すぐに使える営業の心理学

ダメな営業マンほど「言った・言わない」の問題を起こす――「ロジカルコミュニケーション」

2018.09.06 公式 すぐに使える営業の心理学 第11回
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話の聞き間違えをしないテクニック

まず営業マンの心得として、日本人特有のあいまいな表現に流されて商談を進めてはいけません。以下に紹介する工夫を取り入れることで、常に情報が明確な状態でのやり取りに変える必要があります。

1:言葉を繰り返して確認する
お客さまの多くは、社内用語や業界用語を多用するため、慣れない営業マンは理解できないことがあります。商談で、お客さまが複数人参加されると、お客さま同士で、あいまいな表現でやり取りをしていることがあります。お客さまにとっては当たり前の表現であっても、外部の営業マンには、当たり前の表現ではありません。必ず気になった言葉は繰り返して、確認して下さい。

例えば、お客さま同士の会話で以下のような表現をしていたとします。

ダメな例:
お客さま:たしか、A機種は生産予定数が多いはずだよなー。そうそう。

営業マン:なるほど、そうなんですね(明確な生産数がわかっていない)。

よい例:
お客さま:たしか、A機種は生産予定数が多いはずだよ。そうそう。

営業マン:生産予定数が多いとは、具体的には何個ぐらいなのですか?

特に数字に関しては顕著なので、ハッキリしていないあいまいな言葉は、必ず相手に具体的な数字を確認しましょう。

2:クローズドクエスチョンで確認する
クローズドクエスチョンとは、「はい」「いいえ」で答えられる質問のことです。対義語として、オープンクエスチョンがあります。これは「来月発売する商品は、いつ店頭に並ぶのですか?」など、「はい」「いいえ」で答えられない質問のことです。営業マンは、雑談をするとき、お客さまから話を聞き出すときなど、オープンクエスチョンを使うことが多いため、クローズドクエスチョンを忘れがちです。

ですが、物ごとを確認するときは、「クローズドクエスチョン」が大きな効果を発揮します。例えば、飲食店で注文をした後、店員さんが注文の品を復唱して「以上でよろしいでしょうか?」と聞くことがあります。これが「クローズドクエスチョン」で確認するという方法で、注文が合っていれば「はい」、間違っていれば訂正するだけです。

営業マンは、商談の最後に必ず「クローズドクエスチョン」で確認してください。
・○○の資料は、3日後、○日の午前中まででよかったですよね?
・○○商品の納期は、来週の月曜日納品になりますが、大丈夫でしたよね?
・次回の打ち合せは、○日の14時ですね?
などです。

3:議事録でお互いに確認する
営業マンがメモをしたノートや手帳では、営業マンが一方的に勘違いしてメモをすることがないとは言えません。そのためには、議事録という形に残して、お客さまと商談の内容を共有し、お互いにチェックをするのです。

一番確実なのは、商談後に議事録を作成してメールで送り、それに対して返信をもらうことです。ただし、すべての商談でこれをやるのは大変なので、大切な商談だけに絞るといいでしょう。

私の経験では、自動車部品メーカーでいくつかの部署が参加した大切な商談では、お客さま側が議事録をつくり、必ずお互いに確認した後、印鑑まで押して共有していたこともありました。

4:あいまいに答えたことは、すぐメールで補足する
あいまいな表現をしないことは営業の基本ですが、「確認してみないと分からない」「自分ではそこまで判断できない」などということがあるのも事実です。

このように、あいまいに答えてしまったことは、案件を持ち帰ってから必ず迅速に補足の連絡をしましょう。この補足連絡を忘れたために、お客さまは「大丈夫なのだ!」と判断してしまい、あとから揉めごとになることがあります。

また、なるべく電話での決めごとは避け、メールでお互いにわかる証拠を残すことが大切です。たとえ電話で何かが決定したとしても、必ずそのあとで相手にその決定事項をメールしておくことを徹底しましょう。

このように、日本人があいまいなやり取りをしてしまうのは、慣れ親しんだ文化なので変えることは難しいものです。ですが、ものごとが「あいまい」になってしまうことは、営業マンの工夫次第で避けることができるのです。いい仕事をすするためにも、お客さまとのやりとりに関しては、必ずその都度確認し、メールなどの証拠を残る手段を講じることを、日頃から習慣づけましょう。

次回に続く

 

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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