2023ヤクルト髙津流 躍動の燕マネジメント

開幕好スタートも「まだ始まったばかり」
田口麗斗投手を新クローザーに抜擢した理由

野球も人生も、うまくいくことばかりではないから

――監督のこれまでのお話を聞いていると、逆境や苦境の中で感じた「悔しい」とか「この野郎」という思いがエネルギーになっているという印象があります。これは監督になっても、同様の思いなのでしょうか?

髙津 できれば、悔しいこととか、悲しいことはない方がいいですよね。いつも明るく楽しく、常に成功するのがいちばんいいのかもしれないですけど、野球ももちろんだし、人生においても、そんなにうまくいくことばかりがたくさんあるわけじゃなくて、どちらかというと、気分が冴えないときの方がもしかしたら多いかもしれない。でも、そのときは「悔しいな」とか、「何でうまくいかないんだろう」と思うことも多いけど、それをプラスに変えていかないと、力に変えていかないといけないと、僕は思っています。

――この連載でも触れているように、「昨年の日本シリーズの悔しさは絶対に忘れない」と、監督は何度も口にしています。

髙津 そうですね。やっぱり、悔しい思いはしたくはないですけど、最近では特に「これは次へのステップだ」と思うようになりましたね。いろいろ人生を振り返ると、自分は常に二番手の立場だったけれども、そのときはあまりそこまで明確には意識していなかったですね。でも今は、昨年の日本シリーズで敗れたこともそうですけど、「この悔しさを絶対次へのエネルギーにしよう」と考えるようになったのは最近のことだと思います。

――生前の野村克也氏は、髙津監督のことを「相当な負けず嫌いだ」と言っていました。ご自分では、どう思いますか?

髙津 負けず嫌いであることは間違いないですね。これまでもたくさん負けてきましたけど、負けることは大っ嫌いです。でも、たとえば「このバッターには打たれたくない」と個人的なプレーで感じることと、チームとして「負けたくない」と思うのと、またちょっと違いはありますね。「絶対に負けたくない」という、僕の個人的な思いでチームのスタッフや選手たちに迷惑をかけてしまってはいけないと思っています。最終的には勝つための手段を、冷静に判断しなければいけないのは間違いないです。個人競技ではないですし、今はプレイヤーではないので、監督としてチームが勝つために、悔しいですけど、その上で冷静な判断をするように心がけています。

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――監督4年目は、10試合を終えて7勝2敗1分というスタートダッシュを切りました。この戦いぶりについてはどう見ていますか?

髙津 負けてスタートするよりはいいですけど、「まだ始まったばかりだから」というのが率直な思いですね。「みんなよく頑張っているな」とは思います。たとえば、これが勝敗が裏返しの2勝7敗だったとしても、やっぱり「まだ始まったばかりだから」と同じ答えをしていると思います。トータルでは、「この時期にはこうあっていたい」「こんな状況でありたい」というイメージは持っていますけど、「まだ始まったばかり」という思いが強いですね。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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