道を極める

「直感」で世界を変える伝説のプログラマー

2017.11.21 公式 道を極める 第32回 中島聡さん

「Windows95」をはじめ、あらゆるソフトウェア開発に携わっている世界的プログラマーの中島聡氏。学生時代に開発した世界初のCADソフトから、現在まで続くプログラマー人生。その類希なる業績をして“レジェンド”と評されるも、みずからの直感が生み出す新たな取り組みによって、今も最前線で挑戦を重ね続けています。中島氏のゼロをイチにする行動の源泉とは……。世界で活躍するに至るまでの「自分の気持ちに誠実な生き方」を辿ってきました。

(インタビュー・文/沖中幸太郎

※本連載収録の書籍『“好き”を仕事に変える』発売中

ワクワク感が最大の原動力
「三度の飯よりプログラム」な日々

中島聡(なかじま・さとし)

 

プログラマー
Xevo株式会社チーフアーキテクト兼会長

 

1960年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。NTT通信研究所に入社後、Microsoft日本法人、Microsoft本社を経て、ソフトウェアベンチャ―UIEvolution Inc(現Xevo株式会社)を、米国シアトルにて起業。直感に基づく行動、仕事観と時間術を記した『なぜあなたの仕事は終わらないのか』(文響社)は、10万部のヒットとなり、ブログ・メルマガ同様、多くの若者へこれからの働き方を提唱した。

ブログ『Life is beautiful』

――本日は早稲田の大隈講堂にお邪魔しています。

中島聡氏(以下、中島氏):普段はアメリカのシアトルに住んでいますが、年に数回は日本に来ています。今回の日本出張の目的のひとつが、母校でもある早稲田大学でのシンポジウムへの出席、講演でした。ここで「エンジニアのための経営学」といった話をするために招かれたんです。

ぼくの仕事の主軸はソフトウェア開発です。米国Microsoft社でWindowsの開発に携わったあと、2000年にUIEvolutionというソフトウェアの開発会社を起業しました。今はその後継となるXevo.Incという会社で、チーフアーキテクト兼会長という職に就いています。職務上、この会社で現場業務に携わることは少なくなりましたが、まったく別のところで、今もプログラミング、ソフトウェア開発を行っています。「少しずつ前進する未来」をこの目で見たくて、イチプログラマーとしてあれこれやっているんです。

「三度の飯より……」という言葉がありますが、今でも、一日中PCにかじりついてプログラムを書くことが大好きです。もちろん、「苦」でもありません。開発過程で、プログラムのバグ(不具合)を見つけては直していくという作業は大変ですが、それでも「嫌々」ではありません。それよりも、「プログラミングによって便利になった、進んだ未来を見てみたい」と思う気持ちの方が、自分の中で勝っているんです。毎日楽しいですよ。

――未来への「ワクワク感」が中島さんを動かしている。

中島氏:昔から直感」で動いているんですね。コンピュータ好きの少年がそのまま大人になったような感じで、今も根の部分はそこから何も変わっていないんじゃないでしょうか。自分で言うのも何ですが「永遠のパソコン少年」です(笑)。ずっとプログラムを組みながら、未来を想像することに、大きな幸せを感じています。こうした生き方を可能にする、コンピュータ、プログラミングに出会えたことは、とても幸運なことだと思っています。

幼いころに心奪われたものが、真の道となる

中島氏:よく言うと好き嫌いのハッキリした、要は「嫌なことは嫌」というワガママな子どもだったそうです。小学生の頃、漢字の書き取りが本当に嫌で、ある時、見本となる字の裏に光を当てれば、上からきれいな字を容易に「量産」できることを発見して、それで切り抜けるようとするなど「嫌なものへのムダな努力」を、なるべく避けようと工夫をしていました。

その代わり、好きなことは、周りから見て異常なくらい没頭していたようです。完全なる理系で、講談社のブルーバックスが愛読書だったのですが、数学の確率の話を読めば、本当にそうなのか実証したくなって、1000回くらい、部屋でひたすらサイコロを振っていたこともあります。また、「化学実験」にハマれば、小遣いをすべて秋葉原の電気街で、実験セットを買うのに費やしていました。アルコールランプからガスバーナーまで揃えて、四畳半の自分の部屋はさながら実験室と化していました。劇薬は小学生では買えないので、その元になる成分を調べて、手に入るもので自分で生成していました。とにかく興味があることには、際限なく行動していたようです。

――「没頭グセ」があった。

中島氏:その没頭グセにぴったりとハマったのが、17歳の時に出会ったプログラミングだったんです。母方の親戚に、古い自転車が2台あれば、それを合わせて1台新しく作っちゃうような「機械大好きおじさん」がいたんです。ぼくはそのおじさんのことが好きで普段から仲良くしていました。ある日、そのおじさんが「NECが、TK80というマイコンを発売したぞ!」と、興奮気味に、記事までスクラップして、ぼくに教えてくれたんです。

はじめてその記事を目にした時、理由はよくわかりませんが、「これは絶対欲しい、手に入れなければ!」と思ったんです。当時、8万円くらいして、お年玉をかき集めても買えないような高価な代物でした。それでも「かならずこれで稼いで元を取るから」と親を説得して、なんとか手に入れることができました。

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アルファポリスビジネス編集部
アルファポリスビジネス編集部

アルファポリスビジネス編集部は厳選した人物にインタビュー取材を行うもので、日本や世界に大きく影響を与える「道」を追求する人物をクローズアップし、その人物の現在だけでなく、過去も未来の展望もインタビュー形式で解き明かしていく主旨である。編集部独自の人選で行うインタビュー企画は、多くの人が知っている人物から、あまり知られることはなくとも1つの「道」で活躍する人物だけをピックアップし、その人物の本当の素晴らしさや面白さを紐解いていく。

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