視野のせまさが問題になるのは、会社だけではありません。たとえば、学校の先生は視野がせまくなりやすく、同じ課題が出やすいと言えます。大学を出て、教育実習を経て、そのまま教員になることが多いため、学校の先生は学校以外の環境を知りません。そのため。子どもの幅広い関心を否定してしまいがちだとよく批判されているのです。たとえば、子どもの「海外に興味がある」「YouTuberになりたい」といった関心に、世界を広げる返答が難しくなることがあるようです。
そして、家庭ではもっと直接的です。
よくある最悪のパターンはこうです。妻がアニメにハマった。夫は興味がない。そこで夫は妻に「アニメ見て何が面白いの?」「暇だね」と言ってしまう。自分の世界を否定された妻は「あなたは私に興味がないのね」と感じ、距離が生まれてしまう。世のご家庭において9割の夫婦ゲンカの原因は、こうした関心の幅のせまさを原因とするものと言っていいでしょう。
なお、これは子どもに対しても同様です。親が子どもの関心に無頓着でいることで、子どもは親から距離を置いてしまうのです。
では、家族に対してどのような態度を取ればいいのでしょうか。先ほども書きましたが、家族の関心事に対して詳しい情報を持つ必要ありません。必要なのは、関心の幅だけ。相手の興味を否定せず、問いを投げるだけいいのです。
「あ、そうなんだ。どんな話? どこが面白い?」
これだけでいいのです。詳しさではなく、関心の幅が家族の信頼をつくるのです。
かつて家庭は、夫と妻がバラバラであっても成立しました。
夫は仕事、妻は家事育児。役割分担が固定されていて、夫婦の意思疎通が薄くても、家庭の体を保つことができていたのです。極端に言えば、夫婦で同じ目標を見ていなくても、「寄り添って数十年」が可能だったと言えます。
しかしいまは違います。共働きが増え、女性の自立が進み、妻だけに家事育児を押しつけるなんてありえません。また、離婚のハードルは下がりました。「一緒にいる意味がないなら別れる」が現実的な選択肢になったのです。
だからこそ、従来の役割分担型のままでは、家庭は詰みます。
ここで参考になるのが、小規模飲食店の話です。
チーム化できていない店では、全部の業務が、店長に属人化してしまいます。鍵開け、発注、レジ締め、クレーム対応……すべてが店長一人に集中するのです。
そうなると、店長といえど忙しさで雑になり、結果として店の評判が落ち、離職が増え、さらに回らなくなる、というわけです。
この負のスパイラルが起きてしまうのは、家庭も同じです。
片方に負荷が集中し、感謝も承認も消え、「問題が起きたときだけ口を出す」関係になってしまう。すると、「良いことを一緒に喜べない」「悪いことを助け合えない」が常態化し、孤立と虚無感が増えてしまうのです。
だからこそ、家族も組織も「世界を広げる人」が必要なのです。
これからの時代、求められるのは“引っ張る人”より“広げる人”。会社でも家庭でも、相手の関心を尊重し、問いを投げ、世界を拡張できる人が信頼されるのです。
夫婦は、たまたま相性がいいから成立するものではありません。違いを前提に、ぶつかり、すり合わせ、共通項をつくっていく。そのチームづくりのプロセス自体が、幸福につながるのです。
最初の一歩は難しくありません。妻や子どもが何か話したときに、「否定」ではなく「質問」を返すのです。“詳しさ”ではなく“関心の幅”を増やす。それだけで、家庭は今日からチームに近づいていきます。