2020ヤクルト 高津流スワローズ改革!

監督に求められる資質は、
素早い「決断力」と意見をまとめる力

「明るい雰囲気」「笑い」も大切な戦力だ

――他に、「監督に必要な資質」は何かありますか?

高津 僕が今、気をつけているのは「目配り、気配り」ですね。実際にきちんとできているかどうかは別として、「この選手の体調はどうなのか?」「気分的に問題を抱えていないかどうか?」ということは常に気にしています。レギュラー選手の場合はメンタル面で気になることはあまりないんです。体調面に関して、「疲れていないか?」「動きは鈍くなっていないか?」という面を気をつけておけばいい。常に試合で結果が出るので、「打てたら気分がいい」「打てなければ気分が悪い」というのがハッキリしているから、あとは試合で良い結果が出るのを祈るだけです。

――そうなると、控えの選手に対する目配り、気配りが重要になってきますね。

高津 そうですね。試合に出られないと、どうしても不満がたまったり、腐ったりすることも出てくるかもしれません。でも、それを防ぐのは簡単なんです。できるだけ試合に出してあげるのが一番だと思います。もちろん、「全員に平等にチャンスを」ということは難しいけど、「できるだけみんなにチャンスをあげたい」という思いはいつも持っています。

――他に意識していることはありますか?

高津 就任以来、意識しているのは「できるだけ重い空気を出さないように」ということですかね。意識はしていても、試合中につい怒鳴ってしまったり、感情を出してしまうこともあるんですけど、そうなると選手たちに悪影響を与えることになりかねないので、なるべく重い空気にならないようには意識しています。

――試合中に怒鳴ったりすることもあるのですか?

高津 正直、ありますね。でも、それは決していいことではないです。選手たちは監督を見ていないようで、よく見ています。僕の表情や行動によって、ベンチ内に重い空気が出るのは絶対に避けなければならない。だから、意識的にちょっと気の利いた面白いことを言ったり、すばらしいプレーのときには満面の笑みで迎えたりすることも心がけています。そういう意味では、「笑いも戦力だ」という気がしています。

――廣岡大志選手がホームランを打ったり、長谷川宙輝投手がピンチを切り抜けたり、村上宗隆選手がサヨナラ打を放ったときの高津監督の満面の笑みは印象的でした。

高津 そうですね。決して無理して明るく振る舞おうとしているわけじゃないんです。若い選手たちの場合は、「昨日できなかったことが、今日できた」「何度もガミガミ言っていたことが、ようやく上手にできた」というケースがよくあります。そういう進歩や成長が見られたときは本当に嬉しいですね。

――なるほど。次回はそうした若い選手たちをはじめとする「選手たちのモチベーションの高め方」について伺いたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

高津 わかりました。次回もよろしくお願いします。

 

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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