小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

低迷する時期、成果が上がらないとき、
どのようにモチベーションを保つのか?

チームが下位に沈むときの、
モチベーションの保ち方とは?

――8月も終盤を迎えたものの、なかなかチームに勢いは出ず、最下位が続いています。こうした辛い時期にモチベーションを保つにはどうすればいいのでしょうか?

小川 プロ野球の世界というのは、ファンあっての興行なのは事実です。借金が20前後もありながら、それでも神宮球場に多くのファンの方々が足を運んでくれるという現状を考えると、当然、「試合に勝って、ファンの人に喜んでもらいたい」というのがモチベーションになることがベストです。お客さんに喜んでもらえる試合をするというのは、やっぱり「勝つこと」なんです。だからこそ、選手たちは「お客さんのチケット代で、自分たちの給料をいただいているんだ」ということは、改めて考えなければいけないと思っています。

――一般論としては、優勝争いをしているときは「勝利のために」という思いがモチベーションとなり、下位チームの場合は「自分の成績のために」という思いがモチベーションになることもあると言われています。

小川 その考えも当然あると思います。「自分の成績を残す」、「チームが勝つ」、「お客さんが喜んでくれる」という流れが理想なのは確かですから。でも、状況によって「自己犠牲」が必要なときもあるわけです。いろいろなモチベーションがあって当然だし、それは選手それぞれの置かれている立場や考え方があるので、それでいいのだと思います。とはいえ、試合に勝ったときの選手たちの喜ぶ表情を見ていると、「やっぱり、選手たちもチームが勝つことが大きなモチベーションになっているんだな」と感じます。

――小川監督自身のモチベーションはどのように保たれていますか?

小川 もちろん、開幕当初は「優勝する」ということが大きなモチベーションでした。でも、「16連敗」という現実があったり、交流戦でも、パ・リーグを相手にひとつも勝ち越せなかったという現実があったりする中で、僕のモチベーションは「何とかクライマックスシリーズに」という思いに変わり、あるいは「一つでも上の順位を」とか、「来季につながる起用を」など、状況に応じて変化しているのは事実です。とはいえ、先ほども申し上げた通り、やはりファンの方々に喜んでもらえるというのが一番大切ですし、勝てば嬉しいのは選手も僕も変わりませんから、とにもかくにも「目の前の試合に全力を尽くして、勝利を目指す」という思いですね。

――チームが低迷しているときに、その中でもモチベーションを保ち続けたり、新たな戦力を育てたり、もちろん、勝利を最優先に考えたり、いろいろとやるべきことが多いですね。

小川 今年は神宮でなかなか勝利できず、ファンの方たちに悔しい思いをさせていることを申し訳なく思っています。今シーズンも残り試合は少なくなりましたが、それでも「最後まであきらめない」という思いを持ち、「一つでも上の順位を目指す」というスタンスで残り試合を戦っていこうと思っています。


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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