2020ヤクルト 高津流スワローズ改革!

連敗期、停滞期に監督として考えること、すべきこと

「スワローズらしい良い文化を継承し、明るい素晴らしいチームを作っていかなくてはならない」――就任会見でそう語った、東京ヤクルトスワローズ高津臣吾1軍監督。昨季、2軍監督という立場からチームを支えてきた高津監督は、思わぬ事態に見舞われたこの2020シーズン、1軍監督としてどのようなビジョンでリーグ制覇を目指していくのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、高津監督の野球論を余すところなくお届けしていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

――順調な開幕ダッシュを経て、首位争いをしていたものの、8月、9月と連敗が続き、苦しい状況となっています。今回は、連敗期、停滞期の心の持ち方について伺いたいと思います。この期間、どのような心境で打開策を模索していたのでしょうか?

高津 自分の現役時代のことで言えば、なかなかうまくいかない時期、スランプの時期に、「一体、どうすればいいのか?」ということはかなり研究しました。ずっと研究して、何度も経験して僕がつかんだのは「結局はいつも通りにする」ということ。もっと言ってしまえば、「何もしない」ということなんです。

――それは、「ジタバタしない」という心境なんですか?

高津 今、「何にもしない」と言いましたけど、もちろん、たくさん練習はする。問題点の研究もする。美味しいものを食べる。しっかりと寝る……。こうしたことはいつも通りに行います。でも、不振だからと言っていつもと違う練習をしたり、練習量を増やしたり、減らしたりしても、僕の場合は特に変化はありませんでした。それならば、特別なことをするのではなく、あえていつも通りの努力を、いつも通りにして時が過ぎるのを待つ。それは勝っていても、負けていても、いつも続けました。

――目の前の現実に一喜一憂したり、右往左往したりしないで、あくまでも泰然自若に「普段通りに過ごす」ということを意識していたんですね。

高津 そうです。最低限の努力は継続する。その上で、方向性を間違えないように意識しながら、じっと我慢して時間が過ぎるのを待つ。「絶対にいい周期が来る、いい時間がやってくる」と信じてしっかり我慢する。それは意識していましたね。

――現役時代は「あえて動かない」を選択していた。では、監督となって、その考えに変化は生まれたのですか?

高津 現役時代は、あくまでも自分一人、「個人」の問題だったので、それでもよかったのかもしれません。でも、監督というのは自分だけの問題ではないですからね……。

――そうなると、「現状打破のためにあえて動く」ということですか?

高津 僕の経験から言えば、停滞したムードを変えるためにいちばんいいのは、やっぱり、「新しい人が加わること」なんですよね。それは、新人でもいいし、外国人選手でもいい。もちろん、離脱していた選手が戻ってくることでもいい。不振だったベテランが復調してくることでもいい。それは、投手とか野手とか、ポジションも年齢も関係なく、すべてに当てはまることだと思います。昨年、ダントツで最下位になったチームを変えるには、やっぱり「新しい血」が必要だと思います。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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