話が面白い人はそれだけで魅力的です。職場でも学校でも、テレビの世界でも動画の世界でも、頭一つ抜けて人気者になるのは、やはり話が面白い人です。また、話が面白い人はビジネスにおいても高いパフォーマンスを発揮することが多く、会社で重宝され、出世するのも早いと言われています。 さらに、AIの進化にともない、あらゆる人間の活動がAIに代替されるようになりましたが、AIは面白く話すのがそれほど得意ではないようです。面白く話す力は、AIに代替されづらい、人間ならではの能力の一つだとされているのです。
では、どうしたら話が面白い人になれるのでしょうか。
この連載では、元QuizKnockゲームチャンネルプロデューサーで、登録者数32万人の大人気YouTuberのだいふくさんが、動画配信をするなかで培ってきた、AIには真似できない「話が面白い人になるための技術」を解説していきます。
話が面白い人は「楽しそう」に話します。
いきなり小学生のような内容から始まってすみません。
ただし、これが意外と大事です。
皆さんが気になっている新商品の発表会を聴講するとして、次の2種類のプレゼンテーターがいた場合どちらの話を聞いてみたいと思うでしょうか?
① 自然とその商品が好きなことが伝わるくらい楽しそうに話す人
② 無表情で淡々と商品紹介をする人
極端な例なのでほとんどの人が①を選ぶと思います。ただ、これはプレゼンが上手い人に多い特徴でもあります。
私が個人的に好きなゲームが『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズなのですが、最新作スマブラSPの新キャラ発表のニンテンドーダイレクト(任天堂がインターネット上で配信しているゲーム情報番組)ではいつもディレクターの桜井政博氏による解説が行われます。番組内で桜井氏は新キャラについて解説してくださり、その様子はしばしばSNSでバズを呼びます。
SNSのバズではどうしても、彼のウィットに富んだ語彙やかなり上手いプレーに注目が集まるのですが、見ていただきたいのが番組内での桜井氏の表情です。
淡々と話しているようで、じつはしばしば口角が上がっており、「楽しい」という感情が伝わってくると思います。
2025年11月に公開された、新作ゲーム『カービィのエアライダー』で桜井氏は、とても楽しそうな表情でカービィを操作していました。番組を実際に見た方はわかると思うのですが、ついつい最後まで見てしまいますよね。
もちろん、話す内容自体が面白く、ゲーム自体が面白そうという要素も大きいのですが、プレゼンテーター「本人が楽しんでいる」ということの効果はじつはとても重要なのです。
そしてこの「本人が楽しんでいる」という技術は、ゲーム実況の基本でもあります。
私がQuizKnockのゲーム実況チャンネル『GameKnack』のプロデューサーを務めていた際、しばしば撮影現場でのディレクションも行っておりましたが、撮影直前に絶対に出演者に伝えていたことがあります。それが
「とにかくゲームを楽しんでください!」
という一言です。この一言だけはどれだけ慣れた出演者の方にも必ず伝えるようにしていました。
もし有名ゲーム実況者の配信や動画を見たことがあるなら、思い出してみてください。めちゃくちゃ笑っていませんか? 有名なゲーム実況者のほとんどはゲーム自体を心から楽しんでいます。
もちろん、芸風的にゲームにキレている人もいますが、私はそれも「ゲームを楽しむこと(≒没入している)」一環だと考えております。
私は、勉強のために同接があまり多くない配信なども覗いたりするのですが、その中の多くの実況者がボソボソと話していたり、まったく話していないなど、ゲームを楽しめていなさそうな雰囲気が出てしまっています。
逆に、楽しそうにゲームをプレーできている実況者はある程度の同接は担保できているように感じます(もちろんちゃんと定期的に配信できているかなどの問題もありますが)。
QuizKnockの出演者は大変優秀で私が何も言わなくとも面白い動画にはなる確信はあるのですが、ただ釈迦に説法とわかりつつも私は「楽しんでください」の一言は忘れないようにしていました。
そしてその論を裏づけるように、GameKnackのマリオパーティの動画はまったく凝った仕掛けなどはしていないのですが、GameKnackでもっとも再生数の多い動画(2026年5月時点で324万再生)になっています。
もちろん出演者の知力やトーク力に支えられたものですが、彼らが全力でゲームを楽しんでいることがよく伝わる動画であることが大きな要因であると考えています。
面白くなさそうと思われてしまうよくない例として、ゲームを楽しんでいないゲーム実況者の例を出しましたが、イメージしやすいように別のシチュエーションの例もあげてみます。
私が大学院生だったとき、理系の学会でよく見られたのが、発表者がボソボソと話すだけの退屈なプレゼンでした。理系の学会に参加したことがある人も少ないと思うので、イメージできない方は「大学の授業で、やる気がないのにグループワークのプレゼン担当になってしまった大学生」や「国語の授業で名簿番号と日付が一致してその日教科書を読む係になってしまったダルそうな中学生」を想像してみてください。
淡々と抑揚もなく原稿を読むだけなので、どれだけ良い研究成果であっても内容が上手く頭に入ってきません。実際に参加者の多くはうとうとしながら退屈そうにしていました。
もちろん、論文は内容こそが大切であり、その道の専門家である教授は論文を見れば内容は評価できます。なので、内容さえよければ問題ないはずなのですが、発表の仕方が評価に入るというケースもあります。
実際私は、修士論文の研究内容自体は凡庸なものでしたが、発表だけはうまく、何より楽しそうに発表していたせいで、その評価は非常に高いものでした。
結果として修士論文の成果発表会で最優秀賞に選ばれ、全体でスピーチもしました。