真中流マネジメント

真中満×野球(5)――1軍レギュラー奪取に必要だった3要素

2016.12.09 公式 真中流マネジメント 第18回

1軍で待っていたのは“緊張の連続”

不安を抱きながら打席に立つ日々
「こんなすさまじい緊張感に、いつまで耐えられるのだろう?」

前回の第17回では、プロ4~5年目に直目した危機とその克服に関してお伝えしました。今回はその後の1軍定着と、世代交代を迎えるまでの時期についてお話ししたいと思います。

写真はイメージです(Getty Images)

プロ5年目のはじめにヘルニアでキャンプを一度離脱し、すぐ手術に踏み切って回復して戦線復帰したことは前回もお伝えしました。その後、幸いにも徐々に1軍の試合に出ることができ、やがて定着するようになります。ただ、試合に起用されるようになった頃は、緊張の連続でしたね。「こんなすさまじい緊張感に、いつまで耐えられるんだろう?」、そんな不安を抱きながら打席に立つ日々でした。

それでも試合数をこなすうちに、だんだんと緊張せずに済むようにはなっていきました。でも、それは1軍の選手として最低ラインをクリアしたに過ぎません。まだまだ“レギュラー”は遠いものでしたね。

当時、私のポジションはセンターだったのですが、このポジションには飯田さんがレギュラーとしてすでに収まっていました。さらに、私は左バッターということもあり、相手チームのピッチャーが左腕だと、相性の点から起用されないことも少なくありませんでした。たまたま数試合連続で起用されても、3試合くらい安打がないとまた出られない日々が続く。試合での緊張には慣れてきたものの、ポジションを安定して獲得できないという別の緊張は常にありましたね。

私は長い年月をかけて2軍から1軍に上がってきたタイプであって、ルーキーの頃から1軍でバリバリやっていたわけではありません。そのため、「いかにして1軍で生き残るか」ということに対して非常にシビアなんですね。だから私は、1軍に移った当初から、ものすごく真剣に「どんな選手が1軍でサバイバルできるのか?」という観点からチームを眺めていました。

そして行き着いた結論は、まず「守備」です。1軍で定着するには「守備がいい」ことが大前提なんです。守備に関しては、基本的に100パーセント、つまりミスがないことが求められます。当然ですね。1度の失策がチームを負けに導くことは、野球の試合では常に起こり得ますから。守備については、疑いなく「減点方式」というわけです。ミスはするな、ということですね。

それから「足」です。足が速い選手は、たとえば凡打でも出塁の可能性があるし、なんとか塁に出れば盗塁につなげるチャンスもある。そのため、監督の立場から考えれば、「守備ができて、足が速い」という条件を満たす選手は、それだけで1軍に置いておく価値があるんですね。

もちろん「バッティング」も大事ではあるものの、求められる成功率はだいたい3割というところです。乱暴に言ってしまえば、7割は失敗しても構わない、3割打ってくれれば御の字ということ。打率3割というのは決して簡単なものではないのですが、完璧に近いものを求められる守備などと比べると、達成難易度は高くないように見えます。

しかし、1年を通じて試合に出続ける――つまり「1軍レギュラー」としての地位を獲得するには、このバッティングが極めて重要になります。いくら守りが巧くても、足が速くても、野球は塁に出て点を取らなければ試合には勝てませんから、バッティングでのチーム貢献は不可欠なんですね。「2軍落ちせずに1軍に留まること」と、「レギュラーの座を獲得すること」の間には、なお大きな隔たりがあるということです。

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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