「家族」というチームのつくり方

多くの親がわかってない「子どものやる気を引き出す」簡単な方法

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子どものやる気を引き出す意外なアプローチ


そうは言っても、スマホの誘惑は相当なものです。スマホがもたらしてくれる数々の魅力に比べたら、勉強の魅力はどうでしょうか。YouTubeやゲームよりも、勉強をしたいと思わせることは可能なのでしょうか。子どもをスマホから引き離し、勉強やスポーツに向かわせるには、どうしたらいいのでしょうか。

このことについて、行動心理学という学問の分野は、意外なアプローチを教えてくれます。
実は、子どもに勉強をさせたいと思ったら、やる気を引き出そうとする必要はない、というのです。
行動心理学では、人が行動を習慣化するのは、やる気ではなく「仕組み」だと指摘しています。

例えば、歯磨き。
やる気で磨いているでしょうか?
私たちは「今日も歯を磨くぞ!」というやる気で習慣化しているわけではありません。朝起きたら歯を磨く。夜、寝る前に歯を磨く。そんなふうに、「決めている」から習慣化しているのです。

「家に帰るとテレビばかり観て勉強しない」という問題も、やる気ではなく仕組みで考えると解決が可能です。
家に帰って、一番座りやすい場所にソファーがあり、そのソファーの目の前にテレビがあって、リモコンが手に取りやすいところに置いてあると、ついソファーに座り、ついリモコンを手に取り、ついテレビをつけてしまうのです。テレビ番組には、つい見続けられるようなフックがあって、気づけば何時間も視聴してしまいます。
これがもし、テレビが裏返しの状態で置いてあり、観ようと思ったらわざわざひっくり返して見やすい位置にまで持ってきて、接続をし直さないと観れない、となったらどうでしょうか? そこまでして観ようという気はだいぶ薄れるのではないでしょうか。

同じように勉強も、前日のうちに翌日やるページを開いておいて、ペンや消しゴムなどの必要な文具も用意して、机に座りさえすれば勉強が始められる状態にしておけばよいのです。そうして、家に帰ってきて、机に座ったら、つい勉強をしてしまう環境を作ってしまえば、習慣化が容易になるわけです。
逆に、机に座ってテキストを取り出して、今日やるページを開いて、ペンはどこだ? 消しゴムがないぞ、とやっているうちに、勉強をする意欲よりも別の誘惑に負けてしまうことになります。
動機とは、行動のきっかけという意味がありますが、まさに勉強をするかどうかは、行動のきっかけを仕組みでアプローチすればいいのです。

これは、子どもだけでなく、私たち社会人にも重要なことです。部下に身に付けてほしい習慣は何でしょうか?

・遅刻をせず時間に間に合うようにする
・毎朝ニュースを読む
・英語の勉強をする
・上司に前日の報告をする
・事務スタッフと情報を共有する

こういった、仕事の中で習慣化すべき行動はたくさんありますが、それは仕組みにしてしまったほうが良いわけです。

子どものやる気を「仕組み化」せよ

YouTubeやゲームをはじめさせてしまう、行動のきっかけづくりはますます巧妙になってきています。
家に帰って、スマホが手に取りやすい場所にあり、うっかりスイッチを入れようものなら、もう逃げられません。
子どもが自分でやめることは難しいでしょう。だからこそ、子どもと話し合って、ルールを決めることが重要です。わが家では、上の写真のように、小学校1年生のときに「家に帰ったらやること」を決めました。
これを決めておくと、「④番できた」とか「⑦番は何時までにやるの?」といった会話が生まれ、やるべきことがわかっているので、「いつやるか」を自分で決められるようになります。

子どもには「ちゃんとしなさい」は通用しません。親から見て、テーブルの上に載っているノートや文房具を「ちゃんとしまいなさい」と言っても、子どもはテーブルの上のノートと文房具を床に置いて、「ちゃんとしまったよ」と言ったりします。
これは、反抗しているのでもひねくれているのでもなく、「ちゃんとしまう」とはどういうことなのか、わかっていないのです。
「勉強が終わったら、ノートはカバンにしまい、文房具は引き出しにしまう」といったことがルールとして決まっていないと、「ちゃんとしまう」ということができないのです。
私たち親は、子どもに対して、「ちゃんとする」とはどういうことなのかを1つ1つ話し合い、どうすることがいいのかを決めておき、認識を合わせることが重要です。

・家に帰ったら、何をするのか
・寝るまでに何をするのか
・朝起きたら何をするのか

ここの「ちゃんとする」を決めると、毎日の行動習慣が変わります。すると、勉強したり、本を読んだりを自ら進んでするようになります。
もちろん、親の思い通りになる、何でも言うことをきくロボットを作りたいわけではありません。
勉強をしてほしい、本を読んでほしい、相手の気持ちがわかる子になってほしい、優しく思いやりのある子になってほしい、明るく好奇心のある子になってほしい、などと願うのは、子どもの成長を思ってこそです。

親の願いを素直に受け止めて、自分のために、そして人のために行動するようになるには、親の仕組みづくりが重要なのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
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