「家族」というチームのつくり方

なぜ「仕事の話を家庭に持ち込む」ほうが家庭円満になるのか

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情報格差を埋める仕組み

夫婦間でも情報格差を埋めたほうがいいのは間違いないとして、では、どうすればよいのでしょうか。
時間をかけるのは非現実的です。夫婦ともにただでさえ忙しいのに、さらに情報共有の時間を取るというのは、負荷がかかりすぎます。過負荷すぎてノイローゼとなることでしょう。

そこで、実際に私がやって、うまくいっている方法を紹介します。
基本的には、普段仕事でやっていることをありのままに伝えるようにしている、ということに尽きるのですが、以下の3つポイントを意識しています。

①    中長期の事業計画
②    年度の目標と収支計画
③    日々のタスクブレイクダウン

①    中長期の事業計画

まず、中長期の事業計画ということですが、ビジネスマンとして働いていると、中長期で何を目指すのか、を考えたりすることがあるかと思います。
部門の目標をどうしていくのかとか、数年先の見通しを考えることは、どの企業も大切にしていることだと思います。もし、そういった中長期の計画がない場合は、これを機会に考えるのも良いと思います。
私自身、YouTubeを始めたり、書籍を出版したり、テレビに出演したりと様々な活動に踏み出しているのですが、中長期の計画を奥さんに伝える前は「あなたは何でもかんでもやりたがる」と思っていたそうです。私としては、目標に基づいて戦略的に取り組んでいたのですが、妻からすると突然新しいことを始めるという感覚になっていたのです。
そこで、自分が中長期でやりたいことは何か、どんな未来を目指しているのかを書き出していたので、それを奥さんに伝えました。そうやってちゃんと説明をする場所を作ると、とっても興味深く聞いてくれ、私が突然新しいことをし出しても、すぐに反対することなく、ひとまず応援してくれるようになりました。

②    年度の目標と収支計画

我が家では毎年、年末から年始にかけて、どんな仕事をして、どのくらい稼いだかの振り返りを家族で行います。年間の受注実績をもとに、来期の受注計画と、クライアントごとの特徴や課題まで共有するのです。
さらには、良かったことトップ5ともったいなかったことトップ5をお互いに発表し合い、次の年の目標を共有します。
このような場があると、共にチームで頑張っている感覚を共有できますし、自分の仕事も整理できます。

③    日々のタスクブレイクダウン

タスクブレイクダウンというのは、業務分解と訳すのですが、仕事をするうえで、タスクを書き出して、いつまでにやるのかを書き出すという習慣を、新卒1年目から叩き込まれました。
私は定期的に、自分のスケジュールの1か月先までを見越してやるべきことを書き出すのですが、その書き出したタスクを奥さんに送っています。
これは、「オレはこんなに忙しいんだ」というアピールで送るのではなく、ただ、抱えている業務を「見える化」して情報格差をなくすためだけに送っています。
このような共有をしておくと、意識格差が生まれません。なぜ私がテンパっているのか、なぜ忙しそうなのか、共有することができるわけです。
あまりに忙しくなると、このタスクの書き出しができない、共有の時間が取れない、となってしまいます。そうなると、理解も共感も得られず、孤独な道をひた走ることになってしまうのです。

情報格差を埋めるのは、信頼の証

仕事の話をどこまで家庭ですべきか、悩まれる方も多いと思います。
実際、1から10まで起こった出来事をすべて共有することは難しいですし、そこまでの情報共有は必要ないでしょう。
かといって、仕事の話をいっさいしないとなってしまうと、意識格差は埋まっていきません。

情報は、信頼の証です。
ビジネスの世界でも、情報を与えない上司がいます。「いまこれを伝えても、混乱するだけ」とか、「機密情報を漏らされたら困る」とかさまざまな言い訳をして、情報を与えないようにしがちです。
これは、部下を大人扱いしていないのです。情報を使いこなすレベルにないと部下を子ども扱いして、情報の出し方によって部下を自分の思い通りにコントロールしようとしてしまっているわけです。
情報をくれないと、人は相手から「信頼されていない」と感じます。

家庭では、特に、未来のことと、現在のことは、共有すべきです。
自分が何を目指し、今、どんな問題に直面し、何に頭を悩ませているのか。その大枠のところを共有することで、夫婦の共感度は高まっていきます。
情報格差を埋めることは、信頼を育てることでもあるのです。

上記3つのアクションは、ビジネスをするうえで、やっておくべきことです。
それを一番身近な存在であるパートナーに共有する。
それを怠らないことは、現代の家庭を持つビジネスパーソンの果たすべき大事な役割なのではないでしょうか。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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