きな屋敷となるとすぐに見つかるかどうか……
そんな話をしているところへ、コラルの家来の者が現れる。
「失礼いたします」
アークスと呼ばれる家令で、年齢は50後半くらい。すらりとしたスタイルの彼は髪型をいつもオールバックにしており、見た目からしてできる執事といった感じだ。
アークスは思いがけないことを言い放った。
「私がタクマ様のお屋敷の家令をしましょう」
「「はぁ??」」
タクマと一緒に驚いたコラルが、アークスに掴みかかる。
「いやいや、お前がタクマ殿のところに行ったら、こちらの家はどうするのだ!?」
「私の息子に任せようと思います。あやつにはみっちりと仕事を仕込みましたので良い機会です。実は前々から、老後はコラル様を救ったタクマ様のお手伝いができれば、と思っていたのです。先ほど、コラル様よりタクマ様との遠話の内容を教えていただいたときに、このことを決心いたしました。ちなみに、私の他にも何名かが後進に譲り、タクマ様にお仕えしたいと考えているそうです」
「そこまで考えていたのか……流石だな。先を読んで考えることができるお前のような者を手元に残せないのは残念だが、お前の息子も育っているならそれでも良かろう。分かった」
「コラル様、お世話になりました。そしてタクマ様、これからよろしくお願いします」
「本当に良いのですか? 来てくれれば助かりますが……」
「ええ、もちろんです」
アークスだけなく、タクマに仕えるのを希望する者は全員、覚悟を持って移籍してくれるそうだ。
さっそく三人で屋敷の内見に向かう。
事前に大きいとは言われていたものの、実際に目にするとタクマは驚いてしまった。貴族の屋敷だけあって壁にはしっかりとした装飾がされており、高級感を出していた。
あまりの衝撃に言葉を失うタクマを、コラルが中に入るように促す。
「中もすごいな……」
中の柱にもしっかりと装飾がされていた。高級そうではあるがシンプルな装飾なので、嫌な感じはしない。ただ、家具は設置されていなかった。家の内見を終えると、正式な売買契約を結ぶため商業ギルドに向かった。
金額はこの規模にしては破格の5000万G。ただしそれには条件があり、月に一度コラルに酒を納入してほしいとのことだった。
タクマはその条件を快く受け入れ、契約と支払いを済ませた。そしてアークスに管理費として1億Gを預けておく。これほどの金額を渡したのは、この先に何があるか分からないためだ。
家具や寝具の購入や配置などの細かいことは後日行うとして、今日のところは失礼させてもらうことにした。
コラルにお礼を言い、最初のお酒の納品は明日にでも行うという約束をして、タクマはフォージングの宿へと帰っていくのだった。
3 説明と移動
翌日。
タクマは、領主に渡す酒を用意することにした。
[チャージ金]
:38万3450G
[カート内]
・ザ・マックランレアカスク(700㎖)×12
:25万2000G
[合計]
:25万2000G
決済を行い、アイテムボックスに収納しておく。
その後、朝食を持ってきてもらいみんなでゆっくり食べていると、部屋の専属の従業員が呼びに来た。
「サトウ様。下に知り合いだと言う冒険者が来ております。どうなさいますか?」
おそらく昨日の少年たちだろう。弟たちとトーランに移る相談が済んだら、タクマの泊まっている宿へ来るように伝えておいたのだ。
「ああ、来たか。会いますので、宿の外で待つように言ってもらえるかな」
「分かりました」
タクマは外に出る準備をして、一階へ下りた。宿の外まで出ると昨日の少年たちが待っていた。少年の一人が口を開く。
「タクマさん、話し合ってきました」
「そうか。どうだった?」
「みんなここでひもじい思いをするくらいなら、移住したいそうです。僕たちもこれ以上危険な冒険者はやりたくないので、連れていってもらえませんか?」
「そうか。ここでは誰が聞いているか分からないから、ちょっと移動しよう」
そう言ってタクマは少年たちを引き連れて宿の食堂に入る。そして個室を用意してもらうと、少年たちに座るように促した。
みんなが落ち着いたところで、タクマが告げる。
「ところで弟たちはどうした? てっきり今日、みんなを連れてくるかと思ったんだが」
「少し具合が悪い子がいるので……」
「なるほどな。じゃあ、なおさら早く話を済ませてしまおう。これから君たちにはある場所に移動してもらう。ただ、昨日言った孤児院に連れていくのではなく、領主様の屋敷に住み込みで働いてもらうことになったんだ。働けない年齢の弟たちは、君たちが働いている間は孤児院にでも遊びに行かせれば問題ないだろう」
「りょ、領主様!? 何でそんな大事に?」
「ああ、ちょっと伝手があってな。領主様に話をしたら、君たちを引き取ってもいいと言ってくれたんだ。彼は平民とも普通に接する良い貴族だ。きっと悪いことにはならないだろう」
それからタクマが「頑張って協力して生きていきなさい」と言うと、少年たちは静かにうなずき涙した。
「ありがとう、ありがとうございます……」
「いいんだ。俺がやりたいからやってるだけだしな。領主様は一生懸命働いていればちゃんと見てくれる方だから、しっかりな」
「はい……はい……」
タクマは少年たちが泣きやみ、落ち着くのを待ったところで、具合が悪いという弟たちのところへ案内してもらった。
そこは町の用水路の中だった。
小さな子供たちがこんな不潔極まりない場所で生活していると知って、タクマは苦々しい気持ちになった。用水路の端には、八人の幼い子供たちが身を寄せ合って震えていた。
タクマは怯えさせないようにと、優しい口調で話しかける。
「はじめまして。おじさんはタクマ・サトウって言って、冒険者をしているんだ。今日は、君たちとお兄ちゃんたちを安全な場所に連れていくために来たんだよ。よろしくね」
「安全? ここより?」
「ああ。そこに引っ越せば、毎日お腹いっぱいご飯が食べられて、暖かくして寝られる。だから、一緒に行こう」
「うん。でもこの子が……」
そう言う子供が示す先に、タクマは目を向けた。
そこには、体の震えが止まらず、高熱が出ているらしき子供がいた。鑑定してみると、酷い風邪を患っている。
すぐにタクマがヒールで完全に癒してやると、その子は安らかな寝顔になった。
「これで大丈夫だ。すまないが、これで自分たちの分も含めて、服と下着を五枚ずつ買ってきてくれ。その間にこの子たちを外に連れていくから」
そう言ってタクマは、少年たちに15万Gを渡す。それから寝ている子供をおんぶして、他の子たちも連れて用水路の外へ出た。
お金を渡した少年たちが戻ってくるのを待っている間に、子供たちにクリアとヒールをかけておく。子供たちは自分の体から臭いと汚れが消えたのを感じて、目をパチパチとさせていた。
しばらくして大荷物を持った少年たちが戻ってきた。タクマが伝えた通りに、全員分の服と下着を購入してきたようだ。眠っていた子も目を覚ましたので、全員新しい服に着替えさせる。
「うん、みんな似合ってる。見違えたな」
それからタクマは子供たちに、移動方法については教えられないが一瞬で到着すると説明しておいた。そして、いろんな厄介事が付いて回る可能性があるので、目隠しをすることを了承してもらった。
みんなの着替えが終わり準備ができると、宿にヴァイスたちを迎えに行ってから、町の外へ出てきた。
周囲に気配がないことを確認し、全員に食事を振る舞う。どうやら久々の温かい食事だったらしく、みんな泣きながらたくさん食べていた。
「よし、みんなお腹いっぱいになったかな?」
タクマが聞くと、全員笑顔でうなずいた。手早く片付けをし、このまま移動することを伝える。
「そろそろ準備はいいかな? これから移動するから、おじさんを中心に円になって並んでくれ……そうそう、そんな感じ。そうしたら、自分の前の人の目を塞いでな。うん、そう。じゃあ、そのままで」
時間をかけると緊張感が薄れてしまうと思ったタクマは、すぐに跳んでしまうのだった。
応援ありがとうございます!
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