人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

若手にも会社にも信頼される中高年社員は、○○を持っている!

いつでも、誰でも、どこでも使える

汎用性とは、いつでも、どこでも、誰でも使えるもの。自分だけができることや、自分の会社だけで通用するものではなく、他社でも、世の中でも使えるもの。

たとえば、営業のスキルです。営業は、お客様の話を聞くことから始まります。世間話から始め、お客様と共通の話題を見つけ、「この人の話を聞きたい」と思っていただく。いわゆる「ラポール」と呼ばれる最初のアプローチから始まり、次に「ヒアリング」を行う。お客様の困りごとを確認し、ニーズを探っていく。

どのような聞き方をすれば、お客様は話してくれるのか。話すのが好きじゃないお客様にはどうしたらいいのか。こうしたテクニックは、どんな会社でも、どんな商材であっても変わりません。オンラインでもリアルでも一緒です。

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ヒアリングをしたら、提案書にまとめ、プレゼンをする。わかりやすく、簡潔で、かつ相手の心を引く提案を行う。この「プレゼンテーション」のスキルも、汎用的かつ普遍的です。会社も職種も関係なく、いつでも、どこでも、誰でも使えます。

最後に「クロージング」を行って、契約をいただく。このような営業のアプローチを「抜け漏れ」のない視点でできれば、たいていの会社では通用します。

このように重要なポイントを体系化してマニュアルをつくれば、誰でも参考にでき、一定の成果があげられるようになります。

若い世代にいちばん喜ばれることは何か?

自分の仕事で「普遍性・汎用性・網羅性」があるのは、どのようなスキルや経験なのか。こうした視点で自分の仕事を振り返ってみてください。体系化できれば、世代間ギャップを超える中高年ならではの技として自分自身の強みになります。

長年の経験によって体系化されたスキルや経験は、信頼性や確実性があります。そのテクニックに「普遍性・汎用性・網羅性」があれば再現性も高く、誰でも応用することができます。

ただ、ひとつ注意しておきたいのは、その伝え方です。「それはこうやってやるんだよ!」「なんでこうやらないんだよ!」などと説教が始まったら、誰も聞いてくれなくなります。偉そうな態度や説教は、50代がやりがちな超NGポイントです。

若い世代から「これってどうやったらいいんですかね」と聞かれたときに、「それはね、こうやったらうまくいくと思うよ」と答えられる。

50代社員がいちばん喜ばれるのは、このような態度です。若い世代の相談には乗っても、説教はしない。命令でなく、示唆を与えるにとどめる。こうした姿勢であれば、世代間ギャップはあっても若い世代から信頼を得ていくことができるはずです。

自身のスキルや経験を体系化することは、人材育成の役に立つだけではありません。いつでも、誰でも、どこでも使えるスキルがあれば、もし会社を辞めることになっても、転職や独立が可能になります。定年後の武器にもなります。

世の中で活躍している人たちのことを考えてみてください。どの人も「普遍性・汎用性・網羅性」があるスキルや知識を持っているからこそ、それをビジネスにできたり、講演をしたり、著作を発表したりしているのです。

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自身のスキルを体系化することは、社内外を問わず、あらゆる世代に求められる価値を創出することになります。

これまで20年、30年も働いてきたのです。こうしたスキルや経験は必ずあるはずです。自分が長年やってきたことで、いつでも、誰でも、どこでもできることは何か。普遍的・汎用性・網羅性があるスキルや経験は何か。ぜひ一度考えてみましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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