「部屋 レイアウト」の検索結果

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私はいま恋をしている。 それも、このあいだ生まれたばかりの恋だ。 お互いを好きなのかどうかを確認する作業もなく、デートをするわけでもない。ただ週一度のこの面会だけが、私たちの関係をつなぎ止めていた。 哲也がここに通いだしたのは大学四年の春だった。 「はい、これ」 いつものように面会室で向かい合って座ったとたん、哲也はテーブルの上に分厚い茶封筒を置いた。 「なに?」 「来年のカレンダーのレイアウト。頼まれてたでしょ? 原案ができたから渡しておくね」 そう言って彼は中身を見せた。 紙束の中には六畳間とキッチンとユニットバスの写真があった。 「これ、この部屋?」 「そう。今年の写真も使いまわしなんだ」 来年は私の二十歳の誕生日だ。このあいだの誕生日には、彼がフォトフレームに写真を入れ替えてくれた。 そしてカレンダーにも写真を貼ろうと提案してくれたのだ。 「ありがとう」 私はそれを受け取った。 哲也は茶封筒をまたテーブルの上に置くと、私の方を見てにこっと笑った。 「あとさ、『星々のため息』読んだよ」 「え?」 私はどきりとした。 あれはまだ書きかけの短編小説だった。
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文字数 8,379 最終更新日 2023.10.19 登録日 2023.10.19
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