「大塚英志さんは「不良債権としての『文学』」という文章の中で「現状の『文学』の力でビッグサイトを満員にすることは不可能です」という風に記しています。つまり22年前、文学フリマを自分で提唱しておきながら、ビッグサイトでやることなんて不可能だと、そう提唱者である大塚英志さんは書いていました。それがですね、こうして出店者の皆さんが集まって輪を広げていただいて、そして全国にも仲間が増えて各地で開催していくことで、今日、文学フリマは、東京ビッグサイト西3・4ホールをいっぱいにすることができました。みなさん、ありがとうございます」
温かい拍手が会場を包み込んだ。この日の出店数は約2300、来場者数は約1万5千人。同年春から東京開催の文学フリマでは入場料1千円が課されるようになり有料化されたが、参加者は増え続けている。
その2カ月後、僕は青山ブックセンターを訪れた。第1回文学フリマの時の様子を少しでも思い出せればと思ったからだが、冒頭に記した通り、それはかなわなかった。むしろ確認できたのは、この20年あまりの変化の大きさだ。書店員に聞いたところ、かなり前にそのフロアは改装されて、第1回文学フリマが開催されたイベントスペースはなくなったということだった。けれど、不思議と残念だとは感じなかった。失われたものへの郷愁もなくはなかったが、現在進行形で起きていることへの好奇心が勝っていた。
建物を出て、曇天の下を歩いた。2月の空気は冷たかった。文学フリマに関わる人たちの話を聞こうと思った。
もくじ
第1章 「書きたい」という衝動
第2章 「文学」でつながる共同体
第3章 始まりと「新しい文化運動」
第4章 地域の独自性とSNSの活用
第5章 短歌ブームと日記ブーム
第6章 多層化する本の世界