さて、近年ではSNSの普及が進み、芸能人やモデルでなくても容姿にこだわる人が増えてきました。美容業界の情報は、常に広告動画として生活の一部に入り込んでいますし、美容整形も特別なことではなくファッションの一部として受け入れられるようになりました。
SNS上に写真や動画を投稿すると、他者が「いいね」と評価します。その「いいね」の数が明確に数字として表示されるので、わたしたちは、自分自身の価値が登録者数の数や「いいね」の数で評価されると錯覚してしまいます。実際、SNS上の評価が上がると、心理学的にも承認欲求が満たされることは明らかです。わたしたちは、より承認欲求を満たすために、外見や切り取られた風景を盛ることに熱中してしまいがちなのです。
もちろん、SNS上の情報は「作り上げられ切り取られた瞬間」であって、その人のリアルがそのまま反映されるものではありません。そのことを十分に理解し、うまく活用しながら自分自身の印象をよりよくアピールすることに長けている人もいます。SNSの情報を鵜呑みにすることなく、必要な情報を取得することに活用している人もいます。
今の時代、SNSを完全否定することもナンセンスですし、妄信することも危険だと理解しつつ、上手に活用していきたいものです。自分の考えや価値観をしっかり持ったうえで、客観的な視点を持ちつつ、SNSを活用するリテラシーが求められますね。
Bさんは、3か月前に一重まぶたを二重まぶたにする美容整形手術を受けました。学生の頃から自分の外見にコンプレックスがあり、人間関係においても積極的になれない悩みがあったからです。SNSで、もてはやされるのは外見の良い人ばかりのように感じ、「中身が大事だと言いながらも、結局人は見た目で判断しているじゃないか」「外見が美しくない自分は損をしている」「外見が変われば、自分に自信を持てるはず」という思いが日に日に大きくなっていました。
実際、手術を受ける前には、慎重に様々な情報を検索し、口コミやリスクもチェックしました。安易に施術を受けることは危険だと感じていたので、長期間にわたり悩み、検討を続けました。そして、ついに整形手術を受けたのです。
結果、手術は成功しました。友人もほめてくれましたし、何の問題もないはずでした。
けれども、鏡を見るたび、どうしても違和感が拭えないのです。なんだか自分の顔ではないように感じる。二重まぶたの幅が、好ましい状態ではないように感じ、鏡を見るたびに気持ちが沈むようになりました。それに、自分の顔を見れば見るほど、歯並びも気になるようになってきたのです。
せっかく整形手術が成功したのに、他者からの評価が気になることは改善されないままでした。友人はほめてくれましたが、本当のところは自分のことをどう思っているのだろう。陰で噂をしているのではないか。そもそも、本当に整形手術をする必要があったのだろうか。それとも、矯正歯科で歯並びの矯正をすれば、顔のバランスが良くなり、今度こそ自信が持てるようになるのだろうか。自分でもよくわからなくなってきたのです。
わたしは、自分のありのままを受け入れ、「これでいい」といえる感情のことを自己肯定感ととらえ、「これでいい、これがいい」と表現しています。
そもそも、よく考えてみると、人間の顔というものは不均衡にできているものなのです。
完全に整っていないからこそ、その人らしさがあり、その人の「顔」はこんな顔だ、と認識できるわけです。極端な話、もしも誰もが完全に整った顔を追求するとしたら、街中にAIで生成されたゲームキャラクターのような顔がそこら中で歩いている、といった風景が広がることになります。それではお互いの顔を認識することができなくなってしまいますよね。不均衡だから味がある。不完全だからこそ、その人らしさがある。
内面はもちろんのこと、外見も自分らしさを認め、受け入れることが自己肯定感につながるといえますね。
(※本文に掲載されるケースは架空の人物で実在の人物とは関係ありません)