過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

日々の仕事を充実させる三大要素とは?

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誰しも望む未来があります。しかし、その未来を実現できる人は、ひとにぎりだと考えていませんか? そんなことはありません。未来の自分を変えるヒントは、あなた自身の中にあるのです。過去に「目をつけ」「掘り下げて」「引き出す」。このプロセスの繰り返しが、あなたの未来を大きく変えるのです。ここでは、自分自身を「振り返る」ことで見えてくる、あなたが望む未来の導き出し方を紹介していきます。そう、あなたの過去は宝の山なのです。 

「やる気の素」を過去から引き出す

どんな風に生きたいか。どんな風に仕事をしていきたいか。
そんな問いを投げかけると、即座に答えの出ない人が多いようです。それもそのはず、日々目の前の仕事を片づけるのに精一杯で、そんな問題を考える機会もないのです。日頃から考えていることでなければ、すぐに答えることなどできません。
自分の人生です。本当はどうありたいのか。一度しっかり考えてみても悪くありません。特に、どんな「気分」を味わいたいのかということを。

たとえば、
「ゆったりした気分で過ごしていたい」
と感じていたとしましょう。しかし、日々の仕事に追われ、音(ね)もあげずに頑張っていると疲弊してきます。
「いつか、ゆったりと過ごせるようになりたい」
漠然とそう考えていても、「ゆったり過ごせるように」はなりません。自分が心地よいと感じる生き方、暮らし方を積極的に取り入れたいものです。
そのためには、まず、自分が心地よいのはどんな状態なのか、どんな働き方だったらいきいきできるのか、という自分の感覚を探る必要があります。

そして、そのためには過去の記憶を思い出す「振り返り」が有効です。
楽しかったときはどんな状態だったのか。何をしているときに没頭していたのか。そのときに、何があったから、またはどうだったから没頭できたのか。そんなことをじっくりと味わって思い出してみると、自分にとってどんな状態が好きなのかがわかります。

もちろん、一つだけということはありません。条件や場合によって、自分にとって快適な状態は異なります。仕事のときと遊びのとき。友人と過ごすときと家族と過ごすとき。お風呂に入ってくつろいでいるときと、重大な決断をしなければならないときなど。さまざまな場面の中で、よかったときと悪かったときのことを思い出して、比較してみましょう。
その探求の過程で、自分に必要な「気分」の条件という素材が手に入ります。

過去には「やる気の素」のヒントが詰まっている

私の大好きな言葉に「仕事が人をつくる」というものがあります。
仕事は毎日取り組むもので、仕事の要求に合わせるようにして、私たちは自分をつくりかえているのです。
仕事の要求にどのように合わせるのか。アプローチの方法がいくつかあります。仕事に取り組む3つのアプローチを紹介します。

――上昇達成系の動機を満たすアプローチ――

「上昇達成系の動機を満たすアプローチ」は、自分の成長を感じたり、上昇志向の願望が満たされたり、何かの目標を達成したりしたときに悦びを感じる人のアプローチです。その悦びを得られるように仕事をしていきます。

たとえば営業職の方であれば、常にあらゆる手段を使って売上数字や受注金額を追いかけています。狙った獲物を逃がさない、動物的な本能を全開にして取り組む方もいるでしょう。苦労した甲斐があって大口の受注がとれたときには、たまらなく嬉しいはずです。

――人間関係系の動機を満たすアプローチ――

「人間関係系の動機を満たすアプローチ」は、人との繋がりを実感したときや、感謝されたとき、または人に対する感謝の気持ちが湧いてきたとき、仲間との一体感が得られたときや、愛情に包まれる、または愛情を注いだときに悦びを感じる人のアプローチです。
たとえば営業職の方の中でも、競争しようという意欲よりも、お客さまから感謝されたり、みんなで協力しながら大口案件に取り組む場面で、みんなと一体になれたときに悦びを感じる方もいます。
数字、数字と言っていないにもかかわらず、営業成績のよい営業職の方は、この「人間関係系の動機を満たすアプローチ」をつかって成績をあげている可能性があります。

――論理・手続き系の動機を満たすアプローチ――

「論理・手続き系の動機を満たすアプローチ」は、論理的な整合性がとれていないのは気持ちが悪くて許せず、手続きや順番などが整然としていないとそれを正さずには済まないタイプの人のアプローチです。
プログラムの正確性やデザインへのこだわり、手続きの踏み方についての理想があり、そこを重視する方のアプローチです。
たとえば、経理の仕事に携わっている人は、数字一つの誤差も見逃さず、合計金額がピタッと合ったときに仕事の満足感を得ます。もしも数字が合わないということがあれば、どこに原因があるかを考察し調査し、結果として原因が見つかり、修正をかけ、数字がピタリと合った日には、深い満足感を得ます。

これら三種類のアプローチは、誰の行動にも含まれています。どれか一つのアプローチが突出して強いという傾向があり、残り二つのアプローチは弱めですが、それら二つの強度もそれぞれです。
どんな仕事についたとしても、人それぞれ最適なアプローチは異なります。自分の採用したアプローチを続けることで、自分の仕事の仕方、好み、考え方が強化され、大きく育っていきます。使えば使うほど筋肉が育つようなものです。
より正確に言えば、その仕事に対するアプローチの繰り返しが、その人をつくるのですが、簡単に表現すると、「仕事が人をつくる」ということになるのです。

この三種類の動機づけの比率は、固定的なものではありません。職務の変更や部署の移動などにより仕事内容が変わると、三種類の動機づけの比率も変わります。私は、ある心理テストによって自分の性格の傾向を調べたことがあります。それも同じテストを、時期を分けて二度受けました。

取引契約書の法務チェックの仕事をメインで行っていたときには、「論理・手続き系の動機」が強いという結果が出ました。常に契約書の文言とにらめっこをして、重箱の隅をつつくような指摘事項を探しあげ、取引先と交渉していたのです。
そのため、論理的であること、手順や手続きの厳格さなどに重きを置くような性格傾向が出ていたようです。

その後数年して、労働組合の役員となりました。職場集会を開いて意見を聞き、それをとりまとめることに日々取り組んでいたのです。そのときに行った同じ心理テストでは、「人間関係系の動機」が強いという結果が出ました。

日々の仕事の仕方は、私たちの価値観や性格の傾向をつくりあげていきます。自分という存在は昔から今まで一切変わらなかったというものではありません。私たちは、むしろ常に新しいのです。最新の自分を振り返り、過去の自分とも比較して、真に自分らしい人生を生きるために、現代社会では「振り返り」がますます重要性を帯びています。


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プロフィール

藤由達藏
藤由達藏

1991年早稲田大学卒業後、文具・オフィス家具メーカーPLUSに入社。営業職、本部企画職、全プラス労働組合中央執行委員長等を経て、2013年9月に独立。コーチングを核に、各種心理技法や武術、ヘミシンク、労働組合、文芸・美術・音楽創作等の経験を統合し、「気分と視座の転換」を重視した夢実現応援対話技法を確立。2016年9月、株式会社Gonmatusを設立。夢実現応援家®を養成し、全国のビジネスパーソンの夢実現を応援している。

著書

過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

過去の自分を振り返る人だけが成功する理由

藤由達藏 /
「過去の自分は宝の山である」をキーワードに、自分自身を振り返ることで、未来...
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