2025年も円安相場は終息しなかった。昨年4月以降、第2次トランプ政権が孤立主義を深めたことで「ドル離れ」がテーマとなり、実際にドル相場は歴史的な全面安を余儀なくされた。名目実効為替相場で見ると、7月には年初来で一時マイナス7%程度まで下落幅が拡がっている。この間、ドル安に合わせてユーロやスイスを筆頭とする欧州通貨が買われたものの、円は概ね一緒に売られていた。
この背景について筆者は経済・安全保障面での米国に対する依存度の高さから一蓮托生リスクが意識された結果ではないかと考えている。「ドル安下での円安」は珍しい相場現象であり、これが今後も起きれば、円相場の行方は一層読み難くなる。
ちなみに、ユーロが買われた背景には欧州再軍備計画を通じて安全保障面での戦略的自律が図られ、しかもその資金源に共同債が採用されるとのことから安全資産としての「ユーロの基軸通貨性」も改善するとの解釈があった。4月以降の約半年間、為替市場のテーマは「ドルの基軸通貨性」の毀損という点にあったため、その文脈において米国との一蓮托生が意識されやすい円が忌避され、自律を図ろうとするユーロが選好されるのは論理的な展開だった。
しかし、9月中旬以降、ドル相場は底打ちしている。この際、一蓮托生の相手として円は選ばれず、むしろ、10月以降は暴落した。これが10月4日の高市早苗自民党新総裁誕生と符合していることは明らかであり、拡張的な財政・金融政策が継続されることによる通貨価値の毀損が争点化した結果である。
こうしてみると25年度上半期はドルとの一蓮托生リスクが、下半期は高市政権にまつわるリスクが意識されたというのが円相場の総括になる。言い換えれば、「ドル安でもドル高でも円は買われなかった」というのが25年の円相場であり、恐らく26年以降の争点にもなるだろう。
26年をいかに展望すべきか。簡単にポイントを示しておきたい。
まず、金利面では、極めて低い実質金利の水準について日本銀行の植田和男総裁も問題意識を吐露しており、この点から日銀の利上げ路線は継続しそうだ。22年以降、日米の実質10年金利差は急拡大しており、円安相場と安定した関係が認められる。24年初頭から足もとに至るまでの日米実質10年金利差はほぼ横ばい、もしくは若干の縮小という印象にとどまっている。
この間、24年3月に日銀がマイナス金利を解除し、同年7月に追加利上げ、さらに同年9月には米連邦準備理事会(FRB)の利下げ局面も始まった。25年に入ってからも1月に日銀が追加利上げを行い、9月にはFRBが追加利下げに踏み切っている。これに応じて、名目ベースでの日米金利差は著しく縮小したわけだが、両者のインフレ率に目を向ければ24年半ば以降は日本の方が米国よりも高い状態が続いており、実質ベースで見た日米10年金利差は拡大したままさほど動いていない。円安解消が進まない一つの理由と考えて差し支えあるまい。
円安修正を企図した場合、最低2回、できれば4回ほどの日銀の利上げが必要だと筆者は考えている。本稿執筆時点(25年12月)の政策金利を起点とすれば1.00~1.50%をイメージすることになる。それほどのタカ派姿勢が高市政権で許容可能なのかは不透明だが、通貨安に悩む以上、一足飛びに通貨政策(為替介入)に賭けるような議論に頼るのではなく、まずは異様な低さにある実質金利の修正を企図して利上げが検討されるのが筋だろう。この点は昨年10月、ベッセント米財務長官が来日時に示唆した通りだ。