人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

知識・技術を持つ「ベテラン」中高年社員も、リストラされる理由

ベテランであっても技術・技能のブラッシュアップが必要

ベテランだからといって、これまでと同じように仕事を続けていたら、若手に追い抜かれるかもしれません。技術・技能や知識も古くなるかもしれません。

ベテランも常に技術や技能をブラッシュアップして、時代に合わせていくことが必要です。少なくとも若手より多くのものがつくれるとか、より良いものがつくれるとか、他者より優れた面を持っておかないとリストラの対象になります。

情の厚い企業でしたら会社に多大な貢献してきたベテランに対してそこまで厳しいことはしないかもしれませんが、「多くの中高年を今後もずっと抱えきれていけるのか?」という別の問題があります。なぜなら中高年は給与が高いからです。

黒字リストラをしている企業も、別にリストラをしたくてしているわけではありません。高い給与に見合ったパフォーマンスを発揮しない中高年を抱えていくことが難しくなってしまったから、早期退職・希望退職という制度を導入しているのです。

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こうした状況も踏まえて考えていくと、たとえ優秀なベテランであっても、今後のキャリアパスについて改めて考えてみる必要があるでしょう。

プロ野球の選手も、現役を続けるのか、コーチや監督になるのか、あるいは引退して解説者になるのか、ラーメン店を開くのか、決断を迫られる時期がやってきます。これはビジネスパーソンであっても同じなのです。

プレーヤーか、監督やコーチか、解説者か、ラーメン店か

自分はプレーヤーとして仕事を続けていきたくても、老眼で近くが見えず作業効率が落ちたら、近くが見える人に仕事を取られます。ITを使いこなすのが遅くて作業に時間がかかるようなら、その仕事はもっと早くできる若手に任されます。

プロ野球のスーパースターであっても、ベテランになって成績が落ちたら、代打を出されたり、レギュラーから外されたりするのです。引退勧告される場合だってあります。一般企業であっても、それは変わらないのです。

新しいスキルを身につけ、新しいものをつくり、自分をブラッシュアップしながら、プレーヤーとして現役を続けるのか。

自分のスキルや知識を体系化し、下の者たちに教え、自分よりも仕事ができる人材をつくって引退するのか。

スキルは若手にかなわなくても、彼ら・彼女らの気持ちがわかるのなら、マネジメントに特化し、監督やコーチになるなど、スキルセットをチェンジするのか。

プロ野球選手が引退後は解説者になるように、自分の技術や技能、知識を活かして、広く世の中の役に立てるよう、コンサルや顧問などの副業を始めるのか。

あるいは、それを本業にしたり、会社を辞めてラーメン店などを開くなど、起業や独立、転職をして、まったく新しい道を歩むのか。

自分は今後、ギアチェンジをどこに持っていくのか。
これは私たち50代にとって極めて重要な課題です。

ベテランだからといって、リストラされないとは限りません。
自分は今後どこで勝負するのか。改めて考えてみてください

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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