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四年前の開戦当初は「栄光」「勝利」「統一」と高揚に沸いた国民も、四年の月日により数百万の戦死者、徴兵拡大、経済の崩壊、飢餓に疲弊し、不満は爆発寸前となっていた。
戦争の継続を望む軍部と政府は、元より対立していた皇帝に民の怒りの矛先を向けさせ、やがて皇帝は退位――そして暗殺される。
その粛清の最中、娘である姫・リュシアも命を狙われるが、忠臣の助けにより密かに城を脱出。軍部で唯一属州出身の高官・バックナー中将を頼って帝国北方へ向かう。
だが途中で、中将の戦死の報を聞かされ、彼女の最後の希望は潰える。
行く当てもなく彷徨った果てに、リュシアは朽ちた廃屋へと辿り着く――そこで出会ったのは、かつての帝国軍の脱走兵だった。
彼もまた、プロパガンダに踊らされて志願し、四年間戦い抜いた末に全てを失い、脱走を選んだ男。
亡国の姫と脱走兵。
帝国に残された「希望」の始まりだった。
文字数 16,439
最終更新日 2025.06.23
登録日 2025.05.20
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